『限界集落株式会社』読了。すべての「問題解決」は、もう徹底的にありえないことも含めて夢を語るところからってヒントをもらった気がする。

黒野伸一『限界集落株式会社』 (小学館文庫)を再読了。

限界集落株式会社

なんで「再」かと言うと、2015年1月31日~2月28日まで全5回で放映された、本作を原作にしたドラマが面白かったから。(ってのを、いまごろレビューしております・汗)
面白かったんだけれど、TVドラマはやや常識的で(NHKだからか?)、けっこう前に読んだ原作は、もっと奇想天外なアイデアで満ちていたような記憶があって、ちょっと確かめたくなったんだよねぇ…。

っていっても、本書は2011年、東日本大震災の秋に出版&即座に読んで、新しいうちに古書店に売ってしまって手持ちなし。
…うーん。
やっぱ本って読み返すよねぇ。
で、文庫が出ていたのでそれを買う羽目になる、ベストセラーになるはずです。
まったく。

まあ、それはさておき。

本書には、農村復興の明るいアイデアが満載

ちなみに、本書のタイトルだってそう。

限界集落は、人口の過半数が65歳以上の高齢者が占めるエリアのコトを言い、こうした集落は、徐々に公共サービスを受ける権利を失ってゆくことになり⇒さらに過疎化。やがて消滅の可能性が大…つまり、日本の大きな社会「問題」を現すコトバ。

それをタイトルにつけちゃうセンスに、読者は、並々ならぬ視野の大きさを感じるのである。

すべての事象は、一度「問題だ!」と思ってしまうと、それを取り除こうとするチカラが強くなる。
だって「問題」だもの。
不愉快で、邪魔で、嫌なモノ。
さっさと解消しちゃわないとね。

しかし、そうゆうコトバをタイトルに持ってこられると「それってホンキで厭わしいモノなのかしら?」
…と、新しい思考が始まる不思議。

もう書店で本書を手に取った時から作家の素晴らしきたくらみにはまってしまうのである。

「限界集落」に、どこにもなかった価値をみいだし、ブラッシュアップしてゆく話

舞台は、東京都心から中央自動車道で2時間、ICを降りてさらに1時間。
平成の大合併でできた幕悦町の麓にある「限界集落」止村村。

そこに、都会から短期のリフレッシュ目的でやってきた企業コンサルタントの多岐川優が主人公。
コンサルタントは、問題解決をして収入を得るシゴトながらも、かなり都会ずれしたイメージのある職業。
それを、「限界集落」に投入するセンスもかなり面白いのである。

以降、物語の紆余曲折はいろいろあれど、私は、村人たちがまったくもって気が付かなかった村の価値を、コンサルタントがひとつひとつ見出し、傾いた企業を再生させてゆくのと同じく。村を活性化させてゆく流れが面白かった。

「問題解決」は、もう徹底的にありえないことも含めて夢を語るところから

そうゆうところから始めないと、どうしてもステロタイプの考え方から抜け出せない。
だけど、どこにでも原石の価値はある。
憂えるよりも、見つけて磨いた方が勝ちなのである。

現在、実質、国を動かしている方々(官僚とか…)は、頭は良くても、それって、処理能力の高い人たち(って偏見か?いや最大公約数的にはそうだと思うよ)。
そんな方々は、こんな風に考えて、シゴトをするのは苦手だろうな…と思う。

社会の曲がり角のような、今の時代には、処理能力より、知恵と勇気のある頭よさが発動されるべきなんだな…と改めてしみじみ。

結局、初めて読んだ時もそんな風な読後感。
つまり、世の中は、まだ遅々として進んでないのかな。

ちなみに、原作の方が、具体的なアイデアも豊富(奇想天外系も含むけどね)。ストーリーを楽しんだのち、それを拾い読みするって読み方もありかも。