「涅槃会」は、お釈迦様の80歳での入滅を偲ぶ一日。
「入滅」というのは、宗教的悟りを得た方が亡くなるという意味なんだそうですが、平たく言えば、今日2月15日はお釈迦さまの御命日。
といっても、実際は、旧暦2月15日が正しいのですが、東京の多くの寺院では新暦で法要を行うコトが多いみたい。
特に有名なのが「浅草寺」とか「芝・増上寺」とか…。
どちらの寺院とも本堂に「涅槃図」を掲げ法要とともに一般に公開されます。
私は今年も博物館へお釈迦さまを偲びにゆきます。
私も数年前までは、本格的に寺院の「涅槃会」にお参りにうかがっていたものですが、いつしか、世間には、夥しい数の「涅槃図」があると気が付いて、方向転換。
以降、涅槃会が近い平日に、トーハクこと上野の博物館へ詣でる(?)コトにしております。
というのも、ここの常設展では、ひそかにちゃんと涅槃図を展示する。
しかも、毎年違うもの。
しかも、しかも、寺院の涅槃図は基本涅槃会一日しか拝むことができないうえに、多くの参詣者の頭越し…対して、博物館は貸し切りみたいに空いているしね。
私は、お釈迦さまを偲ぶとともに、涅槃図をじっくり拝見もしたいんですよ!
今年は、涅槃像にもお会いできます!
なんか、今年のトーハクは、ひそかに「涅槃会」を大きく広めようとしてる?
ってぐらい、大盤振る舞いの展示。
まずは、本館エントランスを入ってすぐ右の11室の彫刻コーナーにもお釈迦さまがいらっしゃいます。
奈良・岡寺所蔵の涅槃像。
ああ、なんとも凛と美しいなぁ…。
今年のトーハクは、鎌倉時代に描かれた涅槃図が二幅!
今年は、二種類の涅槃図が見られるのでますますおススメのトーハクです。
奈良・薬師寺が所蔵している「涅槃図」は、お釈迦さまの目が半眼に開かれている。
これは、珍しい描き方なのだそうです。
そのお隣の「涅槃図」は、沙羅双樹の木も描かれ、見送る人びと、動物たちも細かくたくさん描かれている。
どちらも鎌倉時代に描かれたものだそうですが、けっこう違いは大きいですよね。
こうして比べられるのも、今年のトーハク「涅槃図」展示のバリューです。
しかし、平日トーハクの常設展は空いています。
「涅槃図」が展示されているのは、本館2階の3室仏教美術のコーナー。
周囲にはほぼ人影もないのをいいことに、長々と涅槃図を見上げて、お釈迦さまが逝くのを見送る追体験をしているみたい。
そして、いつしか、この涅槃図に、お釈迦さまの包容力みたいなものを感じたりする。
逝くお釈迦さまを見送るというより、かえって守られている気分になって、しみじみ安心するという感じでしょうか?
涅槃図は、今まさにお釈迦様が亡くなるシーンを描いた絵のコト
「涅槃(ねはん)」とは、迷いも煩悩もなくなった心の境地を指す言葉だそうです。
転じて、「お釈迦さまが亡くなった」コトそのものをさす。
これは、豆知識ですが、涅槃図を描くにあたっては、共通ルールがあるようです。
ざっくりまとめると…。
1.白い花をつけた沙羅双樹の下にお釈迦さまが安らかなお顔で横たわる図であること。
2.お釈迦さまは、頭を北にお顔を西に、右脇を下にした姿でで描かれる。
3.周囲には、釈迦の十大弟子をはじめ、老若男女、動物達が嘆き悲しむ様子が描かれる。
4.右上のほうに天からかけつけたお釈迦様の母親マヤ夫人が描かれるとか。
5.涅槃の日が旧暦の2月15日=望月の日であることの証、満月も描かれている。
…という感じかな。
作者によっては、4.と5.は描かなかったりするケースも多いみたい。
そして、印象としては、静かで穏やかで、なぜだか幸福に満ちていたりする。
そこで、涅槃図は、お釈迦さまのためというよりは、仏教を信仰する人々のために描かれたものなんだなぁ…とふと気が付いて、思いを馳せるのは、何百年も前に描いた絵師の信仰のチカラと、それを見上げて愛でた人びとの思いみたいなもの。
この絵は、博物館に飾られてなお、人々を悟りの境地に導いてくださるような気になるのは、そんなチカラを密かに纏ってもいるからなんでしょうね。
と言っても、見上げるこちらは凡人なんで、1年にひとつの気づきを毎年地道に重ねて生きるのみなんですけどね。
惜しいなぁ。今日は月曜日!
博物館はお休みでした。
涅槃会の今日は、再度涅槃図を見にいこうかと思っていたんですが…うーむ残念。
それでも涅槃図は、2月28日まで、涅槃像は、4月17日まで展示。
たぶん、もう一度見に出向いてゆくと思います(ちなみに、私はトーハクのパスポート保持者なんで、4100円先払いで、1年入り放題。)
◆今日は、2016年2月15日/旧暦1月8日/睦月丁卯の日
◆日の出6時29分 日の入17時22分/月の出10時49分 月の入–:–