今日は、五節句の締めくくり、重陽の節句です/旧暦8/16・癸未

今日、9月9日は、五節句の締めくくり「重陽の節句」、菊のチカラで邪気を祓い健やかな長寿を祈る日です。

菊

と、とても大切な年中行事に思えますが、人日=七草の節句、上巳=桃の節句、端午の節句、七夕の節句…と他の節句に比べて、現代ではやや存在感が薄くなりがち。

うーむ。

新暦時代に入ってからこっち、この日の重要アイテム「菊」が、9月上旬では、まだ盛りを迎えないのがその理由でしょうか?

五節句すべてが、古く中国から伝来した風習。

古代中国の陰陽思想では、世のすべてのものを陰と陽の二つに分けて、そのバランスで森羅万象の秩序が保たれていると考えました。
もちろん数字もその例外ではありません。

奇数は陽
偶数は陰

そして、おなじ奇数の重なる日は、「陽」のチカラが強すぎるため不吉とされた。

そもそも五節句とは、その邪気を祓うための行事でした。

中でも、陽数の極にある9が重なるならば、その不吉度も最大。
なので、「重い陽」=「重陽」となって、ホントは、「重陽の節句」ってのは、もっとも強い邪気を祓う日のはずでは?
こんな存在感のないことでよいのでしょうかねぇ…。

五節句が伝来したての平安時代の宮中では、行事は盛りだくさんだった

大陸から渡ってくるものは、憧れのニューウェイブであった、平安時代。

「重陽の節会(ちょうようのせちえ)」は、五節句の中でももっとも重要なものとして、さまざまな行事が執り行われていたようです。

その一端を、『日本年中行事辞典 (角川小辞典 16)』(鈴木棠三 角川書店)から探してみました。

日本年中行事辞典
(中古ですが、唯一ネット書店で売られているAmazonにも写真がないので、ちょっとココに。この辞典は、日本中の主だった祭りや年中行事がたくさん書かれてあって便利ですよ)

<天皇はこの日紫宸殿または神泉苑に臨み、群臣に宴を賜り詩歌文章を課された>
<御帳の左右に茱萸(しゅゆ)の袋をかけ、御前には菊瓶を置くなど、中国直輸入の行事らしい要素が濃厚であった>
などとあります。

御殿や庭園などで多くの家臣とともに集まり宴をはって、詩を詠んだり菊花酒を飲んだりと、ずいぶん盛大におこなれていたようです。

江戸時代には、五節句じだいが、制度化。武家の祝日になる。

『日本年中行事辞典』をさらに読み進めれば、重陽の節句の項の記述は、江戸時代まで続きます。

この時代には、重陽の節句は、幕府の重要な行事で、幕府では<諸大名以下登城し祝詞を言上>するのがきまりだった。
もちろん、この大名たちから幕府へさまざまな献上品が菊花の枝を添えられ納められたようです。

大奥のほうでも<御台所は菊花の花びらを添えた祝い酒をくみ、女中一同へ下され物があった>
などとあって、やはり、細かな作法が決められ、それにのっとり重要な行事として扱われていたようです。

幕府の重要行事となれば、庶民もそれなりに重要視するのが江戸の文化。

やはり浅草寺観音堂にて菊供養が行われるなどさまざまな行事が行われたみたいです。
そして、なんだかんだと明治時代まではさまざまな行事が行われていたらしいです。

新暦時代の現代ならば、菊の行事は10月のもの

さて、それでは現代は「重陽の節句」が、すっかり廃れたのかといえば、NO!

他の節句は、無理やり新暦に併せているのに、重陽の節句の名残と思えるものはすべてもっと秋が深まる頃の行事となっています

たとえば…。
・杉並区の大宮八幡宮→こちらはちゃんと9月9日から9月16日まで平安時代の「重陽の節句」の宮中行事「菊被綿」が再現されます。
浅草寺の菊供養→江戸時代からつづくこの行事は、ほんらいの菊の季節である10月に。
・菊人形の展示→東京ならば湯島天神をはじめとして、日本各地でも、10月以降にけっこう盛大におこなわれるのは周知の事実。

なんだか、五節句の中で、ひとつ重陽の節句のみが、旧暦→新暦への変化の波をもろにかぶってしまったみたいですね。

それでも、人日、上巳、端午、七夕とつないできた節句行事ですから、自宅でもささやかに重陽の節句を祝いましょう。

って、菊を飾るだけなんですが(笑)。

菊の良いところは、ホトケサマ用にどこでも売られていて、しかも、安いのでたくさん飾れるってことでしょうか?

仏花の菊も、工夫次第でかなり可愛く飾れます。

買ってきたら、まずは、花の高さを揃えて茎を切り、葉っぱも外して飾るとこんな風。
菊の花

仏壇の花ふうにはならずに済んで、意外にカワイイ花です。
たっぷり飾って、邪気をせっせと祓っていただきましょう(笑)。

揃えて切り落とした花や蕾も別に飾る。

菊の花2

こっちのほうが、個人的には好みかな。

下戸ですので、菊酒はいただきませんが、さらに外した菊の花と葉をよーく洗って、湯船に浮かべ「菊湯」とか。
枕にしのばせ「菊枕」とか。

ついでに、そんな風に楽しんでみようかなぁ。

七草、桃、菖蒲、笹…そして菊。

こうして、5つそろえてみれば、五節句に欠かせないものは、すべてその時期盛りの植物チカラなんですね。
いまさらながらに気づきました。

◆今日は、2014年9月9日/旧暦8月16日/葉月癸未の日/今日は満月!
◆日の出5時19分 日の入17時58分/月の出17時56分 月の入5時09分