<秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花
萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花また藤袴 朝顔の花>
…って、秋めいてきたとたん何度もこの和歌を登場させて恐縮です。
世が世なら、山上憶良さんに著作権料でも支払わなきゃダメ?とか思うほど、七草をひとつ見るたび口に出し、あちこちに書き散らしております。
覚えやすいというのもあるでしょうか。
とうとう見つけました撫子(かわらなでしこ)の花!
秋の七草のシーズンインとともに、それを眺めにあしげく通う向島百花園。
しかし、そこにも、たったひとつ、秋には出会えないのが、撫子の花です。
先日聞いたところ…。
「ああ、うちでは、6月ごろなんですよねぇ」と。
「???うちでは?」
実は、この撫子。
花の時期が初夏から秋とべらぼうに長く、植えた時期によって花の頃がずれてゆくみたいです。
なので、百花園の花の頃は6月。
ならば、小石川植物園はどうか?
と思ったとたん、知人が「7月ごろに遊びに行ったら、撫子がもう咲いてたよ。」という…うーん。
ちなみに、撫子の別名は「常夏」。
平安時代などは、完全に夏の花あつかいで、『源氏物語』の真夏の物語(26帖「常夏」)に、いとしく思う玉鬘と撫子の花を読み合うシーンが出てきます。
…そこから撫子=常夏なのかな?
とにかく、山上憶良さんが生きた奈良時代には、秋の花だったというのにまあびっくりです!
というコトで、庭園&植物園→花屋に探し方を変えたのでした。
さすが、商売です!
秋の七草に歌われている、品種「河原撫子(かわらなでしこ)」にこだわって置いてあります。
秋になったら秋の七草を探すヒトって多いんでしょうね。
多くの花屋さんで秋の七草の株や切り花が揃ってました。
一株330円。
…といっても葛の花以外ですが→理由はコチラをお読みください「秋の七草・葛の花も、いよいよ堂々と咲きました/9/13=旧8/20・丁亥」
「河原撫子」は多年草だそうですので、ちゃんと世話をすれば、毎年秋に花を咲かせるかもしれませんね。
「やまとなでしこ」の語源ってこの花?
さて、撫子ときたら、思いつくコトバがあって「ヤマトナデシコ」と、最近では「ナデシコジャパン」とか。
意味は「みためは弱そうでも芯は強い」日本女性への敬意を込めた形容ですし、サッカー女子選手の「ナデシコジャパン」もそこからつけられた名であることは想像に難くない。
こうゆう時はいつもの『柳宗民の雑草ノオト』 (ちくま学芸文庫)を紐解けば、ありました。
しかし、冒頭からいきなり
<…もっとも近ごろの大和撫子は少々強くなりすぎで、往時の大和撫子とはかなり趣が変わり、もはや死語になってしまった>
ですって、ああ、すみませんねぇ。
で、わすれちゃならないその語源。
<この花の別名ヤマトナデシコは、中国産のカラナデシコ(唐撫子)に対して付けられたのが正しいようで、日本女性の特長を模して付けられたのではないらしい>
…だそうです。やっぱり、日本に古くからある河原撫子=大和撫子みたいですね。
『雑草ノオト』には、カラナデシコ(唐撫子)の渡来の時期はかかれていませんが、例によって改良種として珍重されはじめたのが、江戸時代とあります。
しかも、野心ある江戸の園芸職人は、年に1回、一定の期間だけ開花する「一季咲き」の撫子を、四季咲きに改良してしまった!
その名も「常夏」!
ああ、撫子を「常夏」と呼び始めたのは、江戸時代からだったのですね。
そして、命名の由来に『源氏物語』を使ったのかな?
するってーと、ホントの花の頃っていつだったのかな?
花の時期が長くなったのは、この辺に隠された(?)事情がありそうです。
…ふーむ。
なんか調べるのが楽しくなって終わらなくなりそう!
植物の世界は、わけ入ってゆくだに深みにはまる面白さ満載なのです。
◆今日は、9月21日/旧暦8月28日/葉月乙未の日
◆日の出5時28分 日の入17時40分/月の出2時33分 月の入15時51分