七十二候が「雷乃収声」なら勝手七十二候は「秋桜咲盛(こすもすさかんにさく)」/旧暦9/4・辛丑

お彼岸の中日「秋分」から、七十二候は「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」(9月23日~ 9月27日)に入っております。

ああ、そういえば、9月中旬ぐらいまで性懲りもせずやってきたゲリラ豪雨。
…といっても、台風の季節まっただ中ではありますが、少なくとも、それといっしょにゴロゴロいってた雷さまは、とんと気配を消しましたね。

時々、西の空が、黒雲で覆われて、いっしゅんゴロっと…あっ!来るか?
と身構えた日もありましたが、そういえばそれっきり、「あれれ?気のせいかな?」なんて思った記憶があります。

こうゆう、名残惜しそうにゴロッと鳴る雷は、「遠雷」といって、「もういいかげん辞めるからさ」と、雷サマが夏の終わりを告げているようです。

秋分に紐づく七十二候は、去りゆくものばかりを追いますが…。

この時期の七十二候。
「秋分」の日から「雷乃収声」で始まって、次候は「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」、末候「水始涸(みずはじめてかるる)」と、今まで生じていた自然現象も、夏らしいいきものも「いなくなる」ということに焦点が置かれる。

暦の上では、やや物寂しげな気分の日々が続きます。
思えば、その傾向は、「白露」の末候「玄鳥去(つばめさる)」からあったかな?

が、それでなくとも物寂しい秋。
居なくなるモノに焦点を当てていると、その寂しさが増すばかりです。

なもんで、いつものように、勝手七十二候を作ってしまおう!

「秋桜咲盛(こすもすさかんにさく)」なんてどーだろね?

秋空に秋桜

雷の時期は去ったもののこれからの時期は台風を警戒する季節到来。
そんな時期に、わざわざあの繊細な秋桜(コスモス)が咲くって、またなんだって??

…と思うヒトがいたならば、それは、花屋の店先でしかこの花を知らない証拠です。

台風がやってくると、さまざまな秋の花や実りの無事を思いますが、実は、このコスモスこそは、その台風にたおやかに相対しているような強い花。

そもそも、1年草のくせに昨年のこぼれダネをほおって置けば、翌年おなじ場所に芽を出している。

芽生えたころからあの細く細かく分岐した葉っぱなもんで「これは、コスモスの芽」とヒトは特別扱い。
草むしりのときも、ついついよけておいたりするものです。

が、それがまた大間違いだったと思うのは、コスモスがあらかた生長したあと。

伸びた秋桜

こうなってから「ああ、なにも大事にとっておかなくともいくらでも大きくなったのか」と思い知らされるのです。

そして、あれよあれよと、小柄な大人の身長ぐらいに成長をとげて花を咲かせる。

背高秋桜

一株にはたくさんつぼみがつくから花のころは長い。
パステル調の水彩画のような爽やかな美しさを、秋中、キレイだなぁと、ぼんやり眺めほおって置いてしまう。

すると、翌年以降、その群生はさらにどんどん面積を増してゆきます。

福島の母の家の裏庭には、こうして毎秋こぼれダネのコスモスが群生し…。

秋桜群生

さて、このように秋桜が、咲き誇った美しい光景を待っていたかのように台風が一過二過。

もののみごとになぎ倒され、咲いた花もどこかへ飛んで、一瞬無残な様相をみせます。

「あららたいへん!」とも思いますが、いろいろ取り紛れているうち、コスモスのほうは自らむっくと弓なりに立ち上がり、そこに新たな根をおろして平気で新しい花を咲かせ、いつの間にかなにもなかったかのようにもとの姿に戻ってしまう。

ああ、コスモスって、ほんとうに強い。
この抗わない強さ…大したものだわ…とまで思ってしまうのです(笑)。

コスモスの原産地はメキシコ高地。日本には明治時代の中ごろに伝来

そんな最近やってきた種だというのに、もうこんなに日本の秋を席巻する勢い。
これほど丈夫な種ならば、立派な侵略的外来種って言ってもいいぐらいじゃないの…とコスモスを前に少し構えてもみますが、相手の見た目はやっぱりか弱そうな花。

初めてこの花を見た日本人は、きっとその外見にだまされたのでしょうね。

秋桜

わかります。

「秋桜」という日本名がそれを如実に語ってもおります。
ほんのりピンクの色合いも花弁のカタチも桜の花によく似ているし、その繊細なたたずまいが春の桜にそっくり。

秋桜ピンク

…とついつい思ってしまったのでしょうね。

しかし、ぱっと咲いてぱっと散る桜は、せっかく美しく開花しても、そこに春の嵐がやってくれば、翌日はもう花は終わりと覚悟が必要。

一方、コスモスは先にお話したように、台風すらも飄々と気にせず、どこふくかぜ。
この差を知ってしまえば、コスモスと桜は、もう育ちも踏んだ場数も天地の差ぐらい違うってなものです。

この花は、どちらかといえば、スペイン人により、ギリシャ語からとって名づけられた「コスモス」という名のほうが「体」をあらわしている。

星たちが美しくならぶ宇宙=コスモス。
花びらが整然とどこまでも並び群生するコスモス=宇宙。

その生態を知ってしまえば、こっちのほうが、ずっともっとこの花の名らしい気がしませんか?

なぎたおされようと抜かれようと何事もなかったようによみがえるしなやかな強さ。
この花は、大いなる宇宙のようになんでも受け入れ取り込んでしまう懐の深い花。

それを知ってか知らずか、私たちは、いつしか、和名「秋桜」ではなく「コスモス」とだけ呼ぶようになっていました。

…というコトで、この勝手七十二候「秋桜咲盛(こすもすさかんにさく)」。
秋の入口に感じる(ちょっとムダな)寂しさ、吹っ飛んじゃいませんか?

◆今日は、2014年9月27日/旧暦9月4日/長月辛丑の日
◆日の出5時32分 日の入17時32分/月の出8時05分 月の入19時10分