本屋大賞って、翻訳部門まで外さない!と思うなぁ。その大賞受賞作『書店主フィクリーのものがたり』を、ホロっとしまくりながら読了!

書店主フィクリーのものがたりを惜しみつつ読了。

書店主フィクリーのものがたり

このブログのカテゴリ⇒本を読むとクリックして出てきた本を眺めてみても、私の場合、圧倒的に海外ものが少ない。
原書で読めるほどに英語力があれば紐解きそうな気がするけれど、基本翻訳モノって苦手。

だけど、書店員の方々が選ぶ「本屋大賞」受賞作には、日本の小説はもちろん、海外翻訳モノにもはずれがない!と、個人的に絶大な信頼感を持っている。
そうゆう理由で紐解いた本書は、やっぱり、それそのとおり、まったく期待を裏切らないものです。
翻訳苦手族(←なに?)の私が、そうとう夢中になって読み、さらには、「基本的な翻訳小説ぐらいは読んでみようか!」という気にまでさせられた。

すごいっ!

書店主フィクリーが営むアイランド・ブックスは、アリス島に一つしかない本屋。

表紙の絵もそそうだし、タイトルの「書店主」という言葉も、本好きならば、もう虜になるはずのアイテム。
本屋さんが舞台の話って、そう聞いただけでも妙な吸引力を持っている。

その本屋が、船でしかゆけない島にある!
しかも、ひとつしかないんだって!!
…となれば、もう惹かれまくりは必至。

ちなみに、アメリカには日本のように再販制度(日本の本屋の本は、基本、問屋に返品可能)がないから、書店主がリスクを背負って本を仕入れる。
となれば、どんな本を仕入れるかとか、それをどういう風に書棚に並べるかとか。
さらには、売るための仕掛け(読書クラブの主催とか、作家を読んで朗読会とか…)とか、その場は、そこで働く人々のセンスとアイデア、そして本の知識の集積地となってゆくはずだ。

そして、フィクリーの営むアイランド・ブックスは、物語の中で、大小の事件をきっかけとして、人々をつなぎつつ、どんどんそうゆう魅力的な本屋へと変貌を遂げてゆく。
その流れそのもの…フィクリーと彼をとりまく人々の人生というか…それが、まずは、長く美しい物語になっているのである。

いちばん大きな事件は、書店に置き去りにされた幼い少女マヤのこと

ああ、そうそう、この幼子マヤを偏屈なフィクリーが養女に迎え、それが、かれの人生を豊かに変貌させてゆく。
…って展開が、ちょっとずるいぐらいに素敵なんです!

マヤ以前のフィクリーは、愛する妻を亡くし、虎の子の稀覯本を盗まれて、やや途方に暮れた偏屈もの。そしてマヤ以降は、そのマヤを口実に頻繁にやってくる人が客になり、友人になり。
再婚までしてしまったっ!

そして、人々が集まる本屋さんには、示唆に富んだコトバが生まれ、そこにも読者はちょっとぐっと来たりする。
たとえば、「ぼくたちはひとりぼっちではないことを知るために読むんだ」とかね。

各章の最初には、必ずフィクリーが興味を持った短編のタイトルと短いコメント。未読を嘆く!

その短編へのコメントが、続く章の内容に緩やかに関連しているという仕掛け。
そして、それらは、娘となったマヤにフィクリーが遺したお勧め本のメモ=愛あるメッセージでもあって、そんな小さな仕掛けが小粋だし、愛おしくもある。

しかし、私の場合、そこに挙げられた短編物語の多くが未読。
私の苦手な海外文学(←あたりまえ・笑)なもんで、「もしや、これらの本を熟知している読者は、もっと奥深いことを読み取れるのでは?」と、気が気ではないというのも確か。
うーむ。

で、けっきょく、海外文学音痴の読者(←私)は、それまでの食わず嫌い(←まあ、理由はないでしょうね)を深く反省。
ここにリストアップされた短編小説を読了したのち、本書を再読すべきであろうと思って、本は、わが書棚にしまわれる。

うーん、うーん。
本は一読したら、きれいなうちに古書店に処分しよう!と、最近心に誓ったばかりなんだがなぁ…。(←最近の私といえば、断捨離しなきゃ!を通り越し、ミニマリスト志望者)

おまけメモ:書店主フィクリーセレクトの短編集

というか、その各章の扉にコメントされた本のリストなんですけどね。
やっぱ、断腸の思いでも読了した本は手放そうと思った時のためにここにメモしておく次第です。

第1章⇒『おとなしい凶器』ロアルド・ダール(と『おばけ桃の冒険』)
第2章⇒『リッツくらい大きなダイアモンド』F・スコット・フィッツジェラルド
第3章⇒『ロアリング・キャンプのラック』フレット・ハート
第4章⇒『世界の肌触り』リチャード・ボーシュ
第5章⇒『善人はなかなかいない』フラナリー・オコナー
第6章⇒『ジム・スマイリーの跳び蛙』マーク・トウェイン
第7章⇒『夏服を着た女たち』アーウィン・ショー
第8章⇒『父親との会話』グレイス・ペイリー
第9章⇒『バナナフィッシュ日和』J・D・サリンジャー
第10章⇒『告げ口心臓』E・A・ポー
第11章⇒『アイロン頭』エイミー・ベンダー
第12章⇒『愛について語るときに我々の語ること』レイモンド・カーヴァー
第13章⇒『古本屋』ロアルド・ダール

↓うーん。どうしても読みたくなったらkindleバージョンで再度買うかも。