七十二候は、今日から紅花栄。で、飾ってみました/旧4/28・紅花栄  

5月26日から30日は、七十二候の「紅花栄」

「べにばなさかう」と読んで、「紅花が盛んに咲く」頃ぐらいの意味です。

七十二候では、芽吹きや果実の実り、草が枯れたり木々が黄葉したりと植物の生育を描写する言葉が多く選ばれています。
なかでも「花咲く」ことが、よく季節の目印にされていて、それがこの暦に華やかさを添えている。

私が、七十二候にココロ惹かれたのはまさにこの点にあります。

花咲く季節は、3月初めの「桃始笑」から始まって、春は「桜始開」「牡丹華」、立夏をすぎれば、「紅花栄」「菖蒲(あやめ)華」「蓮(はす)始開」「桐(きり)始結花」と夏の花は春より多く、立秋をすぎて「綿(わた)柎開」「菊(きく)花開」、立冬以降は、「山茶(さざんか)始開」「金盞(きんせんか=すいせん)香」「款冬(=ふき)華」の計12種類。
約2割弱を花で表現しています。

だから、「咲かす」だけのマンネリ化を避けたかったのか、「笑」「開」「栄」「華」「香」と違った言葉を当てていて、そこも、七十二候が好ましいところ。

「紅花」のみに当てられた咲く=「栄」の文字。

現代ならば、「紅花」=「紅花油」というのがいちばんピンと来ますが、かつて紅花は、染料や口紅の原料として非常に珍重されたモノ。

原産は遠くエジプトあたり。
やがてシルクロードを運ばれ中国→朝鮮半島→日本と渡ってきたのは、飛鳥時代の頃だそうです。

朝鮮の「呉」から伝来してきたので、「呉(くれ)」の国の染料で、「くれない」→「紅」。

紅花が入ってくる以前の日本の赤系統の色は、「茜」の根からとった染料で染め、赤というより黄色味を帯びたものだったそうで、紅花の伝来は、日本人の赤の概念をガラッと変えたことでしょう。

当時文化の進んだ大陸から渡って来るモノは、憧れのニューウエイブ。
深く艶やかで発色の良い「紅色」は、特別に「韓紅色(からくれないいろ)」とも呼ばれ、もちろん、その原料である「紅花」は、やんごとない方用にしか使えない高価なもの。
希少な金にも匹敵する価値をもっていたとされます。

花を乾燥させて煎じて飲めば血行促進作用がある生薬で、色素を沈殿させて口紅を作り、種を絞れば油になって、茎葉は野菜ともなったらしい。

紅花は、ただ飾ってあたりを華やかにする観賞用の花とは一線を画す、捨てるところも見当たらない優良な農産物でもあったし、江戸時代には、今も代表的な生産地である、山形最上地方に、富裕な紅花商人を育てました。

そんな特別な花が、盛んに咲き誇る様子は、七十二候を作った江戸の頃なら「富」の象徴のようにも思えたかもしれません。

だから、咲くの意味に「栄える」を使った?
…ちょっと勝手な想像かもしれませんが、ここに、「華」や「開」を選ばなかったところに、昔の人の「紅花」の捕らえ方が表現されているように思います。

紅花栄の時期に、紅花を買う

今の一大産地の山形で、紅花が「栄えるほどに咲き誇る」のは、実は七十二候の時期とはちょっとずれて7月ごろなんだとか。

しかし、私がいつも買いに行く花屋さんでは、今ごろ、価格もずいぶん安くなって登場します。
数週間すると、うそのように姿を消すので、もしや、七十二候を意識しての販売?
…といつも思うけど、まだ聞いてみたことはありません。

安いので多めに買います。

201105ベニバナ2

ボリューム感一杯のまま、紅花だけを飾ります。

201105ベニバナ

安いのに華やかな花器にも負けない存在感。

実は、この花器、あるとき、友人がくれるというので出来心でいただいてきたら、我が家に似合わないコトはなはだしく。
この紅花を飾るぐらいにしか活用しておりません。

枯らす直前に乾燥させてドライフラワーにする

しばらく飾った、紅花は、ドライにして、もう少し楽しみます。

そこで、いつも不思議に思うのですが、紅花は、乾燥させると黄色の花がやや赤味がかってきて、やっとその名にふさわしくなります。

実際染料として使うのにも、花先を摘んで、水にさらして乾燥させてを幾度か繰り返し、水溶性の黄色の色素を水で分離し、ゆっくり紅色にしてゆくのだとか。
とすれば、乾燥させつつ、水蒸気とともに、赤い色素もなくなってゆくのでしょうか?

さて、県の花を紅花に定めた山形の内陸部では、7月上旬から「紅花まつり」が開かれます。
花畠を一面あかるいオレンジ色に覆った様子は、「紅花栄」そのものであるに違いなく、一度訪ねて眺めてみたいものです。

◆今日は、2014年4月26日/旧4月28日/卯月丁酉の日