うすいピンクの「昼顔」が群をなして咲き始めました。
実はこの名前に「顔」がつく花、「朝顔」、「昼顔」、「夕顔」…そして、柳宋民センセの『雑草ノオト 1』によれば「夜顔」まであるらしいです。
まあびっくり。
ちなみに、朝、昼、夜顔は、同じヒルガオ科の植物で、みんなトランペットの先っちょみたいなカタチで咲いて、大きな差は名前からもわかるように花が咲く時間帯。
けれど、夕顔だけは仲間違いでウリ科の植物。
花は白いが、かぼちゃや瓜の花に似ていて、その実は、かんぴょうの原料なんだそうです。
それでも、全部、暑い夏の盛りに咲くんだそうで一緒に並んで植えてあったらさぞかし面白いんじゃないかと…もうそれだけで妄想しきり。
でもそう思いませんか?
先行して初夏から咲く昼顔は、唯一、園芸種でない気軽さ
その気軽さゆえ、と言わんばかりに「昼顔」は、すでに街中のフェンスや背高の樹や、他の草花にも絡まってぐんぐん伸びながら咲く奔放ぶりです。
「朝顔」はまだ花屋に出始めで、ベランダのプランターなんて芽が出てやっと最初の蔓が出たかでないかの頃。
「夜顔」にいたっては、まだまだその存在感もありません。
…だというのに、もう「昼顔」のみは、あちらこちらにピンクのラッパを咲かせています。
思えば、朝顔も夜顔も品種改良はなはだしく、朝顔などは伝統的な朝顔市まであって、堂々園芸種の大者の風格だというのに、昼顔のみはなぜ雑草のままほったらかしなんでしょうか?
しつこいようですが、朝、昼、夜と並べて順次咲かせたら楽しいだろうなと思いませんか?
やっぱり思うなぁ…。
先の『柳宗民の雑草ノオト 1』を再度紐解いてみれば…。
なんと!
宋民センセもおんなじ思考をしたらしく、「アサガオが多彩に品種改良されたように、ヒルガオを品種改良して、いろいろの花色のものができたら面白いだろうと考えたことがあった」って記述を発見しました。
そうですよね、そうですとも。
しかし、昼顔は、種子をつけず、白い地下茎で増える植物ゆえに品種改良は難しいんだそうです。
種ができなければ品種改良というのはまずできないし、それでは自然交配はどうかといえば、野生のものを観察しても変異も極端に少なくて、園芸品種として人が操るのは難しいのだとか。
うーん。
昼顔は、ひとには操れない野生の中の野生の花。
この花は、こんなカワイイ姿をしながら、つまり、ひとの手には負えない自由な花。
たとえば、その地下茎たるや、ことのほか丈夫で、相当小さく切れてもちゃんと芽をだすんだそうです。
宅地造成やら埋め立てやらで他の土地から昼顔の地下茎交じりの土を運べば…。
いつしか、あらら!
昼顔が芽を出し蔓を出し、その辺の何かにやたらと絡まり花を咲かす…というのは大いにありえる。
ある日、新興住宅地のある一角に、なぜか昼顔がフェンスに絡まっているお宅が何件も続く…ってことだってあるかもしれない。
…などと、しょうこりもなく昼顔の知られざる旅を勝手に想像…いや妄想。
と思ったら、現実にみつけちゃいました!
ここは、先日、住民が引っ越してきたばかりの家ですよ!もうこんな我が物顔!!
加えて、朝から咲いて、夕方まで元気に花開き。
花の頃もそうとう長く、気になりだすと存在感は大きい。
薄いピンクの可憐な顔するくせに、他者に決して操られず安易に影響されず。
つまり、誇らしき自由なる雑草の中の雑草なのだなぁ…。
と、やがて、眺める人間のまなざしは、尊敬まじりになってゆきます。
◆今日は、2014年6月12日/旧暦5月15日/皐月甲寅の日