「ルーズベルトゲーム」や「花咲舞が黙ってない」など、その作品がTVドラマ化ラッシュの様相なのは、「半沢直樹」効果だよね?
とも思うけど、池井戸潤氏の小説が、ドラマや映画になったのは、それより先から結構ある。
古いところではデビュー作の「果つる底なき」(2000年・主演:渡辺謙)、「鉄の骨」(2010年・主演:小池徹平)など。
地上波ではないけれど、直木賞になった「下町ロケット」(2011年・主演:三上博史)直木賞候補作「空飛ぶタイヤ」(2009年・主演:仲村トオル)などもそう。
いずれもハズレのない面白い小説だし、全部は観ていないけれど、ドラマ化も上手なんじゃあないかとは思う。
しかし、私が今いちばんテレビドラマ化→できればシリーズ化してほしいと思うのはこの作品。
2004年に出版された「金融探偵」なのである。
なんか装丁はいまいちですが、物語は、この作家には珍しく、組織人ではない。
主人公・大原次郎は、大手銀行にて融資や審査などの実績をもちながら、銀行が潰れて無職となる。
池井戸作品の特徴のひとつは、大きな組織に属しつつ、その中の矛盾や不正を暴いてゆくという物語。
丁寧に描かれたディテールが、会社員である読者にとっては、「あるあるっ!そうゆうコト!」のオンパレードゆえ、シンパシーを感じ。そこを知性と正義感みたいなモノで正してゆくという、ヒーローモノみたいな展開にすっきりもする。
…というのが、人気の秘密かと。
しかし、TVドラマ「半沢直樹」とその原作を読んで、ふと私が思ったのは、これだけできる人が、なんだってそんな旧態依然とした組織に残っているのかしら?
辞めて、もっと新しいコトをすれば、物語がそのまま、この閉塞感あふれる社会を打破する提案のひとつにもなるのでは?
…というコト。
そこに、同じ作家が書いた、「無職の元銀行員が、その知識と実績を屈指して、市井にあふれるさまざまな問題を解決してゆく」物語である。
これって、新しくない?
世の中は、どこどこ会社の社員だとか、銀行員だとか一部上場にお勤めだとか、そうゆう器の見かけなんてもう何にも意味をなさなくなりつつあると思う。
それより、自分の持ってるスキルを無理なく活かし、誰かにちゃんと喜ばれる。
そして、過不足ない糧を得る。
そして、自由。
…って方が大事だと思う。
「金融探偵」の主人公は、探偵をしつつも、やはりハローワークに通い、就活にもいそしんでいる。
..ってのが、ちょっと潔さにかけるんだけどねぇ。
まあ、それは2004年の作品ということで、せめて、2014年前後の時代背景をかんがみて、「金融探偵を本職にして大活躍する」みたいな続編など書いていただけないかしら?
小説って、エンターテイメントのひとつだけれど、時代に対してそんな新しい価値観を投げかけるものでもあってほしいのよね。