彼岸明けて、七十二候は「蟄虫坏戸」に。店先では梨が黄金色に輝いています!/旧暦9/5・壬寅

去る9月26日には、彼岸も明けて、暑さ寒さも彼岸までといわれるとおり、残暑も去ったみたいですね。

そして、七十二候は、今日9月28日から「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」(10月2日まで)に入りました。
寒くなったので、虫たちも冬ごもりの支度をはじめる頃という意味です。

小さな生き物たちは、地中に姿を消して、来春の「啓蟄」&七十二候「蟄虫啓戸」の頃まで出てこない。
うーむ、どうも秋の入口を寂しくしているのは、この去りゆくものを惜しむ感じ、古くからの暦の姿勢にもあるかもね。

だから、いつもの勝手七十二候は…梨でいこう!

「梨実黄金(なし、こがねにみのる)」なんてどお?

残暑も去れば、店先をかざるフルーツは、梨。
ぱっと見れば、お店の棚が、黄金色で飾られているようにも見えます。

梨

一足早かった「幸水」「新水」などもまだありますが、現在のメインストリームは「豊水」「二十世紀」「新高」「南水」…ああ、またもいろんな名前が並んで興味深い。
ちなみに、写真の梨は、左から時計回りに、「二十世紀」、「豊水」、「南水」です。

思えば、春には春柑橘が、夏には李がこんな感じの名前の饗宴
果物たちからその旬の味でもてなされ、さらにそのさまざまな名前に楽しませていただきました。

そして、来る秋には、同じ楽しみを梨が演出してくれます。

せっかくですから、梨の品種をいろいろ調べて見ましょうか。

・まず、懐かしいところで「長十郎(ちょうじゅうろう)」
…なんていったら年齢がばれます?
えっ?何のコトかわからない?

…そうですか。

実は、昔はどこへいってもこの梨ばかりが売られていたものですが、今はあまり生産されていないのだそうです。
ちなみに、趣き深い名前の由来は、品種発見者の名前。
とにかく昭和の子どもにとっては、梨といったら「長十郎」さんだったのです。

・「新高」「新興」「愛宕(あたご)」という名があったら、それは大玉ブラザーズ

ひと玉1kgになるものだってあるんだそうですよ。
そういえば、記憶の端に上るのはメロンぐらいの大きさの梨。
育ちすぎて美味しくなさそうなどと無知蒙昧な避け方をしておりましたが、あれはこの品種のうちのどれかでしょうね。
…そうなんだ、今年は見つけたら、ひとつはいただだいとこうと思います。

・「秋月」(あきづき)」「にっこり」などとあったらまだ新しい種。
どちらも、平成生まれの梨だそうです。

ちなみに、「にっこり」は10月下旬頃に出回る晩生大玉種とか。

…と、その他、調べれば調べるほどに登場する品種名。
もしや無限にあるのか?と思えてしまうほどです(笑)。

きりがないので、ともかくその名だけでも羅列させていただきまししょうか。

「晩三吉(おくさんきち)」
「多摩(たま)」
「雲井(くもい)」
「彩玉(さいぎょく)」
「稲城(いなぎ)」
「新甘泉(しんかんせん)」
「きらり」
「菊水(きくすい)」
「なつひめ」
「かおり」

ふーっ。
もう、やめときましょう。多過ぎです。

って言うか、書いてるうちに、「私、日本酒の名前を書いてるんだっけ?」という気分になってきました。

思い返せば、思えば、春柑橘の名は、フルーツの棚に爽やかな演出を施していた。
李の名は、まあ、詩情感を漂わせてたかな?

そこへくると、梨の名は、貫禄満点です。

日本の梨の歴史は、すごーく古いのであたりまえかも

『古事記』の冒頭から登場した「桃」と同様、「梨」も日本人とは古くからの付き合い。

一説には弥生時代から食べられていたという説すらあります!

『日本書紀』には、もうすでにその記述があって、持統天皇7(693)年3月17日に発した詔に登場。

<全国に桑・紵(からむし)・梨・栗・蕪菁(あおな)などの草木を勧め植えさせられた。五穀の助けのためである>(『全現代語訳 日本書紀』講談社)
とその栽培を奨励していたようです。

ちなみに、現代のように品種名で取りざたされるようになったのは、やはり品種改良が盛んだった江戸時代からだそうで、当時は、100を越す品種が果樹園で栽培されていたんだとか。
へぇ~っ!

もしかして、現代よりも品種は多かったかもしれませんね。

江戸人が、よくぞ「なし」の呼び名を残したものだと思えば…。

江戸人といえば、駄洒落に通じる言葉遊びの達人たち。

品種をいろいろいじる前に、そもそも読みが「無し」に通じる「梨」の名を江戸人たちが変えようとしなかったのがやや不思議な感じがしませんか?

ひねりやもじりで言葉遊びが好きならば、「有り」にかえちゃうのだって造作もなかったろうになぁ…。
と、思うのですが、調べてみれば、やっぱり。

やはり忌み言葉として気になったのか、「梨」に「有りの実」の名を当てていたという事実があったようです(笑)。

あるいは開き直りのあやかり遊び(?)

「無し」にあやかり、家の材木に梨の木を使って「何も無いから盗みに入らぬように」と盗難除けに。
鬼門に梨の木を植えて、この家には「鬼門が無し」
…などと考えたりもしたらしい。

ふふふっ、さすがです。
ただでは転ばなかったというわけですね。

ああ、やっぱり面白いですねぇ。

日本の梨は、洋梨に比べてルックスは平凡とおもってきましたものの、これでもかっといった具合に名前を並べられてはまいったの一言。

ひとつひとつ、その名をかみ締めながらいただきたくなるっていう、いつもの怖すぎる興味。
そんなコトを思い始めたら、秋中梨ずくしになること必至ですって私っ!

ということで、とりあえず、今日は、二十世紀からいただきま~すっ!

二十世紀

◆今日は、2014年9月28日/旧暦9月5日/長月壬寅の日
◆日の出 5時33分 日の入17時30分/月の出9時03分 月の入19時51分