一般人の私にしてみれば、かなり急に言い出した感のある、元小泉首相の「原発ゼロ」発言。
それを、マスメディアでは、いろいろ裏があるような見方で語ったりして、ホントかなぁ…。
個人的には、あの人ものすごく単純なヒトだと思うんだがなぁ…と。
それにしても、3.11の地震と原発事故以降、「原発なんていらないよ」という思いを強くした私としては、小泉さんの発言と行動は、ものすごく良い兆し。
ということで、こんな本を手に取ってみました。
実は、自己の主張はあまりなさならない感のある池上彰さん。
それでも、彼に解説させたらわからないこともすっと氷塊すること必至と思う。
そんな池上さんは、小泉さんの「原発ゼロ」宣言をどう読んでいるのかがテーマの一冊。
…っていうか、タイトルそのままですね(笑)。
小泉さんにインタビューをしているわけではないのでそこはご注意。
本書の柱のひとつは、これまで、原発に言及した小泉さんの主たる発言を集め時系列に並べ、分析するという趣向。
発言は、原発の安全性を信じていた首相時代の2003年・2006年のモノから、政界引退後、2011年5月に初めて「原発の依存度を下げるべき」と言い、以降、彼の考え方の変遷をたどります。
読者は、ココで「あれれ?ずいぶん前から原発ゼロにつながる発言をしていたんだ」とやや驚くかもしれません。
少なくとも私はそう。
そして、小泉さんの「原発ゼロ」が、大きく話題となるきっかけの毎日新聞政治コラム「風知草」の記事。
さらに、おなじく毎日新聞発行の雑誌「エコノミスト」の記事。
そして、まだまだいろいろなところで首尾一貫同じ「原発ゼロ」テーマで講演をしそれも掲載。
読売新聞が反論記事を載せれば、そこに小泉さん自らが再反論記事を寄稿し、それももちろん全文掲載されています。
…とにかく小泉元首相の「原発ゼロ」発言にまつわる記事・記録のほぼ全文が載せられているというのも本書の特長。
テレビなどで報道される内容は、どうしても断片になってしまうので、この件が気になる読者は、全文を掲載された本書を読む。読んで、いろいろ自分の考えをまとめるのに、非常によい資料になるかと思います。
さて、もうひとつの柱は…
以降は、目次に沿ってレビューさせていただこうかなと思います。
・はじめに
・小泉元首相発言語録⇒この部分は、上に書いたコトですね。
・加藤寛の一貫した主張
⇒加藤寛氏というのは、著名で影響力のある経済学者のひとり。
小泉元首相の恩師であり、小泉政権時代は、政界にも大きな影響力をもっていた。
いわゆる保守本流みたいな学者さんにも思えますが、彼は、一貫して日本の電力事業の問題点を指摘し、原発にも反対を唱えていた。
…ふーむ。ちょっと意外ですね。
小泉さんの「原発ゼロ」発言は、こんなところにも影響を受けているのかもしれないとありますし、小泉ツイッターにて、加藤寛氏の命日(2013年1月30日没)には「恩師」とツイートしておりました。
・学生たちはこんなことを考えている
⇒池上さんが教鞭をとる東京工業大学の学生たちの意見集。
非常に冷静かつ知的な原発へのアプローチが興味深いですが、中でも「核融合発電」という発電技術が存在するコトを知りかなり新鮮な思いを。
「核融合発電」は、同じく原子力を使うモノですが、現原発の核分裂によってエネルギーを得るのに比べて安全で管理も容易なのだとか。
ふーん。
風力、太陽などの自然エネルギーもさることながら、こんな似たステージ(核という意味で)にある新しい技術も生まれているのに(しかも安全らしい)、とにかく変化を嫌う政府や電力会社のスタンスをやっぱり疑ってしまうのですよねぇ。
・池上×山田孝男 毎日新聞政治部専門編集委員
⇒山田氏は、先の毎日新聞紙上とエコノミストに小泉発言記事を書いた記者です。小泉さんとのやりとりの話など興味津々な内容です。
・大人の国フィンランド
・オンカロ
⇒世界初の核廃棄物保管施設とそれをつくったフィンランドの考え方の話。
日本には同じことをするのは絶対無理と思いましたよ。となると…それこそ怖い日本の現状。
・インタビュー 細川護熙 第79代内閣総理大臣
・インタビュー 吉原毅 城南信用金庫理事長
・インタビュー 末吉竹二郎 元三菱銀行取締役NY支店長 国連環境計画・金融イニシアチブ顧問
⇒小泉さん以外にも、政財界には反原発&脱原発方向に舵をきろうとするヒトがたくさんいるということに加え、そっちの未来のほうが、非常に希望にあふれているんじゃあないの?
…と、思う方は多いのではないでしょうか。
・「原発ゼロ発言」は拡大するーあとがきに代えて
…ということで、あっさり読み切れるのに深い内容。
さあ、いいかげん、都知事選投票へ行かなくちゃ。
ちなみに、3.11以降、私が投票するのは、必ず原発を辞めると言っている方。
本書を読んで、その自分の考えをさらに強固にした次第であります。