「立てば芍薬、座れば牡丹」
美人の代名詞であるこの二つの花、見分けが難しい。
芍薬(しゃくやく)は、根元からまっすのびた茎一本に花がひとつ。
美しい人がすーっと立っているかのような佇まい。
牡丹は、枝分かれした先に花が付き、それが、楚々とした美女が座っているようなので「座れば牡丹」
…なんだとか。
うーん、並べて見比べないと、やっぱわからんっ!
でもね、「草」である芍薬は、冬には咲かない。
初夏にならないと比べるのは不可能ながら、いまごろ咲いているのは、「樹」である牡丹だけ…っていう、季節限定の見分け方ならわかりやすいか?
と言うことで、冬の座った美女「寒牡丹」あるいは「冬牡丹」です。
寒の内だっていうのに、まあまあ、なんと立派な大輪の花咲かせていることでしょうか。
上野の東照宮のぼたん苑。
今が、寒牡丹の見ごろなんですってよ。
鷽替えの神事があった昨日。
朝から、湯島天神の鷽替えの長蛇の列に並び、ぎりぎり木鷽をいただきまして、その足で、上野五条天神(こちらは木鷽さんのお参りのみ)、上野公園を横切って電車で帰ろう。
…と思ったらコレ。
霜よけの藁囲いに包まれて咲く「寒牡丹」…っていうか、ココでは「冬ぼたん」って呼び名なのね。
以下「冬ぼたん」変更っ!
で、この「冬ぼたん」は、実は、美人というより、初々しい雪ん子のよう。
だから、どうせなら雪の日に訪ね、冬の風情を楽しもうと今日まで我慢してました。
が、今が見ごろかぁ…。
っうコトで、今年の「冬ぼたん」観賞は、晴れた日になっちゃった(笑)。
で、雪がないと、こんなやや、シュールともいえる光景が繰り広がっちゃってるんですけどね。
やっぱ、こうなると雪が欲しいなぁ…。
とも思うけど、じーっとみてると、これは、これで愛嬌があってカワイイか。
冬ぼたんと初夏に咲く牡丹は品種違い?
いや、そうゆうことでもないらしい。
牡丹には、春と冬の二期咲きの性質を持つ品種が少なからずあって、このうち低温で開花した冬咲きのものが、昔より「寒牡丹」とか「冬牡丹」と呼ばれてはいるらしい。
が、そもそも牡丹は栽培の難しい花らしく。
その難しいのを、わざわざ、冬に咲かせるとなれば、やはり職人の技術と管理が必要。
今も昔も、職人たちのまじめな努力が花を咲かせてきたってコトみたいです。
おっ!
正面から眺めれば、やっぱ、冬でもゴージャスな美人ですね。
牡丹の花は、奈良時代に唐から伝来。
「寒牡丹・冬牡丹」の技は、江戸時代に清国から
ああ、やっぱり、こうゆう凝った趣向は、江戸時代のものなんですね。
その頃の江戸といえば、現代のガーデニングブームよりさらに盛んな園芸ブーム。
この時代に一挙に増えた植木職人たちも、花樹の品種改良にしのぎをけずっておりました。
花の少ない正月にあでやかな大輪の牡丹を咲かすという技は清国からの輸入でも、江戸の職人魂はさらにそれを昇華させようと血道をあげたのは想像にかたくない。
調べてみれば、戸外の雪の中で牡丹を鑑賞しようとするスタイルは日本オリジナルなのだそうです。
やっぱり!
ちなみに、東照宮ぼたん苑の牡丹は、春夏に寒冷地に置いて開花を抑制。
秋には、温度調整。
冬の開花に備える。
…という作業に丸二年を費やすそうです。
そうして、やっと、厳寒の今ごろに咲く大輪の牡丹。
花の少ない正月に麗々しく咲いて、新春の日々を牡丹に大いに祝われているかのようです。
◆今日は、2015年1月26日/旧暦12月7日/師走壬寅の日
◆日の出 6時46分 日の入17時02分/月の出10時21分 月の入23時34分