季節の暦、七十二候は「熊蟄穴(くまあなにこもる)」の時期(12月12日~12月16日)。
意味はそのまま、クマが冬ごもりのため、巣穴に隠れる頃と言うコトですが、冬眠する動物すべてのコトをあらわしているようです。
山間部ならば、この季節、人里にクマやイノシシが餌を求めて降りてくると騒ぎもなくなるでしょうか。
一方、東京などの街場に住んでいると、この時期は、どんどん騒々しくせわしなくなるばかり。
うーん、何か冬に備えて、冬眠とまではいかないまでも、落ち着いてゆくモノってないかしら?
ありましたっ!コレって植物の冬眠?
日本庭園の松などに施された「雪吊り」です。
数日前の二十四節気「大雪(だいせつ)」あたりを境に、ニッポンは寒気団に覆われて、四国など意外な場所でも大雪が降ったもよう。
さらには、一昨日あたりからまたも大雪を降らす寒気が来襲。
東京地方はまだ雪こそ振りませんが、外気は十分に冷たくなった。
こんな風に空気が凛とすれば、「雪吊り」の光景も妙に似合うというモノです。
雪吊りといえば、金沢の兼六園のものが有名
庭園の規模が大きいために、雪吊りの作業が始まったニュースを聞いたのは確か11月の上旬頃。
兼六園には、樹木が約800本ほどあるそうですが、そのすべてに雪吊り作業を施し終わったと聞いたのはつい最近のことです。
それを待ちかねるように日本列島に冬将軍がやってきた。
金沢の地では、そろそろ、円錐状に吊った松などに、雪が積もって、厳しいながらも風情豊かな光景を見せてくれることでしょう。
大雪が稀な東京の「雪吊り」の作業は11月下旬スタート
風の便りに聞いたそれも、やはり先ごろ終えられた模様。
ご近所、駒込の六義園へ出かけてみれば、美しい松の「雪吊り」が完成していました。
暖かい街のそれは、雪の白ではなくて空の青と紅葉の赤を背景に、それなり風流な景観をつくっております。
これは「りんご吊り」と言うカタチだそうです。
「雪吊り」にも、実はいろいろ細かな手法があって、六義園で目立このカタチ。
「リンゴ吊り」というカタチなんだそうです。
作り方は…。
1.木の幹に沿って天高く棒を立る。
2.その天辺から枝先に向けて縄を垂れる。
3.垂れた縄を、ひとつひとつ結んで仕上げる。
だそうですが、それが何でリンゴなのかな?
この手法は、最初、リンゴの樹木の枝を、実の重さから守るため工夫したのを、他の樹木に応用したんだそうです。
つまり、最初に吊ったのがマジでりんごだったってコトですか。
「男結び」という独特の技で丈夫に結ぶ
さて、「雪吊り」のてっぺんに視線をやれば、垂直に流れる縄をぎゅっとまとめて、同じく縄でしっかり縛ってありますね。
こんな風に、髪の毛みたいに、藁をバサバサッとする手法もあります。
どちらも、棒の先端に寄せた藁が美しい意匠になっております。
下に垂れた縄も、枝先ひとつひとつにしっかり丈夫に結んで、これでそうやすやすとは緩まない。
ちなみに、この結び方は「男結び」というんだそうで、雪囲い・冬囲いをするとき独特の技。
根元には、小さな庭園風の演出
「雪吊り」の趣旨は、冬に雪が降って樹木の枝が折れないための防御策。
ですが、実用と言うには、あまりにも芸術的です。
根元に、藁で木々全体を覆ったように模した飾りや石などを置いて、小さな庭園風に演出する遊びココロ。
こちらは「霜除け」という手法。
ただねぇ、普段こんなところに、植栽があった記憶がありません。
植物があって覆ったのじゃあないと思うが…。
もしや、中は空洞?!
…いや、蘇鉄(そてつ)があった、と友人の弁。
なぁんだ(笑)
とにかく、その趣旨・目的を満たして満足することなく、そこを遥かに越えた職人たちの工夫とこだわりを描き出しておりますね。
庭園の木々に施された「雪吊り」は、雪の季節を美しく豊かに演出するものでもあって、それ自体を、ひとことで言い表せば「キリりとかっこ良いもの」。
あるいは、長く修行した人々にしか醸し出せない品格ある遊び、余裕の部分が、美しい造形美を見せているともいえましょうか。
雪が降らない東京も、実は「雪吊り」が盛んですよ
けっこうな手間とコストがかかるだろうになぜ?
と思いつつも、六義園、小石川後楽園、旧古河庭園、日比谷公園、旧芝離宮恩賜庭園に浜離宮恩賜庭園…etc。
とありそうな庭園を数え上げてみればなーるほど。
もともと、都の庭園は、将軍や大名、明治期の財閥所有だったモノが数多く。
贅を尽くした造りをそのまま維持しているというわけですね。
ふーむ。
これは、一応ひとまわりぐるっと観ておくべき東京の冬の風物かもしれません。
◆今日は、2014年12月15日/旧暦10月24日/神無月庚申の日
◆日の出 6時43分 日の入16時29分/月の出–時–分 月の入11時57分
◎都内の庭園情報⇒庭園へ行こう