日記なのに、内容は示唆に富みすぎ。いや日記だからか?

新し東京日記_服部みれい

ずっと前に初めて垣間見た服部みれいさんの日常。

編集者というシゴトを持ちながら、早寝早起き、朝は白湯を飲んでカラダ目覚めさせ、オイルマッサージやら長めの半身浴やら。

私と言えば、数年前に働きすぎてカラダを壊し、しかし、その働きすぎた編集者というシゴト自体は好きだったので、かなり打ちのめされた。
もう、このシゴトはやりはじめるとどんどん、どんどんどんどん、どんどんどんどんどんどん、と忙しくなり。
私の好きな、日の出とともに起き、日が沈んだらのんびりとする…とか。
飲み食いは、好きなヒト少人数と、質の良いものを少しだけ食べて、のんびり…とか。
できれば、普段は三食自分で作ったものを食べて生きる…とか。
ぜーんぶかなり無理になってくる。
そして病気。

おかしいなぁ。みんなそうなのかなぁ…と、そうでない風にシゴトをしているヒトっていないのかしら?と、悪あがきと思いつつもあきらめずにいた。
ちょうどそんなときに、雑誌の記事(たぶん「ミライのシゴト」とかというタイトルがついていた。それも素敵!)にて見つけた、件の早寝早起きの編集者が服部みれいというヒトでした。

当時は、まだ「マーマーマガジン」という小さな雑誌を創刊したて。
この雑誌は、創刊したその日に買って、ずっと好きな雑誌だったから、ああ、その編集長の方かぁ…と、興味はますます。
記事を深く読み込めば、自分で事務所を持って、自分と矛盾無いシゴトを選びフリーでやっているヒトのよう。
サラリーパーソンの立場から飛び出したばかりで、病気をし、やや途方にくれた私とはかなり違っていたけど、同業者が、私が好む暮らし方をしながらちゃんとシゴトをしているのということ自体が、頼もしかった。

そして、このヒトの書いたものがもっと読みたいなとも思う。

が、編集者が本業だから、彼女自身のことを書いたものはそう多くはなくて、「マーマーマガジン」の記事をじっと探したりして、とにかくしのぎ、ホリスティック医療的なことやスピリチャルなことを暮らしに取り入れ自分を浄化させてゆこうという「SELF CLEANING BOOK あたらしい自分になる本」(アスペクト=刊)は、非常に参考になったけど、まだものたりない。

で、「あたらしい東京日記」(大和書房刊)である!待ってました!

本書は、2011年の東日本震災直後の4月から2012年の1月までの服部みれいさんの日記を軸に、珠玉のエッセイやら、通信風のコーナーやら。
そして、この本を読みすすむだに思うのは、これは、シゴトと生き方のかかわりの物語だなってこと。

ちなみに、本書には、なんの論も展開しない。
シゴトやすぐれた暮らしのノウハウが書かれているわけでもない。
…本書は、服部みれいさんの日記だからあたりまえです。

それでも、そこらへんのビジネス書や自己啓発書よりずっと、シゴトの行く先を照らす本です。

服部みれいさんの暮らしは、都会の中でトライする、ややゆるめなホリスティックな暮らし。

そして、休みなく働いているようにみえて(編集長にして事務所の代表取締役だしねっ)、実は毎日好きなことしかやっていないような暮らしにも見える。

日記は、そんなちょっと羨ましく思える暮らし(とシゴト)にいたる、ささいだけど貴重な考え方や小さな方法などがちりばめられ煌いてる。
まるごと、「わたしらしいシゴト、わたしらしい働きかた、生き方」みたいなことがみずみずしく描かれているともいえる。

読者は、その日記の各所にちりばめられた面白い生き方の種みたいなものを見つけ、今度はそれを自分なりに育てていく…そんな読み方をするヒト多いんじゃあないかな。
たとえば、読者は、白湯飲み、半身浴○○分、オイルマッサージ、瞑想○○分…で始まる毎日が、何かこれまでの自分を変えてくれるかもしれない。
…なんて思ってまねしてみたり。

もちろん、現在の服部みれいさんは、多忙を極め、本書にある暮らしは、早寝早起きとはやや程遠く。
しかし、基本は、そうゆうナチュラルな暮らしを尊び、そこから生まれる、地に足がついたような、背骨がぶれないというような生き方は健在。

ああ、やっぱりね。
…と思う。

彼女の暮らしとシゴトのスタイルは、ナチュラルに暮らし、身の回りの小さな関係性を大切にし、自分が正しいと思うことに真摯である。
ココロがなくなるほど急いだり、やみくもに大きくなったりというのとは対極にいて、それでもちゃんと本を作り、そこをゆうゆうと超えて、素敵なモノを丁寧に存分に生み出すシゴト。

そして、「あたらしい東京日記」は、まじめに一生懸命なのに、”うまくいっていない”と思ってしまってるヒトにおススメの本かもしれないなとも思う。
あのヒトにも、このヒトにも。

◇目次
はじめに
震災後の東京日記
・とてつもなく、圧倒的な甘い感覚に見舞われる
・その体験について<エッセイ>☆
都会で田舎の暮らしをする日記
・飾りじゃないのよオーガニックは<エッセイ>☆
携帯不携帯日記
一ヶ月体当たりルポ大解毒(ゲドックス)日記
テレパシー日記
・青い<エッセイ>☆
なんでもないふだんの東京日記
・カセットテープが好き<エッセイ>☆
都会の日記/田舎の日記
2012年 都会の日記
・洋服屋さんのおじさんのこと<エッセイ>☆
あとがき

◆読み方のヒントを少々

・慣れてないヒトには、ちょっと不思議な響きのコトバが多数。
多くは、見開きの左ページに解説がありますので、そこを見てください。
いちばん盛んに出てくるのは、たとえば、コノ場所はヴァータっぽい、カパっぽい、ビッタが乱れる…とか。
これだけ少し解説を。
これらのコトバは、ホリスティック医療のひとつアーユルヴェーダの考え方。
人間の性格や体質を3つにわけてとらえ、ヴァータは風=これが乱れると不安・心配になることが多い。カパは水=重い、やわらかい、冷たい、遅いなどの特徴、ビッタは火=これが乱れると短気で怒りっぽくなる。

この3つのコトバは、意味を知って読んだほうが、より理解しやすいはずですので念のため。

・服部みれいさん…って誰?という方。
各章の巻末にある<エッセイ>をひとつ、ためしに読んでみてください。(上記、目次の☆をつけたところです。)
そこに何気なく書かれたコトバのみずみずしさ。
彼女は、コトバにある種のチカラを持ったヒトと思うはずです。生き方の軌道を変える呪文とかのような(笑)。そんなコトバは、本文すべてにあって、きっと読者のあなたの先を照らすヒントになるのではと思うのです。

ほんとだよ。