さらにさらに、小路幸也発掘本(=好きな作家の本なのに未読だった本)読書は続きます。
今度は「キサトア」と題されたファンタジー。
読み始めれば、「さくらの丘で」とは、また違った作家の引き出しを開けて、そこに宝物を見つけたような気分です。
舞台は、海辺の小さな町。
海に突き出した三角形の半島の先っちょにあって、海からのぼる朝陽と沈む夕陽が、おなじ場所で見ることができる。
…ってのっけからステキすぎる場所である。
主人公たちが住む家<カンクジョー>は、表紙に描かれたごとく。
そして、街の地図もあるサービスぶりです。
主人公の少年アーチは、病気で色がわからない。しかし、12歳にして世界に評価さるアーティスト。
タイトルの「キサトア」は、双子の妹、キサとトアから。
キサは太陽とともに起きて、キサは、夜しか起きていられない。
そして、もうひとりの重要人物、フウガ氏は、彼らの父親にして、風のエキスパートと呼ばれている。
「風のエキスパート」は、風の動きをよむことができ、毎シーズン被害者を出し続けた大風<夏向嵐(かこらし)>から街を救った。
エキスパートはもうひとり「水のエキスパート」のミズヤ氏。
彼らを中心にして、街の人々ともに描かれる物語は、自然の微妙なバランスとヒトの暮らしの話。
自然と戦う、自然の驚異を乗り越えるのではなく、あるがままに受け入れ、感じるという生き方みたいなモノ。
事件はさまざまに起こるが、背骨を貫くのはそうゆうことで、時々切なくなるが、しかし、優しい物語である。
自分の周りにあって、はっきりと見えるもの。
それだけに囚われていると、地球という大きなバランスを壊してしまう。
見えるものと見えないもののバランス。
今この瞬間に、じぶんの知らないところで起こっているさまざまなコトと、今の自分とのつながりみたいなものを静かに考えながら、本を閉じた。
そしたら、物語の場所が、きっとどこかにあるという思いが立ち上がり。
いつか行く自分のコトを想像してる自分がいたりする。
うーん、ファンタジーの醍醐味ですね。