『空飛ぶタイヤ』が直木賞候補になったときはもとより、『下町ロケット』が直木賞を受賞したときだって、こんな現象はなかったよなぁ。
と思うのは、いまやどの書店にいっても、池井戸潤氏の本が絶対いい場所に並んでいるってコトです。
やっぱ、TVドラマ半沢直樹の影響ってすごいんだなぁ。
とも思うけど、それ以外にも思うことはあって。
たとえば、銀行をはじめとした企業という仕組みが、もう制度疲労してるんじゃあないの?
…という疑問とか。
だから、そうゆう場所で働くコトには、純粋にシゴトをする以外に、やらなきゃならない&従わなければならない意味不明のコトが漏れなく付いてきて、それが実はそうとうに邪魔くさいと思っている…とか。
そうゆう多くの人々の“辟易”が、半端ない数存在し、それらのヒトがこぞって、池井戸ファンになってるのかも。
と思う。
しかし、作家の方は、デビュー当時から、そんな作品を終始一貫。
本書、『最終退行』 池井戸 潤 著 (小学館文庫)は、2004年作とちょっと前の作品だけれど、読み返してみれば、基本的には同じテイストです。
銀行内部を舞台に、主人公は、副支店長とは名ばかりで、中間管理職の悲哀をまとい、人材不足からくる激務に追われる蓮沼鶏二。
そんなやるせない日々の中で、ある日、勤務する銀行内部にうごめく不正の痕跡をみつけ…。
ミステリーと企業小説の間を行ったり来たりして、読者を飽きさせないのもいつもの話。
そして、期待をうらぎらない痛快なラストっ!
再読だというの睡眠時間を減らし、出かけるときは、重い単行本をもって出て(世にはもう文庫しかないみたいで、途中買い替えようかなぁ…となんども)、結局、2日ぐらいで読み切ってしまう。
その読ませるパワーももうずっと前からあったんだなぁ…と。
ただし、池井戸氏が、『果つる底なき (講談社文庫)』でデビューしたきっかけは、江戸川乱歩賞受賞。
近作は、エンターテイメント色のほうが勝っているけど、初期の作品は、ミステリー色が強くて、実は私好み。
ミステリー好きの方で、初期の池井戸作品を読んでいないなら、かなりおススメの一冊です。
…しかし、この作家の小説に登場する、主にエリート銀行員のシゴトしなさぶり、ドロドロぶり。
長く、会社員をやってきた身として言えるのは、ここまであからさまな悪者および悪弊ならば、まだしも、一転させるのは簡単かもな。
というコトでして。
実際の会社というところは、こうゆう悪要素が、そこここに分散し、まあ、しかたないかな、必要悪かな…的に思ってしまえる程度なのが現実かなと。
だから、トコトンどん底まで突き進み、最悪のところまでいかないと(犯罪とか、倒産とか)、明らかにされないし、問題視もされず。
そのまま、抜本的な解決亡きまま続いていって、一生懸命やった人からカラダを壊してみたりして、こぼれていったりしがちなんですよね。
そうゆう世の中の現実も、池井戸作品が、書店で目立っている理由なのかな。