街を歩くと、そろそろ百日紅(さるすべり)の花が目立つ季節になりました。
実は、向日葵よりも朝顔よりも、ああ夏なんだなぁと思わせる花。
盛夏は、案外華やかな花が少なく、華やぎ担当は私ですとばかりに百日紅だけがピンクや真紅。
名前に「紅」を持つというのに、ときどき白の花まで咲かせて、少しびっくり!
もちろん、朝顔も向日葵だって、夏の華やぎ担当なんですが、どちらも基本は育て主の庭先に咲く花。
向日葵などはあまり街中ではみかけないものだし、とにかくどちらも大らかに街路を飾る花ではありません。
一方、百日紅のほうは、うまく育てば高木になるということもあって、どこの庭先からも盛大にフルフルフリルのような花をつけた枝先を出し存在感を強調している。病気になりにくい丈夫な種であることも手伝って、街路や公園にもずいぶんあちこち植えられています。
あっ!百日紅だ!と気づくのも、花が咲き誇った今頃のことです。
ことさら暑い時期に咲き始めるというのに、強い陽射しもなんのその、何食わぬ顔して咲く花はなんだかとっても頼もしく見え、日除けに深くかぶった帽子をあみだにずらし、しばし鑑賞してみたりします。
…と、よくよく見れば、その花びらが、でこぼことシボの入った木綿生地にも似ていませんか?
「サッカー」と呼ばれる、夏のパジャマだとか半そでシャツだとかに使うあの生地。
ピンとこなかったら、通りすがりにジーっと詳しく眺めてみてください。
なんど水をくぐらせてもくたびれない、アイロンいらずのあの生地にそっくりです。
ああ、夏らしいはずです…って、少し独断的だったでしょうか?
まあいいか。
もともとは、中国原産、江戸時代に日本にやってきた
しかし、珍しいことに、ほかの植物のように植木職人たちの品種改良の波にのまれることがなく、すくすくのんびりとここまできた、やや放任主義で育てられた植物。
中国では、なんと発音するかはわかりませんが、そのまま「ヒャクジツコウ」と読んだほうがたぶんオリジナルの名前に近い。
それが、なんだって日本語読みが「さるすべり」なんでしょうか。
この木は、幹のが大きくなる過程で、樹皮が順繰りに剥がれ落ち、現れた新しい樹皮はすべすべしたさわり心地。あんまりそのすべすべがいい感じなので、すべりすぎて猿だってすべるだろうってことなんですって。
いや、さすがに猿は登るでしょうね。
でも、漢字は中国から渡ってきたままを使い、こっそり読みだけそんな暢気な名をつけたセンス。
ちょっといい感じだなとも思うのですがいかがでしょうか?
こちらは、毎夏、百日紅が咲くころ唯一存在感と美しさを増す母の家の庭。
…って失礼かしら(笑)。
でもね、百日紅のピンクが、好き放題に草花を植えてややバランスを欠いた庭をきりっと治めているような気が毎年。
そして、その名のとおり、散っては咲いて、ほんとに100日ぐらいはこの感じが続いているらしいです。
百日紅の足元を飾るのは、同じころ咲く鳳仙花(ほうせんか)。
その花も、ああそういえば今頃の花。
やっぱり、ほらね夏咲く花って、普通はやや地味でしょう。
「ああ今年もさるすべりが咲いたねぇ」と、庭の主はいいます。
実は、その花の名が「百日紅」だと知ったのは、ずっとずっと大人になってから。
こんな可憐な花が、そんなクイズみたいな人をくった名前を持っているっていうのも、やっぱりかなり面白いなと、毎年そっと思ってみます。
◆今日は、2014年8月6日/旧暦7月11日/文月己酉の日