<秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花
萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花また藤袴 朝顔の花>
…と、山上憶良が、指折り数え万葉集の歌に読み楽しんだように、秋の七草をまとめて眺めたいものだと向島の百花園に出かけてみました。
百花園は、先日「虫聴きの会」に足を運んだばかりですが、草花といったら下手な植物園よりずっと充実。
そして、自然の風景を参考にして作られたかのような庭園は、他の大名屋敷跡のご立派な庭とは一線を画します。
しっとり秋草などを鑑賞するには最適な風流さを持ち合わせた場所で、季節が良い春秋になれば、なにかと用事をこじつけあしげく通うことになります。
食べる春の七草、愛でる秋の七草
秋の七草は、みな可憐な花をつけ、見る人を楽しませてくれる花が七種。
そこが、春の七草とちょっと違うところ。
秋の恵みがどしどし収穫される季節ならば、やはり、おなかよりも、目を楽しませるものというセレクト基準になるんでしょうね。
しかし、万葉集の時代には、野辺や山に自生していただろう秋の七草も、現代の都会の真ん中では、見つけるのは困難。
さらに、「秋の…」といいつつ、盛夏のころから人知れず咲き始めるものもあれば、晩秋にかけて旬のものもある。
実は、七草がいっせいにそろい踏みするのを見るのはやや難しいのでした。
がっ!
今年の百花園は、6月が開花時期という撫子の花意外は、全部そろい踏みしておりまして…わおっ♡♡
特に9月上旬の今は、朝顔こと桔梗の花と女郎花(おみなえし)が見ごろ。
こんな風に、黄色と紫のコントラストが美しすぎです。
実は、桔梗の花が、百花園でこの時期咲いているのに出くわしたのはコレが初めてでして…。
そもそも、東京地方の桔梗の時期って7月上旬だったような…。
つまり、これって、ワザワザ秋の七草のために植えてくださったのかしら?
こんなに見事に咲いております。
なぜゆえ、「女郎花」という名がついた?
さて、この「女郎花(おみなえし)」。
黄色い花を可憐にさかせる花に、なんで「女郎」なんで言葉をあてたんでしょうか。
草々のお話ならば、柳宋民センセイに聞いてみようかといつもの『柳宗民の雑草ノオト』 (ちくま学芸文庫)を紐解きます。
<この清楚で愛らしき花に女郎花とは、その謂れはよく知らないが、オミナエシにとっては差別待遇されたと怒っているに違いない>
と、さっそく、やや怒り口調。
ははは!おなじことを考えてくださっています。
そして…。
<オミナエシの語源は、「女飯(おんなめし)」といわれ、その米粒のような小さな花を飯粒になぞらえ、美しい黄花を女子に見立ててつけられたらしい>と続きます。
飯ねぇ…確かに、粟粒のようにも見えますが、アカマンマこと蓼(ダテ)が、子どものままごとでのお赤飯なら、これは、サフランライスにどうだろうか…といった色合いでもありますか。
子どものころには、けっこうあちこちに咲いていた記憶もあるのに、主食に見立てる気にならなかったのは、近くで見たら可愛い花。
…だったからでしょうね。
今眺めても、どこかの空き地に、背高に群生しているなら、たっぷりいただいき、どさっと生けてみたい気がします。
野に咲く野草でありながら、確かに女郎花にはそうゆうそこはかとない気品があります。
それは、秋の七草すべてにも言えて、となれば、春の七草が、ちんまり籠に寄せ植えされて売られるように、秋の七草もまとめて花束なんかにならないかねぇ…なども思ってみますが、もちろん、草花たちにはささやかな人間のたくらみなどには、端っから我かんせずなんでしょうね。
ゆうゆう咲き誇る女郎花と桔梗の黄色と紫に、「七草、ひとつ咲くたび何度もいらしゃればよい」
…と言われているような気もします。
ならば、楽しむ側もぬかりなく、藤袴、尾花(ススキ)、葛花…そして、萩の見ごろのころにも忘れずやってきてやりましょう。
ちなみに、「女郎花」の花言葉は「約束を守る」だって!!
ああ、花と交わした楽しい約束ですので、けして反故にはできないなぁ。
まあ、向島もご近所なのでまあいいですか。
◆今日は、2014年9月4日/旧暦8月11日/葉月戊寅の日
◆日の出5時15分 日の入18時05分/月の出14時02分