ホラー、サスペンス、SFにファンタジー。江戸時代ものなどすべての要素を昇華させ、ドールズシリーズ完結!

高橋克彦「ドールズ」シリーズが、とうとう完結!

この作家の作品は、とにかくいつも面白すぎて、ぜったい寝不足になること必至。
で、今回は早朝から読み始め。
おかげで、1日のやるべきことがまったくもって滞るというありさまです。

ドールズ最終章

物語は、7歳の少女に江戸文化文政期の人形氏泉目吉が転生。
目吉は、その少女の中に宿りながら、さまざまな事件を解決してゆくという…ホラー、サスペンス好きのみならず、江戸文化好きにもかなり楽しめる要素が満載のお話です。

ちなみに、前作まで4つの物語がありまして…。

・シリーズ1『ドールズ (角川文庫)→目吉が転生した成り行きみたいなものが描かれ。

・2作目の『ドールズ 闇から覗く顔 』(角川文庫)→少女の中に宿りながら、目吉が、さまざまな事件を解決してゆく連作短編。

・3作目『ドールズ 闇から招く声』 (角川文庫)→一転、大長編&本格派ホラーサスペンス・テイスト。連続猟奇殺人事件を解決。

・4作目『ドールズ 月下天使』 (角川文庫)→謎めいた美少女・聖夜が新キャラとして登場し、魔物「箱神」との対決までくり広がる。

…と、もう、4冊一気読みしなければ、わけがわからなくなりつつも、それでも面白かった。

その4作目が、2008年刊(文庫化が2011年)。

この作家、遅筆なのではなくて、多作にして、そのいちいちが壮大過ぎて、続きがでるのがめっぽう遅いというのが、欠点と言えば欠点。
しばらくは、「続編まだか!」と焦がれていましたが、ついに忘れておりまして。
前作の細かな内容も忘却のかなた。

しかし、本書の冒頭は、最低でも、前作『ドールズ 月下天使』 を読んでいないとちんぷんかんぷん。
しかたないので、書棚から探し出し、そちらをざっと読んでから本書にかかったのでありました(処分してなくてよかったぁ~)

ふーっ。
まったく読み始めるだけでも苦労だぜっ。

さて、『ドールズ 最終章 夜の誘い』 (角川書店)

の読後感は、素朴に「ああ、マジ、完結してしまうのかぁ」だったりもする。
そして、ほどよい疲労感。

寝不足というのもあるけれど、物語は、少女の身体に棲んでいる江戸の名人形師・目吉が、なぜ彼が江戸から現代へ転生しなければならなかったのかの真相を追うもの。
で、陰陽師が登場したり、現代から江戸へとタイムスリップしたり、ついでに、同じ作家の違うシリーズの主要人物が登場したりと忙しかった…というのが当たっているかも。

別に、私がタイムスリップしたわけじゃあないんですが(してみたい!)、なんだかいっしょに連れていかれた気分なんです。

そして、ホラーサスペンスで始まったこのシリーズは、タイムスリップモノのSFを経て、エンディングは、ファンタジー小説さながらと、そこについてく読者の気分転換も忙しかった。

ふーむ。
疲労するのもあたりまえだわ。

とにかく、ページをめくった先になにがあるのか見当がつかない面白さ。
それをもう少しもう少しと追って、休まずゴールしたという感じでしょうか。

読了後のぼーっとした頭で思うのは、主人公・泉目吉の軽妙な江戸弁。
あれももう終わりなんだなぁ…と。

警察のことを「お上」、刑事らを「役人ども」、妙齢の女性を「あねさん」、もっと上は「お上さん」。
「お若ぇの、これで得心いきやしたかい」
なんて、この言い回しが大好きでした。

目吉さんさようなら…。