江戸人にとっては、これも立夏すぎが見ごろ…の藤の花。
とは、斎藤月岑(げっしん)による『東都歳事記 (2)』 (東洋文庫 (177))の受け売りで、江戸人たちは、つつじ、牡丹、燕子花(かきつばた)、藤の花は、立夏からカウントして花の見ごろの目安としていたみたい。
…ってコトですが、東京の「藤」はもういい感じで見ごろみたい。
ちなみに、本書によれば、<藤⇒立夏より十二三日め頃>が見ごろだそう。
今年の立夏は5月6日なので、5月18・19日ごろが最盛期のはずみたいですが…。
もうすでに亀戸天神の藤は咲き誇り、「亀戸の藤浪」を醸し出しているようです。
まあ、<年によりて大に遅速あり>と、追加で言い訳しているので、外気温や日差しの量なんかにも左右されるんでしょう。
ちなみに、つつじ、牡丹も、立夏より早めの4月下旬には満開の見ごろを迎えてたし、それぞれの開花をにらんでの「祭り」もゴールデンウイークで終了。
亀戸天神の藤まつりも、もちろん4月18日~5月6日という期間。
いずれも立夏を待たずに花の盛りは終了で、江戸より平成の方が、絶対的に気温が高い?
…ってことでしょうね。
というコトで…。
今年の藤の花見は、ゴールデンウィーク前半がベストみたい。
そして、おススメは、もちろん亀戸天神の藤。
ってのは、ココの藤は、ここならではの楽しみ方が多数なんです。
◆その1 亀戸天神についたら、鳥居をくぐって境内に入り、正面の赤い太鼓橋に上がって眺める。
亀戸天神は、天神様由来の梅もたくさんあるけど、藤は、藤棚は15棚、藤の木も約100株と、さらに半端ない数。
ちょっと高いところに上れば、目の高さに藤の花…って具合。
藤を仰ぎ見ることはあっても、目の高さなどから眺めることの少ない藤が、波打つようにはるか向こうまで連なっている感じで、これが、紫の波頭のごとく見えて…。
古くから「亀戸の藤浪」と呼ばれてる景色ってコレかぁ…とちょっと腑に落ちたりもします。
◆その2 今度は、藤棚の下に入って見上げてみる。
晴れた日なら、藤の間に間に、日差しが漏れて、それが、今度は、藤の海の底にいるような錯覚。
藤棚というのは、大きな公園であっても、せいぜいひとつやふたつ。
それが、破格の15棚ってのが、魅せる演出なんでしょうねぇ。コレは。
◆その3 歌川広重の描いた亀戸の藤の構図を探す
境内の太鼓橋を背景に手前に藤をひと房、あの歌川広重が描いた「名所江戸百景・亀戸天神の境内」の風情を楽しむことも可能です。
…といっても、同じロケーションを見つけるのは難しいので、それ風なんですが。
でも感じはめちゃくちゃ出てますよ。
そして…。
江戸人を気取って、お土産も買って帰ろう!
…は、楽しみ方のその4、というより番外かしら?
江戸の花見のガイドブックに『江戸名所花暦』というのがあって、それによれば、「表門を入りて正面一の反橋、此池に添ひて左右藤棚あり。此の下に各茶店を構ふ」だそうで、かつては、藤の下で飲み食いできる茶屋があったようです。
江戸を舞台とした時代小説にだって、裕福な町人たちが、亀戸天神参詣に出かけ、その後、境内の景勝を愛でてつつ料理屋で食事をする…というのは頻出シーン。
実際、当時は、神社の参詣も立派な行楽のひとつで、江戸人たちは、気に入りの着物でお洒落して出かけ、お参りのあとには、食事に酒とか、甘味にお茶はつきものだった。
ってコトで、その気分をいまでも纏っているかのような江戸懐石若福の厚焼き玉子か、マジで江戸時代からつづく船橋屋のくず餅(文化2/1805年創業)をお土産に買うのが決まり。
藤の頃は、お店が混んでますから、やっぱりテイクアウトがいいみたいです。
今年、私は、厚焼きの卵を(半本 700円でも結構な量です)GET!
おおっ!ふっくら!
そしてボリューム感も嬉しいっ!
黄色地に入れられた焼き鏝の印は「下がり藤」。
となると、卵も藤の時期がいっとう合うような気がしてくるから不思議だわぁ。
おまけ:藤のスポットMORE
ちなみに、亀戸天神以外の藤もみたいなぁ…というならば、東京の藤まつりというサイトがありましたのでこちらでどうぞ。
神代植物公園の85mも連なる藤棚とか、小石川植物園の田園風景に設えた藤棚というのに惹かれますね。
あとは、浅草寺の裏手の場外馬券売り場近にある飲み屋街「初音小路飲食街」をアーケードを覆う藤だなも、きっと今ごろ見ごろかも。
というコトで、江戸東京の藤をお見逃しなくっ!
◆今日は、2015年5月1日/旧暦3月13日/弥生丁丑の日
◆日の出 4時50分 日の入18時27分/月の出15時47分 月の入 3時08分