七十二候では、今日から「霞始めて靆く」の日々に入りました。
奈良の都・平城京跡の東側一帯は、古代史好き垂涎の古代天皇陵が点在する地域ですが、かつてより、その山並みは佐保山と呼ばれ、うら若き女のカミサマが宿っていると考えられきました。
その名も佐保姫サマ。
東の地にいるのは、春のカミサマであって、彼女は、いつも白く柔らかな衣を纏い春を運んでくると考えられていた。
だから、佐保姫は、和歌や俳句の世界では春の季語。
少しずつ春めいてきて、朝方、山並みに白く霞がかかるようになると、人々は、その様子を眺めて、「ああ、あれは佐保姫サマの衣の裾だ、春が来た」と。
そんな、春の兆しに、今も昔も、人々は、ささやかな喜びを感じてもいるのです。
「霞」の話ひとつにこんな伝説、ああ、ニッポンの春っていいなと思う逸話です。
ちなみに、写真は、手すきの和紙。
佐保姫の衣の裾はかくやと思い、今日の1枚に使ってみましたがどうでしょう。
彼女は、染めものや機織を司るカミサマでもあって、ほんとは、柔らかな布とゆきたいところですが…。
さて、その「霞」。
暖かくなって、細かな水滴が空中に浮かぶことで、視界がぼんやりする気象現象を言うのですが、それは「霧」も同じこと。
気象学的には、「霞」も「霧」も、ついでに「靄(もや)」も同じ自然現象。
視界が1km以上の場合が「靄(もや)」で、1km未満のときに「霞」や「霧」という違いがぜいぜいのようです。
そんな理系豆知識もなんのその。
やはり「霞たなびく」のは春。
「霧が立つ」のは秋。
…と細かくわけて楽しむのが、やはりステキな暮らし方のような気がします。
◆今日は、2014年2月24日/旧暦1月25日/睦月丙寅の日