クリスマス終了!と思ったら、舞台の早変わりさながらに、街には門松と松飾の露店が登場! /12/26=旧11/5・辛未

目覚めれば、街にはもう門松。

賑やかだったクリスマスも終わり、街は、たった一晩でお正月仕様になりました。

キラキラ輝いていたイルミネーションも無くなって、代わって、あちらの屋敷の門柱に!

御屋敷の門松

老舗和菓子やの店先!

和菓子やの門松

しかも、ショウウインドウに並ぶお菓子もお正月仕様です。

お寺の山門にも、もちろんあります。

お寺の山門の門松

そして、ちょっと丸の内方面に出かければ、オフィス街のビル入口付近にもありました。

オフィスの門松

しかも、いちばん立派ですね。

そして、街の辻には、お正月飾りの屋台も現れ、まるで舞台の早変わりのよう!

毎年のことながら、驚くばかりの変貌ぶりです。

クリスマスを祝う習慣が無かった頃ならば、お正月の準備は12月13日頃から

江戸時代ならば、その日は、町をあげての大掃除たる「煤払い」

そして、門松用の松を切りに出かける「松迎え」も同じく13日

…と、ずいぶん早くからはじまっていたんです。

今みたいに流通網が発達していませんし、松を切るのも運ぶのも人力ですから当然ですか。

「松迎え」は、来年の恵方へ出かけて松を切り出す風習

恵方は、もちろん来年もっとも縁起が良い方角
そして、担当するのは、来年の年男です。

年末に来て、大変ですなぁ…。
実際は、旧暦の12月13日の行事ですので、雪なんかも降ったかもしれない。

大変だけどしかし、松飾は、年神様をお迎えするためのモノですので、名誉あるお役目でもあった。

切って運んだ松は、すぐには飾らなかった。

松は、しばし保存して、年末になって改めて門松に仕立てて飾ったそう。
そして、飾るにしても、やはり厳密な作法があったみたいです。

いつものように江戸時代の行事の参考書から一冊『絵本江戸風俗往来 』(菊池貴一郎 東洋文庫)を紐解いてみましょう。

記述によれば…。

・江戸の門松飾りは例年12月28日と定められていた。
・江戸城の出入り口、三十六の見附門が門松によって飾られるのが一番最初。

そして、
・江戸城の飾りつけに倣うように大名、旗本、大社が飾る。
・同じく、町人の中でも裕福な大店などもお抱えの鳶職に頼んで飾ってもらう。

…という順番。

驚くべきことに、一般の町家ですらも
<町内の鳶頭引き受く。同一に松竹を立て注連縄をかく>
とあって、鳶職をまとめる者が、町内の松飾の世話を焼いたようです。

といっても、長屋でまとめて一か所に飾るってコトだったんだとは思うのですが、大家さんとか差配さん(長屋の管理者)がお金を負担したんでしょうか?

江戸人たちの正月準備は、もうただ皆が一斉。

皆で、にそこに向かって走り出すという感じですねぇ。

12月8日「事八日(ことようか)」の日に、天高く笊を上げみんなで揃って魔物を祓い。
12月13日に、一斉なる「煤払い」&「松迎え」を終え。
12月28日には、たった一日にして江戸市中津々浦々まで門松が飾られた

…という具合。

潔いというか、気が短いのか。
いつまでもだらだら続けることなく、スッパリ前にすすめようとする感じが、江戸っ子らしいのかもしれませんね。

さて、現代の東京あたり。

東・東京では、浅草寺本堂裏で、しめ飾りや松飾りの業者専門の卸し市「ガサ市」が始まるのが12月14日。
同時にその周辺の浅草の繁華街は、門柱やら商業施設の入り口やらに松飾があしらわれます。
羽子板市などで浅草を訪ねるころは、もうこんな松飾りがクリスマス仕様の飾りと並んで街を飾っておりました。

浅草 松飾

ちなみに、「ガサ市」の顧客の多くは鳶職人たちで、鳶頭は、そこで仕入れられた材料を使い弟子に門松や松飾りの技術を実地で伝えつつ、併せて露店の準備も進めてゆきます。

そして、クリスマスがあけた今日。

商店街やら駅前の交差点やらに、一般向けにお正月飾りの露店が現れる。
その素早さは、もう、やや唐突なぐらいです。

売り子は確かに、地下足袋にハッピをいなせに決めたおじさまたち。

我が家は、集合住宅の一室ということもあり、門松も玄関に飾る松飾もなし。
歳神サマの依り代は、鏡餅のみで失礼させていただきますが、買わなくとも、お正月飾りの露店の寿ぐ感じは楽しくて、ついつい冷やかしで一軒二軒…。

毎年、スーパーに売られるものと大差なさそうなのにもかかわらず、ずっと良いものに見えてしまうのは、この鳶職人の威勢のよさもあるかもしれない。

門松&松飾を飾るなら、現代だって江戸に倣って28日までに。

29日は「九」は「苦」に通じ、そんな日にわざわざ松を飾れば「苦松(くまつ)」となってしまう。
31日はインスタントな一夜飾り。
どちらも歳神サマに失礼で、正月早々、ちょっと気分をそこねちゃうかもしれません。

で、30日だったらいいのかな?
…と思ったね?

それは最悪忘れちゃった場合の予備日ぐらいに考えて、やっぱり、お飾りぐらいはお早めに。

◆今日は、2014年12月26日/旧暦11月5日/霜月辛未の日
◆日の出 6時49分 日の入16時34分/月の出 9時46分 月の入21時23分