主な登場人物がみな丑年だから『cow house』。そこで繰り広がるホントにあったらいいな的物語

大好きな、小路幸也の発掘本(=しつこいですが、好きな作家の本なのに未読だった本)。

今度は、我が書棚から発掘しました。
COW HOUSE―カウハウス
…しかも途中まで読んで未読だったみたい。なんでだろ?

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主人公は、シゴトで大失態をやらかして左遷された25歳の「僕」=畔木(くろき)。

その飛ばされた先が、鎌倉にある会社所有の4000平米の敷地を誇る大豪邸…の住み込み管理人というポストであった。

そこに着任早々…というか引っ越して早々、あれよあれよと、いろんなヒトが関わってきて、話は展開。
その登場人物の誰もが、いいヒトばかりだというのに、やはり悲喜こもごもな話が繰り広がる独特なテイストは、この作家の代表作『東京バンドワゴン』シリーズに似ているかも。

ちなみに、タイトルの『COW HOUSE』は、丑年生まれが偶然集まったというコトから命名。

それ以外の理由はぜんぜん見当たらないんですが、小路幸也さんが丑年だからですかね?
そして、重要な脇役、畔木の上司である坂城“部長”(作家と同世代の丑年生まれ)に自分を投影させているのかな?
…だろうね。

この“部長”がまた、シゴトはできるし、部下思いだし、もう出来過ぎたヒトなんです(笑)。

そして、干支でつないだ、違う世代がうまく関わってゆく話を描きたかったのかも?

ちなみに、表紙に配された図は、豪邸『COW HOUSE』の間取り。

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この間取りを逐一眺めながら、物語を読めば、なんとなく、自分もそこにいて、一緒に悩んだり、ご飯をたべたり、おしゃべりしたりしているみたいな気分。
こうゆうサービスも、この作家らしい気がして好きです。

さて、物語は、違う世代の丑年どうしが集まって、いつしか、子どもたちの隠された才能を引き出し育てるプロジェクトへ。
冒頭、多くの伏線が貼られながらも、そのほとんどは放置されたまま、プロジェクトがスタートを遂げ、主人公の左遷が解けるまで話に終始して、いったんのエンディング。

ああ、ちょっと消化不良気味ですが、そんなことを言ったら、この話も『東京バンドワゴン』シリーズのように、長々と続けなければなりません。

…でも、せめてパート2とか読みたいなぁ、とは思うのよねぇ。

↓文庫も出ていますが、表紙装幀に豪邸の間取りがなくて残念!この図が重要と思うのであえて単行本をススメます。

↓文庫はこちら