道のずっと先を歩く人が、ふと立ち止まり、辺りをきょろきょろし始め、何かをみつけて微笑んでいました。
何?何だろう?
とそのあたりに近づいてみます。
あっ!この香り!!
沈丁花かぁ!!
いよいよ、春の香り花「沈丁花」が匂いを放ち始めました。
菜の花が咲いた!
と思った端から、加速したように春の花の開花が始まったように思えますが、気のせいでしょうか?
ということで、今日の「365日の暦日記」も花のネタにて恐縮です。
「沈丁花」は、丈夫で育てやすいのか、住宅地などを散歩すれば、けっこうあちこちで目にします。
しかし花の頃以外は、葉っぱは、シチューなどの香辛料に使うベイリーフ=月桂樹のようだし、初冬からずーっと白いつぼみをつけているので、ずいぶん印象が違います。
花咲く直前の2月末ごろ、その白いつぼみから、紫色の小さなつぼみがぎゅぎゅと固まって登場し、「おっと、これは沈丁花じゃないか」とやっと気づく始末です。
ほらこんな風に。
しかし、花が開かないと香らないようで、数日前に傍を通ってもなにも感じず、一応、咲きかけの花に顔を寄せてみましたら、やっとかすかに沈丁花の香りはするものの、まだ青臭さが勝った感じ。
花より香りの存在感が勝る瞬間というのがあるのでしょうか。
ある日突然、少し離れたところにいても、芳香をキャッチできるようになる気がします。それからは、それと忘れて沈丁花のあたりを通っても、必ずその香りに引きとめられるようになる。
…といった様子によくよく遭遇するのもこの時期です。
「実は、沈丁花には赤く丸い実がなるのだ」とある年、知人から聞いたことがあって、その年は、それから、花の頃が済んでもずいぶん注意して観察していました。
が、けっきょくそれを見ることはありません。
あとで調べたら、それもそのはず、沈丁花は、雄株と雌株があって、日本に植えられているもののほとんどは雄株だけのようなのです。
沈丁花は中国原産で、もう室町時代には日本で栽培されていたとされます。
とすれば、そのときから沈丁花は、ずーっとさびしく雄だけで花を咲かせて香ってまでいたのでしょうか。
…と、擬人化することもないでしょうが、なかなか興味深い花なのです。
さらに、「木の皮は紙の材料にもなるのだ」とは、その知人の弁。
「ええっ?そうなの??」と、眉唾で聞いていたら、あの和紙の原料になる「三椏」と「沈丁花」は、同じジンチョウゲ科の植物だと調べがついてややびっくり。
そういえば、小さな花が固まって咲く様子とか、花咲く時期が今ごろだとか、なんとなく似たところがあるかもしれませんね。
ということで、三椏の花も。
沈丁花ほどではないですが、ほのかに甘い香りもしますよ。
もっとも重要な共通項は、花の存在感は小さくやや地味なのに、秘められた才能は大きいということかな。
片やその香りが素晴らしく、三椏を原料として作られる日本のお札は、丈夫で世界に類を見ない優秀なものとも言われている。
どちらも、秘めたるパワーを持つ植物。
それの花咲くころが、春っていうのも似つかわしい気がしませんか?
◆今日は、2014年3月14日/旧暦2月14日/如月甲申の日