食べることは生きること、料理をするというのは自分の生き方を模索すること…かな?

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料理できない…というよりしないヒトってかっこ悪い

昔は、何かの折にささっと料理できちゃうヒトってかっこいいと思っていたんですが、最近はちょっと違って、こう思っています。

そして、その理由を淡々と深堀りしてゆくと、自らの手で料理をしないというのは、自分らしく生きる手段を放棄していることそのものだから…というところに行き着きます。

怠けようと思えば、いつでもそこにある便利なコンビニ、ファストフード、お惣菜屋やお弁当屋、ファミレスを含めた外食店、etc。
「食が乱れているなぁ」と、後ろめたく思いつつも、ここに流されてゆく日々は、やがて、食を整える手段を奪ってゆくでしょう。

たとえば、時々、TVなどで、職を失うなどして、貧しい暮らしを強いられたヒトが取材され、その生活のことが報道されたりするときに「お金がないので1日2食、コンビニのお弁当を半分ずつ食べています」みたいなことを目にします。

が、コレって???

ビジネスのベールを通ってきたものは、一見安く見えるコンビニ弁当でも、けっきょく割高。

1日2食しか食べられないほどお金に窮している方が、なぜそこに手を出すのだろうか?
理由は簡単、便利な日々によって、食を整える手段を奪われてきたから。
となれば、コレはもう、貧乏というよりも、便利なものに支配された奴隷の日々にほかなりません。

たとえば、自分で米をといて飯を炊き、煮干と野菜を茹でて味噌汁を作る。これだけでも、日常的に連続させれば、出来合いの弁当1個分よりずっと安価なうえに安心で豊かでもあります。

そうゆう日々は、過剰な便利とか必要以上にお金のかかる暮らしから、自分を自由にしてくれるのみならず、不測の事態に陥ってもけして貧しくならないことを約束してもくれるはずです。

うーん、ではどうしたらそんな自由を手にすることができるんでしょうか?

長尾智子の料理1, 2, 3は、そこに応えてくれる1冊でもあります

この本は、料理研究家の著作ではありますが、しちめんどくさいレシピは皆無です。楽しいエッセイを紐解くように読んで、まず感じるのは、料理することへのワクワク感。
なんの変哲もない普通に売られている野菜を凝ったことを何もせず普通に料理する…たとえば、茹でて塩と胡椒を振って…とか。
それを、普通に毎日食べる。

本書に書かれている基本はそんなことです。

そこに「これなら簡単にできそう!」と思える、しかし、この料理研究家でなければ絶対思いつかないような、自由なアイデアが登場。
読者もちょっと真似をして…ぜったい真似をしたくなります。だって、すぐにできそうなことばかりなんですもの。
そして、「ふーむなるほど簡単じゃん」→「料理って楽しい」などとココロの変遷があるかもしれません。
そんな風に思っているうち、自分なりの「料理するとは、こんなこと」という理解が突然のように振ってきて…。

それこそが、「自分の食のものさし」。

これを得るころには、何かの奴隷状態になんて絶対ならない、しなやかで自由な自分に生まれ変わっているはずです。

◆目次
はじめに 焼き網とすり鉢
1.料理を始めよう
鍋に贅沢する/お酒の不思議/野菜の行水/基本職の時代/料理を始めたばかりの君へ/キャベツ、玉ねぎ、にんじん、長ねぎ/困った時の卵頼み/小一時間のこと/私の料理はぜんぶ酸っぱい/料理本とあなた/お土産の行方/玉ねぎを刻むなら/かぼちゃにレモン/自分のための料理/手は口ほどに/びんに詰め 薬味から前菜まで/道具と作る甘酒/my cup of tea/短パンのルール/料理する気持ち

2.料理を楽しもう
ああおもしろい薄焼きパン/暮らしの大きさ/私のお菓子は全部茶色い/食卓にオリーブ油/妄想の小部屋/いつもの塩頼み/素晴らしき味噌の世界/びんに詰めるもの/切るたたき炙るたたき/アアルトの界隈/料理の告白/セロリの葉っぱで学ぶこと/小振りな玉ねぎ、細身のにんじん/じゃがいもでいろいろ/マサラ贔屓/まな板は食卓の始まり/バスク経由インド行き/ジャムと女/カリフラワーLOVE

3.食べ方と暮らし方
夢の人/一生もの/夏休みのサンドイッチ/白に民藝を少し/お土産は爆弾/あたたかくてちょっと野暮ったい/スイートシスターズ/にんにくの仕事、しょうがの仕事/見知らぬ国の味わい/酒の肴10連発/ポムと林檎/青い辛みを食べきる方法/お鍋ひとつの暮らし/粉ものの楽しみ/どこまでも食べてみる/ナチュラルの定義/小さな白いデザート/思い出すひと皿/それぞれのスープ

◆読み方のヒント
ってのはないんですが、「おなかがすいたから、これから食べ物を買いにいこうか」的なときに、好きなところを2・3箇所読む。
…というのがいいんじゃあないかと思います。
そのまま、コンビニやファストフード店を通りすぎ、商店街の八百屋に肉や魚やとかスーパーマーケットにいきたくなるって思いますよ。

一方、寝しなにベットで読むのはちょっとまずいかもしれません。
そのままむくむくおきだして、ちょっとジャガイモを茹でてしまう…という前科もちは、何を隠そうこれを書いている私です(笑)。

<この記事は、2012年6月~2014年1月まで運営していた本のレビューブログ「街にも出るけど、書物も捨てない」から引っ越してきたものです>