今年も、酷暑に猛暑で、てぬぐい大活躍の夏がまだまだ続きそうです。/旧7/23・辛酉

盛夏はもちろん、晩夏になっても外出すれば、5メートル歩いたぐらいで滴るしずく。
…ああ、汗かぁ….。

汗をぬぐうにはハンカチでは事足りず、けっきょくここ数年てぬぐい持参に落ち着いた次第です。

っーことで、ただいまの私のてぬぐいコレクション。

植物柄のてぬぐい

右から、「大菊」「瓢箪」「水芭蕉」「鉄線」…最後のつる植物系のモノ忘れました(笑)
てぬぐい柄は、いまや伝統柄のみならず、眺めていると笑みが浮かぶ面白系からモダン系までいろいろ。

しかし、私の場合、買い足すとなっても、落ち着いた夏から秋の植物柄に落ち着いてしまいがちです。

きっかけは、酷暑を避けて涼みに入った美術館。

ちょうど江戸の浮世絵などが飾られていたりして、描かれる世界は、やはり江戸の夏風俗のあれこれ。
そこで気になるのは、夏の風俗ならば、ひときわたくさん描かれている手ぬぐいの柄。
そして、江戸人たちの手ぬぐいの使い様でした。

そこにフォーカスして浮世絵鑑賞をしばし。

いつしか、涼しげな浴衣の柄も仔細に眺め、我がうちにめくるめくのは「この浴衣のきれっぱしで手ぬぐいを一枚ってのもいいかもなぁ」などという勝手気ままな大妄想…。

涼みがてらの浮世絵鑑賞は、ほぼ手ぬぐい柄のリサーチのようなあんばいになってゆき、ハッときづけば、手ぬぐいの専門店で似たような柄を探している自分がいたという次第です。

浮世絵が物欲の刺激になるというのも珍しすぎですが、さっきまで浮世絵で肥やした目には、満足ゆく粋な柄というのが現代にはけっこう少なく、結局、毎夏新調するにしても、植物柄メインに落ち着いたというわけです。

あっ、そういえば、今年新調したのを忘れてました。

八手とそら豆

八手と豆。

あまりモノを買わないしみったれの私にしては、こうして、まい夏新調できるのも、てぬぐいならでは。

よれよれになってさすがになぁ…というのは、半分に切って来客用のお手拭→食器拭き→台拭き→さらに細かく切って食器洗いの前に油や食べかすをぬぐう小布となって役割を終えます。

購入動機も浮世絵の中の江戸人の影響ながら、継続購入同期も、モノを捨てない使い尽くす江戸生活のDNAを今に伝えるものだろうからでしょうね。
当初の用途は同じでもハンカチではこうはいかないでしょう。

てぬぐいの歴史を調べてみれば…。

江戸時代以降は、カジュアルな手ぬぐいも、歴史をたどれば、奈良時代から平安時代の希少品。

材料となる木綿の栽培はまだ普及せず、希少な綿布は、最初、神仏像のほこりをぬぐうものだったらしい。
そんなスタートをきったものだからかどうなのか、平安時代になっても、神事用の装身具として、身分の高い人だけが身につけることを許されるものでしかなかったそうです。

「へぇーこの手ぬぐいがねぇ」

それが、鎌倉・室町・戦国時代と徐々に時代が進むにつれて少しずつ少しずつ庶民の生活用品としてひろがってきた。

キーポイントは、綿花の栽培です。

江戸時代に入ると、綿花が各所…特に都市部近郊で盛んに栽培されるようになり、綿を使った織り手も増えて、手ぬぐいは庶民の生活用品の代表格として普及するにいたったというわけです。

驚くべく江戸人たちの手ぬぐい利用術

江戸人のモノを使うに際しての創造力といったらたいしたものだ!
と思うのは、やはり、この1枚の布きれの使いようの豊富さ&奥深さでしょうか。

・まずはもちろん「手を拭く」「汗を拭く」という用途。
・ひと目をしのぶ「頬被り」…じゃなくて、ひと目より日射しや埃除けの実用ですが、浮世絵などを見ていると、着物と柄をあわせたりもし、粋なお洒落としてはやっていたんじゃないかという気配もあります。
・祭りとなれば、「鉢巻き」用にかかせないのは今も昔も同様。
鉢巻といえば、天秤棒をかついて魚を売る商人たちも鉢巻姿ですが、あれは、商品に汗がかからないような配慮でもあったんだそうです。

落語に手ぬぐいも重要アイテム
歌舞伎の被り物としてもかかせないもの。
当時、その舞台でたまたま登場した未知の手ぬぐいの被り方が、歌舞伎由来の名称を持って、庶民に大流行してゆくなんてこともあったそうです。
…と文化面でも大活躍。

下駄花緒が切れれば、手ぬぐいを裂いて修理
って、それは文化というより実用だろう?とツッコミをうけそうですが、明治大正の文学によく登場するシーンですよ。

・物売りたちがちょいと頭にのっけて「帽子代わり」…現代人にもピンとくるのは、瓦版売りの装束でしょうか。
「前掛け」につかえば洗濯がらく
「暖簾」につかったお宅もあったそう
・使い込んで赤ん坊の「オシメ」にもした。
最後は、細く裂いて「はたき」にしたり、二つ折りしてちくちく縫って「ぞうきん」…という道筋。

そうして作ったぞうきんは、水のなじみが良くて絞りやすく、乾きも早い。
現代のタオル地の雑巾なんかよりもずっと使い勝手が良さそうです。

…ってな具合。

もっとたくさんありそうですけどまあ、この辺で。

手ぬぐいひとつで、これだけ多彩な使用法に文化流行まで生み出して、江戸人、天晴れというしかありませんね。
たった100年ぐらいしかたってませんが、ガサガサ消費しては使いこなせない現代人と、あのころの人々とは、はたしてほんとにおなじ日本人なんでしょうか?

…って、手ぬぐいひとつでそこまで考えることもないですが、われわれの祖先はこの小さな長方形の世界になんとまあ豊かな可能性を見出したことでしょうか。

江戸人にあやかって、おススメ活用法

さて、ハンカチ代わりに持ち歩く手ぬぐいですが、冷房対策…兼、おしゃれにも活用大です。

女性の着物の衿元にちらり見える半襟の柄。
あそこに木綿の端切れを活用している例って、大正時代のドラマなんかでもよくみかけます。(最近ならば、NHKの「花子とアン」の女学校時代の花子の半襟は、ぜんぶ端切れを活用していたみたいです→公式サイト・安東はな的ファッション
江戸人も同様、衿を汚さない工夫をかねて、半襟に手ぬぐいを活用、お洒落として活用していたようです。

そういえば、現代のある日、冷房よけにシャツの首元に手ぬぐいをぐるり。
それがあんがいステキで襟足の汚れ除けにもなるのを発見した次第です。

着物の半襟のようにきちんとたたんで使ってみたり…。

手ぬぐい活用法1

ふわりと襟元にいれてみたり…。
てぬぐい活用法

首元を保護すれば、あんがい暖か。
そして意外におしゃれとしても気に入っています。

ということで、近頃は、服と併せててぬぐいを選んでみたり。
てぬぐい活用法2
大菊の柄が襟元にでるように巻くのが気に入り。

現代の服装の場合、手ぬぐい+Tシャツは、やっぱり労働着モードになるので、併せるならシャツのほうがいいみたいです。

◆今日は、2014年8月18日/旧暦7月23日/文月辛酉の日