石田衣良氏の『ドラゴン・ティアーズ 龍涙―池袋ウエストゲートパーク〈9〉』 (文春文庫)を一気に読了。
石田衣良氏のデビュー作、池袋ウエストゲートパーク。
略してIWGPも本書でシリーズ9回目となった。
おおーっ!
確かシリーズ1が1998年発行だから、主人公・真島誠の池袋限定トラブルシューティング歴も、もうそろそろ12年目に突入した計算(笑)。
おおおーっ!
もしこれが実際の人物ならば、もう30代半ばに差し掛かり、少なくとも「おれら池袋のガキは…」って年じゃない。
しかし、そこは、物語のお約束。
マコトもストリートギャング・Gボーイズのイケメン・リーダー、タカシもまだまだ池袋のガキ現役で、そこに、池袋の影の権力、羽沢組本部長代行のサルも加えて、彼らは年齢不詳の域に突入。
しかも、この3人が幼なじみってのが、もうあまりにも都合よすぎなんだけど、もう、そうゆう細かいことは置いといて良し!
よくよく考えてみれば物語の展開だってワンパターン。
主人公マコトが家業の果物屋の店番をしていると、そこへ依頼主がやってきて、依頼の内容が半端じゃないのに報酬は取らず引き受ける。
→次いで、マコトったらトラブルの周辺をちょろちょろしているだけじゃない…とやきもきしつつ読み進めば、いつの間にか核心に近いところで切り札を握ぎる。
→そして、どこのスジからも何となく一目置かれてしまってエンディング…てな感じ。
でもほっといてくれ!ともかく面白さは本シリーズでも健在だ。
さて、そうゆう超マンネリ設定の物語だが、ひとたび読書世界に突入すればその「いつも同じ」が癖にもなっていて心地よく。
さらにそこに繰り広がるテーマのバリエーション豊富さとリアリティに夢中になって二度美味しい。
活字を追っているうち登場人物たちが実際に池袋に住んでいるような気がしてくるし…実際のところ、西一番街には果物屋さん自体ですらないんだけどねぇ…。
池袋で起こる様々な問題は、そのまま、この日本社会の旬の問題でもあって…
この作家はいつも一番弱く、一番暗い社会の様子を良く見ているなぁ…と、つくづく。
シリーズ9は、「キャッチセールスででたらめなエステ詐欺の被害を受けたOLのトラブル」にはじまり…。
「ホームレスの僅かな権利を食い物にする悪徳建設会社」
「母親のパチスロ依存症が原因で、新しい出会い系ビジネスの闇に沈んでゆく娘」
「研修生という名で自給300円の奴隷労働…非正規派遣社員より悲惨な労働条件で働く中国人たちの問題」
…と続き、これらは、みんな今の日本が抱えて、様々な利権や面子やが根をはって、現状、根本的には越えられてない問題ばかり。
それを、どこの組織にも属さない主人公が、自分の頭のみを武器に解決してしまうって、やっぱり相当爽快ですよね。
そして、それは、組織に属さない=しがらみがないからこそ解決できる…という、小さいけれど偉大なヒントにも繋がっている。
だから、1冊読み終えれば、何となく次のシリーズはいつごろかなぁ…などと、もう次のことが楽しみで、作家の石田衣良氏が飽きなければ、超長編になってしまうだろうことは言わずもがなだ。
なんかこのまま映画「フーテンの寅さん」みたいに48作くらい続いたりしてなぁ。
そういや、シリーズの初期にはけっこうあったマコトの恋愛話もちかごろとんと、作者の策略なのか、何か寅さんに似てきてないか??
と、まあそうゆうわけで、本作も一気に読了。
ああ、何か読み足りない感じ、変遷をたどって再度シリーズ1から読み返してみようかなぁ
…なんて、これも、読了後のワンパターンの感想なのよねぇ。
(シリーズ2からは処分してしまったけれど。記念すべきシリーズ1は、今も我が書棚にあるのでした。だから、読みだしそうで自分が怖い・笑)