木宮 条太郎昨『水族館ガール 』(実業之日本社文庫)を読了。
NHKの同タイトルのドラマが、主演松岡茉優さんがはまり役ということもあるのか、とにかくめっぽう面白く。それが、リオ・オリンピックで約ひと月中断。
うーっ!続きみたいっ!
ってことで、仕方ないので原作に手を出した次第。
しかし、これが怪我の功名的に、面白いうえに、知らなかった水族館の裏側が垣間見れて面白かった。
身近なシゴトの知られざる裏側が描かれている物語に、そもそも食指が動く私。
加えて、博物館・美術館・植物園に動物園…と園館的なものも大好きな私、もちろん水族館も例外ではない。
なのに、なんだって、この作品に気が付かなかったのかしら?ってぐらいで、TVドラマありがとう。
ついでに途中で中断ありがとうって感じなのである。
ヒロインの嶋由香は、もとは市役所の事務方職員。
それが、いきなり肉体労働の水族館に出向になり…。
舞台となる水族館は、千葉市立アクアパーク…という設定。
すでにTVドラマが本社=商社四葉商事、水族館=その子会社という大前提から違っているし、ヒロイン嶋由香は市役所の事務方からの出向。
そして、テレビドラマのようなネガティブな出向理由はないみたい(まあ、あとでこの出向の本当の理由が明かされて、TVとドラマがゆるくリンクしてゆくのだが…)。
といっても、それ以外は、ガール・ミーツ・ボーイのラブコメディのエッセンスを効かせ、その勢いに乗せて、水族館の今を描くという設定は同じで、そこがなかなかうまいと思う。
そうして、イルカやペンギンをはじめ、もちろん、魚たちも…。
普段、水族館で出会う海洋生物たちの詳しい生態の話が面白く、加えて、それを極力自然の状態に近く展示しようとするために生じる水族館という仕組みが持たざる負えない矛盾が興味深い。
例えば、水槽を日々循環させろ過するためには、電気を大量に使わざるおえない。
水族館は膨大な電力消費システムなのである。
…となれば何が自然か?
あるいは、餌にビタミン等のサプリメントを加えて給餌しないと飼育は難しく、うーん、極力生態通りに展示…ってわけでもなぁ…とかね。
ふーむ。
そうゆうことって、一度も考えたことなかったなぁ。
ならば、水族館の存在意義って?
ヒトの生活に寄った、楽しい「テーマパーク」なのか?
それとも生物の保護を優先する「博物館」なのか?
あるいは、ビジネスなのか研究なのか?
という、揺れる立ち位置が見えてくる。
たとえば、水族館で楽しみなイルカのショーだって、この物語では、イルカの生態の一端を見せる試みだから「イルカライブ」と呼んでいる。
そんなこだわりある「アクアパーク」の日々は、物語と言い切れないリアリティで満ちていて面白いのである。
そんなこんなで、シリーズ1作目は…。
嶋由香が、先輩水族館員の梶良平にしごかれながら、イルカトレーナーとして、水族館員として成長してゆくさまが描かれる。
そして、ヒロイン由香が、役所から、転籍して、正式な水族館職員になろうと決めたころ、まどろっこしい恋の進展が垣間見えた、お相手先輩・梶良平は、大阪の水族館へ出向。
さあさあ、これから、遠距離恋愛がはじまりますよぉ~!ってところで、エンディング。
こんな終わり方をされると、結局、続きも読みたくなるものである。
ってことで、もちろん、シリーズ2も3も一気に読了してしまいました。
で、シリーズ2、3に関しては、水族館自体の未来のポテンシャルが描かれているという感じで、実は、1昨目より深く広い。
…長くなるのでそのレビューはまた後日っ!