いいかげんに別れたいのは物欲。欲しいのは、モノのないすっきりした生活。

書店に行けば、片付け本はコーナーができるほどの活況ぶり。

で、すでに、ブームというより、いちジャンルとして落ち着いた感じです。

しかも、昨今の片付け本は、かつて隙間家具などを流行らせた、収納ブームとは一線を画し、とにかく捨てる、持たない、汚さないを解く。

数年前に「断捨離」などというコトバが出て来て、はっきり悟りましたが、これらの本は、時代の要請のために私たちにかけられたマインドコントロールに対峙するものだと思う。

1冊読めば、あとは、ほぼ横並びの内容だというのに、新しいのが出ればまた読んでみたくなる不思議。
これって、多くのヒトが思ってない?

だってね、もう誰もが、そこから解き放たれたいのですからあたりまえです。

このジャンルの本は、そんな人びとの願望に応えているのかもしれず。
だからこそのブーム→廃れるという定番のルートをたどることなく、定着したんだと思う。

そして、この本。

モノのために家賃を払うな! 買えば買うほど負債になる! あらかわ 菜美 (著)

モノのために家賃を払うな! 買えば買うほど負債になる! あらかわ 菜美 (著)WAVE出版

これも、その範疇に入る本。

「片付ける方法」に関しては、なんら新しいコトを書いているわけではないのは、他の類似書同様(いや失礼っ!)。
…だって、片付け方法に関して、そんな画期的な書があったら、もうみんなとっくにすっきり生活。
このような本は、もう二度と売れない、出版されないはずでしょう?

それでもかなり引き込まれるように読めたのは、私の中にうっすら残る”経済発展のためにかけられたマインドコントロール”のせい。
そこから、瞬間、目を覚まさせてくれるような、魔法のようなコトバの数々が、秀逸なのです。

それは、たとえばこんな風です。本書から少し拾ってみました。

◎いらないモノは、安くても高い
→このコトバ。無駄づかいしないための呪文のようじゃあありませんか?

◎毎日使うモノを「お気に入り」のモノ、「こだわり」のモノに限定してゆくと。物欲が消えてゆきます。
→これは、物欲をなくす特効薬のようなコトバ。実行すればですが…。

◎きちんと使い込まれたモノたちは、モノとしての一生をまっとうしたことになります。最後は捨てられても、幸せな人生(?)だったといえるでしょう。(略)安易にモノを所有することは、モノの一生を台無しにしてしまうことになります。
→なんでもある時代だからこそ、モノを持つには細心の注意が必要だと、そう思うきっかけになりますね。

◎よく使うモノは使いやすい
→けっきょく、ヒトはよく使うモノだけで生きてゆける証拠なんだよねぇ…。

◎正しい収納方法とは「よく使うモノが、とりだしやすく、また片付けやすい収納」
→この真理をつきつめてゆくと、多くの収納グッズは不要になります。

◎モノを捨てられない時代がやってきます。
→個人個人のマインドの話ではなく、高齢化社会(=亡くなる方のほうが多い社会=不用品が膨大に増える社会)は、制度としてモノを気軽に捨てられない時代になるかも。怖い…。

◎今日が最後のゴミの日だったら?
→これって、もっと恐怖です。明日からは、捨てたら法律違反、犯罪となったら…と想像してみてください。

◎モノを捨てることがどんなにつらいかを経験することで、二度と安易な気持ちでモノを持たないと、心に刻みつければよいのです。
→モノを捨てられない現代人には、荒療治だけれど、コレはかなり手っ取り早い方法。

◎ぜいたくなのは、なにもない部屋
→神社の拝殿とか寺の本殿とか、時代劇に出てくる、武家の居室とかみんな気持ちよさそうです。ああ、ホテルとかもそうですよね。

◎ムダな買い物がなくなる→モノが増えない→スペースにゆとりがある→収納家具がいらない→空間にゆとりがある→ストレスがたまらない
→私たちは、豊かな生活を目指して消費をし、かえって逆の効果を生んでますね。

私たちは「消費を増やして景気を良くし、経済を発展させる」という政府のやり方にのっとって、高度経済成長をなしとげ、やり過ぎてバブルまで破裂させてしまいました。
しかし、そこで軌道修正することはなく、いまだ「買う」という行為が、社会をよくすると考える傾向にある。

今の経済のしくみなら、それはけして間違ってはいないけれど、ならば、おおもとの経済のしくみ自体は、時代に合っているんだろうか?

広告や雑誌や、ニュースなどなどに、ココロをコントロールされ、実は自らで管理できなくなるほどモノを買って、それらに囲まれてストレスを感じる生活。
そして、消費する瞬間は楽しかったとしても、過ぎれば、ただ飽和状態を超えるモノのために使ったお金。
そしてそのお金を稼ぐために、我慢して働く日々。

繰り返して言えば、多くの片付けテーマの本は、かたずけノウハウを得るためというより、その悪魔のようなスパイラルから逃れる強靭なココロをつくるためにこそある。
…そんな風に思うのですが、みなさまはいかがでしょうか?

少なくとも、本書に書かれた数々の魔法のコトバを折に触れ眺めれいれば、部屋のモノの増殖は少しずつ減ってゆくかもしれませんよ。