七十二候の「桐始結花」…は見かけないので、山保呂志(やまほろし)を愛でてみます /旧6/28・丙申

二十四節気の「大暑」の日になれば、七十二候は「桐始結花」。

読みは、「きり はじめて はなをむすぶ」で、今ごろ花が咲くのかなぁ…とか思っていたら、実が生り始めるころという意味なんだそうです。

…とか、ピント外れの解釈をしてしまうのは、そもそも桐の花を見たことがないから。

昔は、女の子が産まれると庭に桐の木を植えて、嫁入り道具に桐の箪笥に仕立てて持たせたといわれるほど身近な植物だったからこその七十二候入りなのでしょうが、今どきは同世代の友人にもそんなヒトはおりません。

とにかく身近に桐の樹など一本もない。

こうゆう時は、いつもの、私設七十二候のでっち上げ。
せめて紫の花で対抗しようじゃあないの…とさがしてみました。

数日前から、山保呂志(やまほろし)の花がほろほろ涼しげに咲くのが目立ってきました。

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花が茄子の花に似ている蔓植物だから、別名「蔓花茄子(つるはななす)」…って、それってそのまんまじゃないのよと、突っ込みをいれたくなりますが、実際、ナス科ナス属。
あのなすびの茄子もナス科ナス属なんで、もう親戚みたいなものです。

こんな花も、知らない?
そうかもしれませんが、ちょっと、気を付けてあたりを見てみてください。
桐とは違って、けっこう、密かにあちこちに繁殖しまくってますから…。

やまほろしは、見かけは楚々と、しかし、かなり丈夫なあなどれないヤツです。

つぼみから咲きはじめは紫の花で、なんとなくナスの花のミニチュアみたい。

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そして、しばらくすると白く涼しげに変化し、より涼しく楚々としたたたずまいになってゆきます。

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しかし、このやまほろしは、そうとみせかけ、いたって丈夫。

暑さにも乾燥にも強いのはもちろんのこと、寒さにまでぜんぜんオッケー。
これといった虫もよってこないそうです。

あるとき、「だから、初心者むきですよ」などと花屋さんでススメられ、アパートのネコの額ほどの庭に植えてみました。

そしたら、ほんとにどんどん元気に伸びました。

蔓植物なのに水揚げも簡単なので切花としてももちがよく、これ幸いとどさっと切って部屋に飾るも、庭では蔓を這わせてどんどんどんどん育っていって供給過剰。

実は、やまほろしったら、ほかの植物を駆逐する勢いにまで育ちます。

秋になると、赤い実をつけるのもかわいいのですが、ぼんやり楽しく眺めてもいられない。

その先の季節の古枝の剪定が、剪定というよりなんだか雑草駆除に感覚が近く、もうほとんど根こそぎにしたかと思ってもまた翌年になるとあっという間に育ってしまう、すごい成長力なのです。

きっと地面の下では根っこが猛烈にはびこっているんだろうなぁ
…とやや暗澹たる気分になったりもしつつ、ほかの植木や草花に迷惑なので、せっせせっせと世話を焼きます…というか振り回されるといったほうが近いでしょうか。

やがて、そのアパートからは、引っ越しますが、やまほろしは置いたまま。

実はいまでも庭には我が物顔でこのやまほろしが育ち、花咲かせている…かもしれない。

とすれば、あの世話はそういえばだれがやってくれているのでしょうか?
とんでもないものを残してきたみたいで、にわかにココロが痛みます。

…って、このブログを書くまですっかり忘れていたんですが(笑)。

とにかくこの「やかほろし」は、その清楚さに惹かれ、ふらふらっとつきあいはじめるにも、かなり覚悟が必要な花なのです。

今の家のご近所にもおなじ憂き目にあった庭の主がいて…

毎年今頃、やまほろしは、その方の庭のフェンスいっぱいにはびこり
…いや失礼、成長をとげ紫の花、白い花と咲かせてゆきます。

今年ももう何回もその前をとおり、あったこともない庭の主の苦労をしのびつつも、その清楚なたたずまいだけ堪能します。

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あたたかい年なら、このまま10月まで平気で花を咲かせ続け、なかなか勢いが減らない花に、もういい加減にしたらどうなの…などとも思う。

人間のことなんか知ったこっちゃないでしょうが、その元気さがもう少し控えめだったらそのルックスのイメージどおりなのになぁ…と、思わせる花。

なんだか、そういえば、やまほろしに似た友人がいたような…毎年そんなことを思いながら眺めています。

◆今日は、2014年7月24日/旧暦6月28日/水無月丙申の日