しばらくぶりに読んだ大崎梢さんの本。読んだら余韻のこりまくりです。

昨日、夕刻、いつもの図書館回遊。
いつものように、発掘本(=好きな作家の本なのに未読だった本)を探し、見つけたのがコレ。

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デビュー作「配達あかずきん」からつらなる、駅ビル書店を舞台にした「成風堂書店事件メモ」シリーズが好きな作家だけれど、なんだかいつもと雰囲気が違う。
いっつもキュート系のイラストだもんな、コレはちょっと深刻そう…。
と、気になったのがいけなかった。

そのまま近くのカフェに入り、読む。
いゃあ、嵌りましたっ!

作家の大崎梢さんは、前職・書店員。
なので、その作品の多くは書店モノ。本屋好きに加え、私も長く本をつくるシゴトをしていたので、そうと聞けば絶対手を出すたぐいの本なのですが、本作は、いきなりストレートに編集者が主人公である。
これは、私的には、もっともっと手を出しまくり系のテーマ。
ええぇ~っ、なんで今まで知らなかったんだろう!!
しかも2012年発行!もう4年もたってるじゃん!

物語は、偶然、「もう過去の作家」と目されていたヒトの原稿を見つけ、それをどうしても本にしたいと思ったシーンから始まって、もう、そこからして私のココロは鷲ずかみである。

というところで、夕食の時間。ああ、おなかすいたと、家路をたどるが、そのままその辺にあったパスタ屋へふらふらと入る。(栄養が偏るので、基本ひとり外食NGルールしいているが、もう今日はそんなことは言ってられない。)

そこから、物語は、出版に漕ぎつくまでのすべての難関に見舞われてゆく。
主人公の編集者・工藤彰彦が勤めるのは、大手老舗出版社。こうゆうところは、出版に際して、博打うちはしないのである。当然、どんな素晴らしい作品であろうと、過去の作家の作品はもちろん見向きもされず…。

物語は、ひとつの作品を出版するまでのハードルを、ひとつひとつ超えてゆく過程がアツく、それぞれのハードルに埋め込まれたエピソードがいちいちいいんだなぁ~。
なんか、もうあちこちで、しみじみ涙しながら読み進み。

ちょっと長居しすぎにつき、向かいのミスタードーナツなどへ移動。
もう読書梯子でありまして、そのまま、店内の片隅にて、涙をこすりながら、読み終えました。

ああ、なんと良い物語であることか。

コレは、編集者をはじめとした出版社と書店と作家たちをめぐる物語だけれど、もっと大きく、モノを作って、誰かに届ける行為をテーマにしたものである。
置き換えれば、工場で作ったものを売るでも、職人によって生み出されたモノを売るでも、作られるモノに思いを込めて、根気よく努力を重ね、届けたいヒトに届ける。
そんな、幸せな苦労を描いた本。

しみじみ物語をかみしめつつ。
明日、図書館へ本を返して、新しいのを買いに行こうと眠る。

今朝。まだ私のココロにゆらゆらと余韻が残り、ふと、幸せを感じたりする。