夏目漱石『こころ』を舞台に、現代と過去を行き来するSFファンタジーですよ。

かなり久しぶりに、小路幸也発掘本(=好きな作家の本なのに未読だった本)読書です。

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『話虫干』 小路 幸也(著) 筑摩書房

読む度に同じことを思うのだけど、この作家さん、ホントにひとりなんだろうか?
っていうか、引き出しが多過ぎ。

たとえば、一番人気の 『東京バンドワゴン』シリーズを読んだのち、この本を手に取ったなら、えっ!これって同じ作家?って思うかもしれない。

そして、そのテイスト違いがめっぽう面白かったりするから驚きなのである。

本書はSF…サイエンスフィクションテイストなのである。

こんな表紙をしているもんだから、てっきり、明治大正のおはなしかしら?と思うでしょ。

実際、舞台は、夏目漱石やら小泉八雲やらが、東京帝国大学の講師をしていた明治30年代ごろ、しかし、そこは現実の世界ではなくて、漱石作『こころ』の物語の中であった。

主人公の青年、糸井馨は、現代に生きる図書館員。

彼の勤める馬場横町市立図書館には、多くの初版本が保存されていて、なぜか、その本の内容がいつのまにか書き換わってしまうらしい。
犯人は、謎の「話虫」。
図書館員のシゴトは、その物語の世界に過ごし、「話虫」を見つけ、それを虫干して元の物語に戻すこと
…なんだとか。

ねっ、これは立派なサイエンスフィクションでしょ。
っていっても、どうやって、物語の中に入り込むかとかをはじめ、サイエンスの部分が抜けれるけどね。
うーんファンタジーか?
まあ、面白いからどっちでもいいか。

とにかく、その任務を帯びて、漱石の『こころ』の中に入った、青年糸井馨。

すると、本来の登場人物以外に、作者の夏目漱石やら、Kの異母妹・京子(架空の存在)、小泉八雲とその娘、エリーズ(これも架空)加えて、シャーロック・ホームズまで現れて、あらら、この人たち(架空以外)は、みんな同じ時期を生きたヒトだったんだぁ!
と思うのに忙しい。

そして、みつけた「話虫」の正体も、同時代の有名作家。

うーん、小路ファン以外にも、明治大正文学好きにもきっと好まれる作品であること必至。

…と、これ以上書くと、ネタバレになりまくちゃうので、この辺でやめておきます。

読後は、漱石作品など紐解いてみたくなることでしょうね。