七十二候は「芹乃栄」に。そして折よくその季節に人日の節供がやってきます。芹を含む七草で「七草がゆ」を食す日!/1/7=旧11/28・戊子

季節の暦・七十二候は、「小寒」とともに「芹乃栄」に入りました(1月6日~10日)。
「せりすなわちさかう」と読んで、「芹(せり)が、旬を迎える頃」という意味です。

「春には苦味を盛れ」というコトバがあって、冬の間にカラダにため込んだものを春の野草や蔬菜(そさい⇒畑で栽培される野草種)の苦みが排出してくれるから積極的に食べようというコトですが、そのスタートを切るのが暦的には「芹」ってコトですね。

おりしも昨日、二十四節気の「小寒」を迎え、今は、1年でもっとも寒さ厳しい時期「寒の内」に突入したってことになる。
「芹」はそんな厳しい日々に青々と盛を迎える。

この時期の七十二候は、よくぞ人々に希望を与えてくれる暦アイテムを選んだものです。

今日は、五節句の最初・人日の節句、七草粥の日でもあります。

都合の良いことに「七草粥の日」は、毎年「芹乃栄」の時期にやってくる。
もちろん、「芹」も七草のひとつとして堂々粥の具になります。

さあさ、今年も七草を摘みに~♪♪

七草籠

いやこれは見るだけですよ!
毎年、年始に向島百花園を訪ねると飾ってある「七草籠」。
風情があって百花園の中に飾られるものの中でも大好きなひとつ。

今は、年末から花屋さんの店頭に似たものが並びますが、実は、この「七草籠」のアイデアは向島百花園を開いた佐原鞠塢(きくう)によるもので、彼の著作『春の七草考』に添えられた挿絵や当時流行の芝居に登場、江戸人たちになじみになった「なづな籠」などから考案したものといわれています。
実際、ずいぶん古い時代から、正月の飾りとして鞠塢の交友先に届けていたんだそうです。

それは、佐原鞠塢が逝って代替わりしても、さらに新しい時代の明治に入っても、年末年始の佐原家のご挨拶用として続き、やがて宮中にも献上されるようにもなります。
こんな七草籠がお年始なんかに届いたら、ちょっと…いやかなり嬉しいでしょうねぇ。
ああ、うらやましい。
…と、そんなこんなで、それがなんとなく真似されて、花屋の店先などでも売られるようになったということでしょうか。

用意したのは、今年もスーパーの春七草セット

前日ぐらいからスーパーや八百屋の店先には、春七草がセットで並びほくほくと買ってきます。

そして、まずは、ひとつひとつ仔細に眺めて楽んでみる。

まずは、「芹乃栄」の「芹(せり)」

芹

ちなみに、私の故郷では、お正月も雑煮に入れて、薬味的に楽しむもんで、もうさんざんいただいています。

「薺(なずな)」
なずな

ぺんぺん草ですね。
江戸時代には、かなりポピュラーな食材だったらしいのですが、現代では、八百屋&スーパーで売られるのは七草としてだけ。まあ、もう少したったら、あちらの路地、こちらの空き地とかいやというほど出てくるのでわざわざお店で売らずとも…ってことでしょうか?
もちろん、空き地のものを採取していただくことはないんですけどね。

「仏の座(ほとけのざ)」
Hotokenoza

別名「タビラコ」。
「仏の座」というと、春に咲く紫、ヒメオドリコソウに似た花を思い出しますがこれは別種。
こちらは小さな黄色い花が咲きます。
…っていっても、東京ではきちんと見たことなかったかも?

そして「御形(ごぎょう)」
うーん、不作だったんだろうか。やけにちんまりとした…。
御形
右上に置いてみました。よーく見てみてください。
これは、別名「母子草」と呼ばれる案外おなじみの草。
薄緑の葉っぱに、黄色のつぶつぶの花が咲くあれです。江戸時代ぐらいまでは、草餅の材料と言えば、ヨモギではなくこちらだったとか。

「菘(すずな)、蘿蔔(ずずしろ)」は、わかりやすくてよいですね。

みずなすずしろ

菘=蕪、蘿蔔=大根です。
ちなみに、「菘」はもう少し小さいのが良かったなぁ。「御形」とのバランス考えても大きすぎだぁ!

「繁縷(はこべら)」(中央)を。
hakobera

こうして確認しつつ並べたからなに?って感じなんですが、どうも毎年の習慣になっている。
見慣れた大根とか蕪とかの野菜と、春になればその辺にやたら出て花を咲かせる雑草たちですが、この冬場に新鮮な感じしませんか?
可愛いしね。

…が、本当は「せりなずな、 ごぎょうはこべらほとけのざ、 すずなすずしろ、 これぞ春の七草」と韻を踏んで覚えたとおりに写真を撮ろうと思ってたんですが、途中で順番間違えたのは残念です(笑)。

古式ゆかしい七草粥の作法は呪文(?)を唱える??

それは、こう。

「七草なずな、唐土(とうど)の鳥が日本の土地に渡らぬ先に、七草なずな」
呪文っていうか、まあ、囃子歌です。

このように、はやし歌を歌いながら七草をトントントントン、まな板&包丁で小気味よく音だして切り刻みます。
いやそんな生易しい音でもなかったみたい?

このブログを書くにあたっての参考書のひとつ『日本年中行事辞典 (角川小辞典 16)』(鈴木棠三 著)を紐解けば、なかなかすごい七草粥の作法です。

まずは、6日の夜。
まな板の上に火箸、すりこ木、卸金、杓子、割薪、菜箸、火吹竹という七つ道具を並べます。
これで何をするかといえば、うまく調子をとってまな板をたたいて音を出す。しかも七回も?
向かう方角は、その年の恵方。
というのを相当まじめにやっていたらしい、もちろん幕府の行事から庶民宅まで津々浦々って感じだったみたいです。

なんか、やかましそうな行事だったみたいですね。実は、その音で徹底的に邪気を祓うのだそうです。

ってコトでできました七草粥!

七草粥

音は心の中で想像。「七草なずな、唐土の..」は、小声で唱えました。
しかも、御粥はレトルトの卵粥(笑)。
だって七草とお粥だけだとどうも物足りないもんで。
そして、余った七草をトッピングまでしてしまいました。

平成の私は、今年も、かなり簡易バージョンの七草粥をいただきまーす。

あっ!最後に「人日の節句」のことを!

ルーツは、古代中国の五行思想。

正月七日は、元旦の鶏の日から、戌、猪、羊、牛、馬と数え、人間が作り出された日=人日の日。
だから7日は「人の始まりの日」ではありますが、かえってだからこそ災いも降りかかりやすい
…のだそうです。

それを祓う目的で七草粥を作り食すという考えとか。

実は、私、忙しすぎて、七草粥を割愛した年に、ややシリアスな病を得ることになった。
で、それ以降、この謂れを疑うことなく、必ず七草をいただくことに。

というか、七草粥も食べられないほど…つまり、年中行事を楽しむ余裕がなくなるほど多忙を極めれば、それはカラダかココロに良くない影響を与えるってコトなんだと思うんですけどね。

◆今日は、2016年1月7日/旧暦11月28日/霜月戊子の日
◆日の出6時51分 日の入16時43分/月の出3時50分 月の入14時27分