橘玲の小説デビュー作『マネーロンダリング』も再読了。何度読んでも面白いわぁ..

橘玲『マネーロンダリング』幻冬舎を再読了。

マネーロンダリング

先日読んだ『タックスヘブン』がやっぱり面白かったせいで、このデビュー作も読んどきたいなぁ…と思ってしまったのである。
といっても、わが書棚にあった本はとっくに処分。
そういえば本屋に文庫もあったなと買いに行けば…うーん品切れ中だって!

その足で、図書館にいって借りてきた次第。(あーあってよかったぁ。)

橘玲の本作が、小説デビュー作。

もともとは、金融関係の実用書のようなものが著作に多い作家
…なんですが、やっぱ信じられないぐらい面白い。
初めて読んだのも結構前(2002年発行!)なんで、細部はもうおぼろげだったのもよかったみたい。
もう新作小説を読むごとく、次はどうなる?
そして次は?

そして、この犯人はだれ?
…と、けっきょく追うように読むことになる。

この作家の小説って、一度に全部読みつくしてしまいたい衝動に駆られますね、忙しい時は危険です。

舞台は、2001年の香港と東京。

そうです。
物語は、まだ、NYのワールドトレードセンターのテロも起こっていない夏の香港からスタートします。
だから読者も、記憶をちょっと前に戻して、物語を追うのが深く楽しめるコツかもしれない。

主人公工藤秋生は、金融業界のキャリアをもとに、今はフリーのファイナンシャル・アドバイザーを生業とする。
普段は、合法的脱税を希望する日本人相手にオフショア関連のアドバイスがメイン。

そこに、突然、若林麗子と名乗る美しい女性が現れて、「5億円」をタックスヘブンへ逃がしたいと…。

そこから始まる、ヤクザ、香港金融界のエリートたちを巻き込んだ、金融サスペンス的いや、ハードボイルド的展開?
…は、これまで読んだことのない面白さ。

それら切った張ったの丁々発止の物語のベースには、ヤクザと組のフロント企業の関係とか、香港金融界の特徴だとか、そもそもの香港の入り組んだコネ社会の話だとか…それぞれの業界・社会のリアリティがきちんと書き込まれているからなんだと思う。

しかも、それらの知識…特に金融関係の話に少し疎かったとしても、全然面白く読めてしまう不思議。

なんだろなぁこの作家の筆のチカラのすごさって!

『マネーロンダリング』『永遠の旅行者』『タックスヘブン』は、緩やかにつながっている

例えば、謎の美女若林麗子と工藤秋生をつなぐ重要な人物として登場する大手家電メーカーの技術者・マコトの存在。
そして、彼の運営する金融関連のネタ満載のホームページ(もちろん工藤秋生の知識がベースになっている。っていうかそうゆうサイト、どこかにありそうだよね)の存在は、とりあえず、次につながるネタとして覚えておいて損はない。

…というか、本作では、この3人の関係が、のちにけっこう大きなどんでん返しになるから、忘れるはずもないのだけれど。

そうそう、最後の最後に、おおっ!この人が!?

というどんでん返しが用意されているのも、この作家作品のだいご味。
それが、デビュー作からちゃんと用意されてたんだなぁ…と、再認識し、かなりの充実感をもって、長い一冊を読み終えるのである。

秋生の顧客の中で唯一の大金持ちとして登場する倉田老人との会話が印象的。

倉田老人が「資産運用に成功する方法は何か?」と秋生に問うて、秋生は「資産運用しないことと、税金を払わないこと」と答えた。
…なるほどなぁ。

この作家の作品には、これまで常識と思っていたことが小気味よくひっくり返される快感もある。
そうゆう意味でも、好きにならざる負えないんだよなぁ…この人の小説も、お堅めのビジネス書もね。

もちろん真に受けて脱税に走るということではなくて(笑)、常識という重しが外されることで、ふと楽になる快感…が好きってことです。

ってことで、この辺で。
私としては、今日は、ブログを書くより、次作の『永遠の旅行者』を紐解きたい気満々。(←これも図書館に仲良くならんでたんで借りてしまいました。)

↓橘玲小説三部作は、次はkindleで読もうと決意!
買うなら、元税務官が金融&税知識にフォーカスした解説収録の文庫版がおすすめです

って、まだkindleを購入してませんが、今年は、電子書籍デビューしますっ!