秋口から花屋で普通に売っている秋の花も、地面で咲きはじめるにはちょっと時差があります。
ということで、ああ、この花も紅くなりましたねぇ…。
<吾も亦(また) 紅(くれない)なりと ひそやかに>
…と高浜虚子が詠んだのを思い出しながら「吾亦紅」のことを鑑賞し、毎年「ああそうか」と、その花の名前のことを納得してみます。
野原に咲く吾亦紅の花は、深い紅すぎてそこでは深いこげ茶色の地味な花。
なのに、たとえば、安いからと花屋でから多めに買って飾ると、あたりをぱっと華やかにします。
「吾=わたしだって、紅い花なんですよ」とその名につけて主張するだけあって、ああ、確かにね。
やっぱり紅い花…いや明るめの臙脂色か。
地味なくせに不思議と演出力があるのは、実は、バラ科の花だから?
吾亦紅は、秋の野原に生える多年生の草。
吾亦紅は、冬から盛夏までは、地面の下でひっそり地下茎のまま過ごして外には見えません。
朝夕さだけでもちょっと涼しくなり始めたころ、やっと茎を延ばしはじめる。
と、思ったら、あれれ!という間に、その先にマッチ棒の頭のような楕円形の穂をつけます。
この楕円形の穂は、小さな花が寄り集まってできていて、花は、先端から順次咲いてゆきますが、つぼみのころも開花したあとも、近寄って観察でもしなければそうそう違いはわからないぐらい。
マッチの頭が少し大きくなって、色も少し濃くなっただろうか…とかすかに気づく頃が花の頃です。
…って、実はコレ、図鑑で読んだ耳知識。
今年は、その経過を観察してやろうと、いつもの向島百花園にて狙っていた吾亦紅の楕円形。
それがいつまでも赤くならずに白いまま大きくなった。
ええっ!新種?
調べてみたら、「長穂の白吾木香(ながぼのしろわれもこう)」という種なのでした(笑)。
なぁんだ。
吾亦紅の花は秋じゅう、丈夫で長持ち
この花は、実は花びらが無く、咲いているのは愕(がく)だからという事情もあるのか、いたって丈夫。
だから、一度咲いたらけっこう長い間咲きつづけます。
秋の花一般は、秋の七草を思ってもわかるように、ほかの季節の華やかさは少なく、楚々と地味で可憐なものが特徴。
その、代わりにということでもないのでしょうが、花のころはずっと長いようにも思えます。
とすれば、これも吾亦紅も、立派な秋の花の代表格。
いつもの『柳宗民の雑草ノオト 』(ちくま学芸文庫)の中で
<山上憶良の詠んだ秋の七草には登場しないが、もう一種類増やして八草にしてよければ、真っ先に付け加えたいのがこのワレモコウである>
とおっしゃっております。
そうそう、それより、葛花に独り立ちしていただいて、 < 萩の花 尾花 撫子の花 女郎花また藤袴 吾亦紅また朝顔の花>(韻も踏んでみました・笑)とかにしたら、寄せ植えや秋の七草ブーケなんてのも、可能じゃない?
…って、やっぱ山上憶良さんに怒られるかな?
◆今日は、2014年9月19日/旧暦8月26日/葉月癸巳の日
◆日の出 5時26分 日の入17時43分/月の出0時46分 月の入14時40分