ひっそりと出版されて、いまや評判の『小野寺の弟・小野寺の姉』を再読。

こちらの本で味をしめ、またも「当て読み」(小説の登場人物に映像化の俳優を当てはめて読む)を楽しんでしまった、ちょっと前に出た小説。

小野寺姉、弟

作家の西田 征史氏は、知らないヒトだし、『小野寺の弟・小野寺の姉』 (リンダブックス)って、タイトルもピンとこず、装幀も好みじゃなかった。

なのに、一応手に取り、「姉に殺意を抱いたことが、これまでに三度ある」ではじまる1ページ目。

つづく理由は、幼稚園児時代に、年の離れた姉から「かりんとうみたいなもの」と唐辛子を食べさせされた、つまり、いいようにいたずらされた件。
そして、小学四年の時に、宝物にしていたブーメランを姉に失くされた件。

…期待してなかったにわか読者は、立ち読みで、ぶぶぶっと(かなり)盛大に笑い、書店で変なヒトと化す。

その場をそそくさと去り、本を持ったままレジ前へ。
つまり、続きは読みたいけれど、そのまま立ち読みする勇気もなくて、しかなたく買って帰ったわけ(小さいやつです)。

しかし、あまり期待が大きくなかったところが、かなりめっぽう面白かった。
物語は淡々として、なんの大事件も起こらない…のにである。
胸キュンの恋愛エピソードももちろんなくて、踏み出せない弟と、何も起こらず振られる姉…という顛末なのにである。

同じく弟を持つ姉の身としては、ありえなさそうな、33歳弟と40歳姉の静かな同居生活。

それも、緩くて、笑えて、切なくて…そこにそこはかとなくリアリティまで感じ、つまり、なかなかに良かったのである。

本書が出版されたのが、2012年。
翌年、作家の手によって舞台化されて(というか、西田 征史氏の肩書は、脚本家、俳優、演出家であった)、今年2014年には映画化もされる。

その配役が、舞台姉・片桐はいり、弟・向井理と知って、書店で、ふーん??

実は、あまり予想してない雰囲気の役者さんを当てるんだなぁとその時は思ったふたり。

これを今回、当てはめつつ再読したら、ああ、なんだかしみじみ味わい深くて、もっと、よかったんだよねぇ…。

ってことで、ココにわざわざレビュー。
たぶん、この小説は、西田 征史氏が、このふたりを当てて書いた物語なんでしょうね。
…と、読了後の今ごろに腑に落ちている次第です。

ああ、映画もみたいかなぁ。

もちろん文庫化されております。