春だもの、蒲公英(タンポポ)に遊んでもらおう!/旧3/12・壬子

ああ、ソメイヨシノも終わったなぁ…と思ったら、突然存在感を増したように見えるこの花たち。

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というか、私自身が、サクラサクラと上ばっかり眺めて歩いていたからかもしれません。
実際、見上げる視界の隅っこに、ずっと前からちらちら黄色いモノがあったような気がします。

蒲公英(タンポポ)が、一つの株からどっさりと咲いています。

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ところで、よくよく見れば蒲公英って、実は、すごくユニークな花。

英語名の「ダンディライオン」の由来となった、ライオンの牙を連想させるぎざぎざの葉の形状は、なかなかの造形美だし、それが放射状に生える様子も美しいのひとこと。

明るい黄色の花色も、自然のチカラでここまで発色よく咲いたものだ!と、驚きを隠せないし、これがのちに種化してもカタチはカワイイ「綿帽子」。
アレなんかは、人に手にとってもらってふーっと吹いて風に乗せてもらうことをたくらんでいる知恵者としか言いようがありません。
…etc。

なあんて考えながら眺めていたら、もっと蒲公英のことを知りたい気満々になってきました。

こうゆうときは、柳宋民さんの『雑草ノオト』です。

さっそく書棚から取り出して、「蒲公英」のページを熟読したところによると…。

日本に野生する蒲公英は、大きく分ければ日本固有種の「日本タンポポ」と、明治時代に渡来し猛烈な勢いで野生化した「西洋タンポポ」の二種類。

しかし、タンポポ界は、「西洋」の繁殖力の強さが「日本」を駆逐してしまい、今ある蒲公英の多くは、西洋タンポポなんだそうです。
ふーむ。

次いで、その見分け方の記述があって、「日本タンポポでは総苞片は立ってまっすぐに伸びるが、西洋タンポポは外側に反り返っているから簡単に見分けがつく」と。

「総苞片(そうほうへん)」というのは、花のすぐ真下の花びらをギュッと束ねているように見えるところのことを言い、そこがゆるくカーブして外にめくれているのがセイヨウで、まっすぐなのがニホンなわけです。

確かに、街に点々と咲いてる蒲公英の総苞片は、ほぼ下にめくれてますね。

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…って、そうと知ったら、日本タンポポが見つかるまで、蒲公英の総苞片チェックが続いちゃうんだなぁ…。
でも、マジ見つかりません。
うーむ、うむ。

あっ!
あれはどうかな?

ということで、3月上旬に小石川植物園で撮った蒲公英の写真を探してみました。

これなんかどうかな?

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拡大すると…。

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おおっ!総苞片がめくれてないですっ!

まだ咲きはじめのころですが、これが、日本タンポポ!
さっすが小石川植物園ですね。

さてさて、無事に日本タンポポを見つけたところで(写真ですが)、元に戻って『雑草ノオト』です。

タンポポの名の由来も、ちゃんと学んでおきましょう。

「種子に付く冠毛が球状になる様子が、拓本に使うタンポに似るところからつけられたのが一般的」とあります。

拓本の「タンポ」…って、小さなてるてる坊主みたいな、綿を布で包んたものですよね?
拓本をする際、石碑の凹凸に墨を塗って、上に紙を乗せてそれでこする。

ああ、あのカタチですか、ふむ、なるほど似てますね。

しかし、子供のときに聞いた由来は、宋民先生とちょっと違っていました。

蒲公英のストローのように中が空洞になった茎を短く切って、両端をちょっとだけ細かく裂けば、茎は外に反り返って鼓のカタチ。
それを叩いて音を出す「たん、ぽんぽん、たん、ぽんぽん」と。
それが詰まって「タンポポ」となりましたとさ。…とは、誰に聞いたものでしょうか。

遠い記憶に、原っぱで聞いたそんな御伽噺のような蒲公英の由来があります。

実際、調べてみれば、蒲公英の別名は「鼓草(つづみぐさ)」というのがあって、昔々の江戸時代は、この黄色い花をそう呼んでいたそうです。

遠い記憶といえばもう少し。

蒲公英の綿毛を飛ばして、「耳に入ると何も聴こえなくなるからたいへんたいへん」と、子どもたちは皆、自分の耳を手で塞ぎながらふわふわ風に乗ってゆく綿毛を眺めた暢気な春の思い出。

花を摘んで、黄色い冠をせっせと編んで、それをかぶってはしゃいでみたり、
蒲公英の葉に黄色い花を散らしてサラダを作ってままごと遊び。

…なんだか、何かのスイッチが押されたみたいに、どんどん昔の春が立ち上がってくるかのようです。

そして、オトナになってからも、こんな遊びをけっこうやった。

いけたタンポポ200605

空き地から根っこごともらってきた蒲公英の一株を飾り、毎日水を取り替えながらしばし待つ。

すると…。

綿帽子縮小200605

綿帽子バージョンの出来上がり(笑)。

梅も椿も桜も…と、園芸品種の花々はなかなか素敵に春を演出してくれますが、ココまで一緒に遊んでくれる春の花は、蒲公英以外にあまり存在しないかもしれません。

とすれば、改めまして、今年もちゃんと咲いてくれてありがとう!

蒲公英の無い春があるとしたら、それは、春の思い出を失うことなのかもしれませんね。

◆今日は、2014年4月11日/旧暦3月12日/弥生壬子の日

コメント

  1. 安田裕隆 より:

    今でこそ奈良県民ですが・・・
    高校生まで大阪市内だったこともあり植物や昆虫に触れる機会も少なくて、小学生の頃の理科で植物が出るとからきしだったんですよ。
    ということもあるせいか、タンポポは黄色いのは外来種で、白いタンポポこそ日本固有種だと思い込んでいました。

    この記事を読み、調べてみたら、確かに日本固有の黄色いタンポポってあるのだと、この年齢になって始めて知りました。
    以来、タンポポを見つけるたびに花をひっくり返してみてましたが、我がご近所にはけっこう存在していることも発見できて、ちょっと興奮していたりします。

    白いタンポポは、我がご近所では見つけることが出来ず、ちょっと郊外に足を伸ばすとあったりするんですけどね(子どもが住む高知の朝倉ではよく見かけますけど)。 なかなか見つからなくて、日本固有は駆逐されてしまうのか、と思ってましたけど、どっこい近所で発見できて嬉しくなりました。

    いつも楽しみに読ませてもらっております。 感謝。

     

    • taomichiru より:

      安田さま
      コメントありがとうございます。

      そんなに普通に日本固有種タンポポが発見できるとはっ!
      やっぱり奈良ってすごいですね。

      出雲、奈良、伊勢は、私の好きな三大地域ですが、そういえば、何処も日本固有種のタンポポが生息してそう。

  2. 安田裕隆 より:

    Web版高知新聞で「タンポポ調査2015」が西日本19府県で行われていることを知りました。
     ↓
    http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=318591&nwIW=1&nwVt=knd

    「タンポポ調査」ホームページもあるそうです。
     ↓
    http://gonhana.sakura.ne.jp/tanpopo2015/

    日本固有種といっても様々な種類があることがこのページの「タンポポの種類と見分け方」でよくわかりました。
    当方が見つけたのはよくある「カンサイタンポポ」みたい。

    • taomichiru より:

      ひゃあ、せっかくコメントいただいたのに気が付きませんでしたっ!

      タンポポは、ずいぶん本格的な研究&調査がなされているんですね。
      面白いサイトを教えていただきありがとうございますっ!