24日はお地蔵様のご縁日。そして旧盆ちかい8月24日は「地蔵盆」/旧7/29・丁卯

毎月24日は、お地蔵様の縁日。
そして、旧暦のお盆に近い8月24日は「地蔵盆」と呼ばれ、特別な行事が執り行われます。

…といっても、主に近畿地方で行われる行事でなぜか関東以北ではなじみが薄く、実はいままでその存在も知りませんでした。

日めくりを眺めていたら、見知らぬ「地蔵盆」という言葉があって、調べれば面白そうなので今日のテーマにさせていただいた次第です。

まずは、江戸風俗の参考書『守貞謾稿』を紐解いてみる。

『守貞謾稿』(喜田川守貞著 近世風俗志(守貞謾稿)〈4〉岩波文庫)には、<守貞七月二十四日 大阪諸所地蔵祭>と、記載がありました(p249)。

この書は、30歳まで大阪で暮らした喜田川守貞が、のちに商売のため江戸に移住、砂糖商を営みながら、江戸時代における京・大阪・江戸の風俗の違いを観察しまとめたもので、その比較が示唆に富んでおもしろい書です。

この、地蔵祭とは日付の7月24日(もちろん旧暦)からみても「地蔵盆」のこと。

そして、そこには、<大阪市中、諸所ののき下等に壇を作り、棚を架し、地蔵を祭る者ははなはだ多し。江戸の稲荷に比すべし。今日、必ず皆これを祭る。>と解説されています。

ちょっと頭の中で想像しただけでも、江戸時代の上方では、街をあげての行事であることがわかりますね。

<江戸の稲荷に比すべし>というのは、2月の最初の午の日はお稲荷さんのお祭り「初午祭」と似ているという意味。
特に江戸では稲荷信仰が盛んだったために、「初午祭」の賑わいといったら尋常じゃなかったそうです。

つまり、西の「地蔵盆」に東の「初午祭」…って言っていいかしら?

といっても、江戸の初午祭の賑わいは、今は昔の話となってしまっていますが…。

地蔵盆には、お地蔵様のあたりも華やかになるらしい

さて、地蔵盆が近づけば、まず、お地蔵様とそのいらっしゃるあたりをことさら丁寧に清め、赤い前掛けとか被り物なども新調し、供物をそなえ灯明などを飾るそうです。

(そういえば、旧盆の法要に伺うと、寺のお地蔵様もいつも新しい前掛けと被り物になっていますね。地蔵盆の行事はないけれど…)

安洞院地蔵尊

特筆すべきは、地蔵盆の間の子供たちのすごし方。

夏休みも残り少ないというのに祭期の間は、日がな一日遊んでいてもしかられることがない…とか?
場所によっては鐘を鳴らしながら歌を歌い、町を練り歩き、家々からお菓子をもらったりするのだそうです。

もちろん今もその風習は健在で、コンビニやスーパーのいつものお菓子が地域限定、地蔵盆仕様で売られるようです。

お地蔵様のことを復習しました。

関東地方では、地蔵盆の行事は皆無ですが、せっかくですので、お地蔵様ってなにものなのか?
…をきちんと調べてみようかと思い立ちます。

お地蔵様の正式名は「地蔵菩薩」

菩薩とは、悟りをひらいた存在「如来」になることをめざす修行者のことで、仏教界では観音菩薩などと同じ地位にいらっしゃる方です。

しかし、他の菩薩様たちがお寺の中に安置されるのと違って、路傍や辻などに野ざらしで立っておられたり、商店街や町会で管理する簡単な地蔵堂の中など、私たちの生活の場にいらっしゃることが多いものです。

実際、仏教界のストーリーでは、地蔵菩薩は、お釈迦様が入滅し、56億7千万年後に弥勒菩薩が仏となってこの世の救済に現れるまで、人間界はもちろん、地獄、飢餓、修羅、畜生、天の六つの世界=六道すべてに足を運び、人々を救済する役割を持ちます。

そして、すべての人々を救うまで、自らは決して成仏はしないと誓った存在でもあるそうです。

だからなのか、この世でも、延命、厄除け、刺抜き、子育てなどの名を冠につけ人間の苦労を肩代わりしてくださるようでもあり。

たとえば、塩を盛られるお地蔵様とか(こちらは、閻魔様を祀るお寺にいつもいらっしゃる塩地蔵尊。)

塩地蔵尊

縛られる、たわしでごしごしこすられるなど、実際にそのカラダを張った働きもされ、非常に苦労の多いイメージをまとっています。

地蔵盆は、そんな人間にとって身近でありがたい路傍のお地蔵様が主役の行事。

さて、西の行事に戻って、想像してみまししょうか。

日が暮れると、子供たちが集まって大人とともに鐘を鳴らして歌いながら、町内のお地蔵様を巡り歩く六地蔵巡りを行います。

六地蔵とは、先に書いた、お地蔵様が人々を救うためにめぐる六道=天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道をめぐるお地蔵様のこと。
それなら、全国津々浦々、多くのお寺などにもいらっしゃいます。

たとえば、このようにまとまっていらっしゃるのは、福島の母の家の近くにある名物六地蔵。

福島の六地蔵

(書かれたコトバは毎月変わるのですが、この「あまちゃん」バージョンが気に入りで、いつか、このブログにのせるタイミングを狙っておりました。もちろん、昨年のお盆に撮ったモノ。あーボケボケだぁあ!・笑)

地蔵盆の六地蔵めぐりは、別々にいらっしゃる六つのお地蔵様を巡るのでしょうが、この六道は、人間が輪廻する道でもあって、そこをお地蔵様も一緒にめぐって人々を救ってくださる。
今日の六地蔵めぐりは、そのお礼の意味もあり、無病息災、延命長寿のご利益があるそうです。

もちろん、こどもたちの目当ては、お参りのあとにいただけるお菓子かもしれませんが…。

地蔵盆の習慣のない関東地方ですが、ここまで人に寄り添い救済にいそしむお地蔵様には、やはりきちんと感謝したいと、いまさらながらに思えてきました。
今日のこの日は、関東のひとり地蔵盆。
…だとしても、いつものお地蔵様にはきちんとお礼にうかがいましょうか。

いつも、いろいろいろいろお願いしまくっている我が街のお地蔵様は、よみせ通りという場所にいらっしゃる延命地蔵尊。

多くのヒトに大切にされ、とうとう、通りのキャラクターとしても活躍しているすごすぎるお地蔵様です。

よみせ通りの延命地蔵尊

さあて、お参りお参り。

オトナなので、もちろん、お菓子のご褒美は不要です(笑)。

◆今日は、2014年8月24日/旧暦7月29日/文月丁卯の日