雑草・野草の混じって宝石散らばる「野葡萄」も実る秋です。/旧暦9/3・庚子

この美しいもの。

野葡萄1

ブドウ科ノブドウ属落葉性の蔓植物「野葡萄」といいます。

はじめてこれを見つけたときは、一瞬宝石が散らばってるのかと思いました。
…それが大げさなら”ビーズの生る木のようだ”というのが似つかわしいでしょうか。

冬場は、枯れたような細い木だけが空き地のフェンスなどに絡まっているのみですが、春から初夏にかけて葡萄の葉のような幅広の葉をつけ、巻きひげを伸ばし、盛夏の頃に眺めにゆけば、薄緑色の花とも花弁とも判断がつきにくいものを咲かせていました。

知らなければ、ただ鬱蒼とした草むらですが、とりあえず花が咲けば、今年も美しい姿が眺められるしるし。
それを見つけてからは、日々、秋の野葡萄の様子が楽しみでなりませんでした。

そして、いよいよ、まあるく艶々した実の季節です。

空色、薄青、青、瑠璃、紫、青紫、群青、コバルトブルー、緑、薄緑、エメラルド…青・緑・紫色系のビーズがあらかたそこで揃ってしまうような微妙な色合いのバリエーション。

野葡萄2

ひとつの株から育ったものだというのに、これはいったいどうゆう事情からなのでしょうか?

しかも、たった1度だけ、我慢しきれず藪の中から少しだけいただいて、切花として飾ったところ瞬く間に色あせてしまった。
挿した水が水道水というのがもうだめだったのか、こんなに美しくても、野にいなければこの美しさは成り立ちません。

野葡萄は、「蝦蔓(えびずる)」、「山葡萄」などとともに、古くからある日本の自生種

この種は、西アジアや北米原産をルーツとする現代の葡萄とはまったく種類が違います。
そもそも、ブドウという呼び名も、大陸から現物のブドウといっしょに入ってきたらしい。

それ以前の日本の自生種葡萄類は、ぜんぶひっくるめて「えびずる」あるいは「えびかずら」などと呼ばれていたんだそうです。

「えびかずら」といえば、思い出すのは『古事記』の「黄泉の国」の章。

黄泉の国の追っ手のシコメの気をそらすため、イザナギノミコトはいろいろなものを投げつけますが、その最初が、頭に被っていたクロミカズラの冠で、投げ捨てたあとには「えびかずら」が生えてきて実がなって、シコメたちがその実を食べている間にどんどん逃げたというエピソード。

とすれば、死の国の追っ手をかわすための小道具が、もしや、この美しい木の実だったのかしら?!と、少し期待もいたします。
なんだかとっても絵になりそう。

…いやいや、蝦蔓(えびずる)、山葡萄などは、食用ですが、野葡萄ひとつは食用にはならないそう。

なあんだ、残念ながら、それはちょっと違うようでした。

野葡萄は、食用というより薬用としての活用の歴史は古いらしい。

野葡萄のことを、中国では「蛇葡萄(じゃほとう)」などと呼び、ふるくからの漢方の薬として使ってきたようです。

もちろん、日本でも、民間伝承の薬草として、昔からさまざまな薬効が期待され愛用されてきたとも言われ、腫れ物、うちみなど抗炎症、鎮痛など軽いものから、肝臓の薬にもなるなどと、調べてみれば、薬効もいろいろ。

美しい外見だけでなく、ずいぶん役立つものでもあったのだなぁ…と、今日もまた遠回りして眺めております。

野葡萄3

そして、いつしか頭をよぎるのは、これを美しいまま乾かして、ビーズとしての使用法はないものか…だったりもして…。

野葡萄4
だって、近寄って見ても、完璧にビーズみたいでしょ?

つまり、この美しさをだただた眺めるだけというのが、ちょっと残念な気がしてならない私です。

◆今日は、2014年9月26日/旧暦9月3日/長月庚子の日/彼岸明
◆日の出 5時31分 日の入17時34分/月の出6時11分 月の入17時59分