八手の花が人知れず咲いていますよ。
大きく開いた葉っぱが立派で、花咲くことを少し忘れがち。
ですが、「八手(やつで)」も初冬の今頃になると、ちゃんと開花の時期を迎えます。
ほらほら、大きな手のひら様の葉っぱが茂る天辺中央。
そこからなにやらにょきにょき伸びだして、白いボンボンみたいなものをたくさんつける。
ああアレねと、たぶんどなたも見たことがあって、もしかすると葉っぱの延長みたいにとらえていたかもしれない。
これこそが、八手の花です。
八手は丈夫で、葉っぱのカタチの存在感が面白いからか、民家の庭の定番木のひとつ。
子供の頃の私は、この木をお便所の樹とか呼んでいた大ばか者ですが、それで通じてもいたのは、どのおたくも日陰に植えていたからかと。
偶然、そこは、お手洗いの真向いだったり…ってコトですね。
つまり日が当たらなくてもちゃんと育つ丈夫な種は、どこにでも、あたりまえみたいあって、しかも例の葉っぱの存在感。
誰もいちいち花もことまで気にしなかったかも。
八手の花、たまにはよーく見てください。美しいうえに面白い
それでも、花は、よーく近づいてみれば、そうとうにキレイ。
しかも面白いのです。
花のひとつひとつはとても小さく、それらが円錐形に集まって白いボンボンをカタチ作る様子もなかなかにない造形。
しかも、このボンボンがでできた時こそ、少し注意してながらやや長期間で観察したい。
実は、この花。
ひとつの花が雄花になったり雌花になったり、日数を隔てて不思議な変化を遂げるのです。
まず最初は、雄花の期間。
おしべが成熟して花粉を出して、小さいながらも花らしいカタチに。
写真は、そんな雄花の咲き始めのものです。
もちろん虫を呼ぶため蜜も出し、ハチなどの小さな虫が飛び交っております。
やがて、この雄花はおしべも花びらも散らし、ここで枯れて行くのかと思えば、今度はそこからめしべが成長。
今度は雌花の期間です。
花びらはもう出てきませんが、中央の雌蕊は元気に育ち、また虫を呼ぶための蜜を出す。
花の先っちょをちょっと触ってなめてみるとほんのり甘い味がします。
そして、これら二つの花が、時間差で成長するため、ひとつのボンボンは一時期2種類の花で構成されているかのように見えます。
これなんか、いろいろな過程が楽しめそうです。
向かって左はしがつぼみの状態。
その隣は、雄花が咲きそうな感じ。
右はしは、雄花と雌花がまじってますね。
植物図鑑で調べれば、これは、近親交配を避けるための生態。
ほかの植物でも良く見られることなんだそうですが、八手の場合は、花のカタチが歴然と違って観察しやすく、不思議な面白さをかもし出しております。
さすが、天狗さんに縁ある植物の奥深さとでもいいましょうか。
そして、やがてみのる実もなかなかに見ごたえたっぷり。
時期がきたら、またこのブログでご紹介したく思います。
八手の葉っぱのほうも不思議満載
「八手」は、八つの手という名前を持ちながら、手のひら状に裂けた葉っぱは、7裂とか9裂ばかり。
相当じっくり探さないと、実は、8裂のものを見つけるのは困難を極める。
コレはどうか!?
うーん、9枚ですねぇ…。
私の感覚で恐縮ですが、もしかすると、四葉のクローバーを探すぐらいの確率に近いかも。
これも何だか不思議な事実です。
パッと見つけるには運がいいか、それこそ天狗さんなみたいな神通力が必要かもしれません。
それではなぜ「八」の字をつけたのか?
それは、葉っぱの裂け目の数でではなくて、「なんとなく多いね」というぐらいの意味。
ああ、几帳面に数字を使った割には、ずいぶんざっくりした理由です。
別名 「天狗の葉団扇(はうちわ)」という立派な名前ももっていますが、これは、大きな葉っぱに、悪いものを祓うチカラがあると思ってつけられた名前。
ならばと、花観察のついでに、ちょっとお願いして八手の葉の大きいところを一枚いただく。
さっそく、パタパタ扇いでみようとするんですが、葉っぱは以外に柔らかく、ただペナペナとなり、そしてゆっくりたわんで行くばかり。
うーむ、これで風を起こすにも、やっぱり不思議なチカラなんかが必要みたいです。
ともかく、どこにでもあって、しょっちゅう目にしているなじみの樹木だというのに、ヒトは何も知らない八手の木の面白さです。
機会があったらよくよく近づいて観察してみることをおススメします。
もしかすれば、新しい葉団扇を取りに来た天狗さんに運よく遭遇できるかもしれません。
…なあんて。
いや、マジで会ってみたい。
◆今日は、2014年11月17日/旧暦 閏9月25日/長月壬辰の日
◆日の出 6時18分 日の入16時33分/月の出0時57分 月の入13時26分