小学校の前のバス停でぼんやりとバスを待っていると、ちょうどチャイムが鳴って、子どもたちが昇降口からわらわらと飛び出してくる。
赤いくたびれたランドセルをちょっと窮屈そうに背負った女の子が2人。
目の前を通り過ぎてゆきぎわに交わされた会話が、いい感じだった。
「おうちは近いの?」
「うん」
「どの辺?」
…耳に入った会話から、片方の子は季節はずれの転校生かな?
で、次にくるワンフレーズ。
「あの黄色い花が咲いているところを曲がってすぐのところ」
おっ!なんとなく自慢気だな(笑)。
で、つられるように、指し示す先をみれば、炒り卵をまぶしたような木が、道路を覆うように張り出している。
わたしたちがミモザと呼んでいる黄色い春の花。
おおっ!花が、じぶんちの道案内になるんだぁ!
いいなぁ。
あなた、いいところに引っ越してきたね!うらやましい。
「でも、ミモザってオジギソウのことで、本当はこの花のことじゃないのよね」
と、教えてくれたのは、花屋をやっている知人。
それでも、その花屋でも、この花をちゃっかり「ミモザ」といって売っていた(笑)。
「だって可愛いでしょ。そう呼んだほうが…」だって。
ふふふっ、だから、可愛いは真実に勝るってコトにしてあげた。
この花の本名は、「銀葉アカシア」。
葉っぱが銀灰色をしているからなんだって。
よく似たのに「房アカシア」。
だけふど、それはとんでもない巨木になるので、公園などに植えられることが多いらしい。
…とは、あとで植物辞典などで仕入れた知識。
しかし、「とんでもない巨木」って…。
今ごろは、そこにとんでもない量の炒り卵みたいな黄色がどあぁ~っと咲いているってこと?
ああ、それもいいなぁ。
ミモザの咲く小学校の界隈は、明治大正のころからのお屋敷街
といっても、この数年間で、いい感じのお屋敷が解体⇒マンション化が進んでしまったけど。
よくよく廻ってみれば、まだまだ一軒の民家は東京にしては大きな庭を持ち、そこには、いつくしまれて大きく育った様々な樹木が塀から道へ飛び出している。
それらは、春、夏、秋、冬と季節ごとに花を咲かせ、短期間ですが、道順案内におけるランドマークの役をかって出てくれている。
特に春の目印には事欠かない。
まずは、この黄色い「銀葉アカシア」。
ちょっと行ったところには、門柱に「薮椿の赤と白の大木」が並ぶ古い民家。
「きんかん」の成る大きな木があるアパート。
道を挟んで「山桜」と「しだれ桜」が対峙する道などなど。
ぜーんぶ、立派に道案内の役割を果たしている。
…というか、どうも話しかけやすいのか、私と言えば3日に一度は道を聞かれるモノ。
個人的に花の存在を活用させていただいている…だけかも?
と思ったら、ある日、交番で道を教えるおまわりさんが…。
「あの信号のところを左に曲がると、そのおたくの前には白い花がたくさん咲いてるから…」
と言っているのを小耳に挟んで、私だけじゃないみたい!
と、ちょっとびっくりっ!
花咲く街の住人たちの頭の中には、界隈にどんな樹や花があるかの「花地図」がきちんと描かれてもいるらしいです。
実は、件の銀葉アカシア。
菜の花を見て、そういえば…と、思い出したもんでわざわざ見に行った。
…ら、樹木自体が根こそぎない!!
枯れちゃったんでしょうか…。
ああ、残念だなぁ。
ってことで、春の思い出に、ちょっとココに書いてみた次第。
だから、今年からは、銀葉アカシアを使った道案内はできません(涙)。
◆今日は、2015年3月17日/旧暦1月27日/睦月壬辰の日
◆日の出 5時50分 日の入17時50分/月の出 3時13分 月の入14時14分