高山なおみさんの『ロシア日記』『ウズベキスタン日記』を読了。
なんだか一緒に旅してたような。
いや、そうゆう夢を見ていたような…。
そうそう、夢から覚めて「ここはどこ?」といつもの自分の部屋をぐるり見回してみたくなるような読後感。
私は、旅行記的なモノが好きで、よく読むほうだと思うのだけれど、面白かった旅行記の読後感は、たいがい「ああ私もそこへ行ってみたい」。
それなのに、この2冊は、もう旅から帰ってきた心地よい疲労感とともにページを閉じた。
こんな感覚ははじめてかもなぁ…と。
高山さんの料理に感じてたイメージは「土」。そして、この旅は「砂」。
かつて高山さんがシェフをつとめていたレストランは私のアパートから徒歩5分。
友人が来ると行っては出かけ、ご飯を作るのがめんどうなぁと思っては出かけ、密かになじみの店だった。
いまは、そこから遠くへ引っ越して、高山さんは料理家として著作をたくさん出すひとになった。
記憶をたどって思い出す、そのレストランの料理は、「ハーブ」と「スパイス」の印象。
そして、のちに本で知った、高山さんの料理の存在感が圧倒的で、素材の野菜が「土」で育った様子がいきなり想像できるなぁと思った。
私の中の高山さんは、「土」と「ハーブ」と「スパイス」のひと。
感じていたのは、不思議な湿り具合なのでした。
そんなイメージを纏ったひとが、夏のユーラシア大陸を旅する記録。
旅先は、乾いた「砂」と城壁「石」だものねぇ。
…と思いつつ、ワクワク感はとまりません。
だからかどうか。高山さんのまなざしを通して、私もロシアへ。
砂漠の地ウズベキスタンへ。
…本気で旅した印象。
時々、ホントに高山さんのまなざしを乗っ取って、その地を実際に眺めているかの錯覚を覚えたりもした。
例えば、列車の車窓の描写だとか…地平線に沈む大きな太陽!
詳細な料理の描写…肉とスパイス、ハーブとレモン、ナッツあたりがメインの。
文字というより写真や映像を見せられているような独特の描写のチカラによるものなのだと思うけど。
だから、読者は、遠く未知の土地まで行って、一緒に緊張したり興奮したり、惜しみつつ帰国して、まずはああ疲れたなぁ..という印象になるんだねぇ。
この旅は、武田百合子の『犬が星見た』のトリビュートでもあって…。
高山さんは、『犬が星見た』の描写やコトバを取り出して、「犬が星見た手帖」を作って旅に持参。
そこに描かれた場所をたどるという旅でもありました。
となれば…。
私だって、『犬が星見た』を再読。
せっかく一緒に旅した仲間(←勝手に思ってますよ!)なんだし、トリビュートの思いも一緒にと思うのです。
いやいや、『ロシア』『ウズベキスタン』の記憶もあわさり、どんな読書のたびになるんだろうか?
楽しみです。
↓ロシアへは、もちろんシベリア鉄道に乗って。
↓『ロシア…』の数年後、同じく装幀画を描いた川原真由美さんとの二人旅。