紫の可憐な草花だというのに、「竜の胆」などというなんだかとても強そうな名前がついています。
秋の七草もあらかた終わり、紅葉した葉も見ごろを過ぎた晩秋のころ、色ずくものが無くなった中、ただひとり紫の花を咲かせるらしい竜胆(リンドウ)の花。
となれば、野生種が咲くのはもう少し先でしょうが、街の花屋では、ご覧のとおり。
もうリンドウの鉢が、登場し、うまくすればセール品の定位置に置かれ、安くたくさん買えるようになりました。
切り花のリンドウのほうは、菊とおなじくほぼ通年入手可能ですが、鉢モノのほうは、晩秋から初冬の花。
これが、店頭を飾り始める頃は、ときどき北風もやってきて、冬の気配も濃厚な時期。
もう何回も言ってるけれど、早いですね、季節のめぐり。
リンドウは群生せずに一輪ずつ孤独に咲く花
この時期は、切り花のほうのリンドウもちょっとお買い得になって、一抱え買って1000円しない。
「どこかの野辺で採取してきたかのようにどっさり飾れる贅沢は、晩秋の頃のささやかな楽しみでもあるねぇ…。」
と私。
そしたら…。
「リンドウは群生しないで一本ずつ孤独に咲くものだから“野辺で一抱えの採取”は難しいかもよ」
と、山方面で育った友人が笑いながら教えてくれました。
ああ、そうなんだ。
しかも、花は晴れた日にしか開かない。
その友人から、ついでに教えてもらったリンドウ豆知識によれば、その花は、雨はもちろん曇りの日にもそっとつぼみを閉じて眠ったようにたたずんでいるから目立たない。
山道を歩いて印象的にパッと際立つ美しさに出会うのは、「このごろ晴れの日が続いていて気持ちがいいなぁ」と思うような時なんだとか。
暑いの寒いの、暴風雨だのと忙しかった空模様も、先週まで晴れ続き。
もしや、友人の故郷の山道にもそろそろリンドウが美しい紫紺の花を咲かせていたかもしれません。
といっても、ここ数日は、また雨模様ですが…。
花が終われば、「リンドウ」から「りゅうたん」へ出世する?
ちなみに、その豆知識のつづきですが、リンドウの花も葉も枯れはてたら、根を掘って冬の陽射しで乾燥させて作られた生薬の名がおなじく「竜胆」。
こちらは、「りゅうたん」と読み、すごく苦いと言われる「熊の胆(い)」よりも、ずっともっと苦いんだそうで、熊よりすごそうな竜の胆となずけてしまった。
それを音読みにしたのがなまって「リンドウ」なんだそうです。
熊も竜の胆もどちらもいただいたことはないので、いまいちピンとはきませんが、良薬は口に苦しのとおり、よく効く胃の薬だそう。
しかし、実が生るわけでも、とくだん効きそうな臭いを放っているわけでもないこの花の、その美しさにめもくれず、最初に根っこの薬効に気づいたヒトってどんなかただったのだろう?
しかも、昔は、疫病草(えやみぐさ)と、薬とは真逆のイメージの呼び名まであったらしいのに、勇気あるよ。
…と、ついつい思考はそっちのほうに脱線をします。
ずいぶん美しい花なんですがねぇ。
「りんどうの花が咲いたよ」は冬の知らせ
りんどうの開花は、冬の到来の予告でもあって、もう季節は最終コース。
東京の花屋で、リンドウの鉢が安く売られ始めるのは、本当にもうすぐそこまで冬が近づいているしるしでもありますねぇ…。
もううそろそろ冬支度の時期。
ああ、今年も暑い日が続いて、しまいわすれた夏物がたくさん。
りんどうを飾った横で、あれをせっせとかたずけなくちゃなりません。
◆今日は、2014年11月2日/旧暦 閏9月10日/長月丁丑の日
◆日の出 6時03分 日の入16時45分/月の出13時44分 月の入0時33分