春の土用入りです。春も桜も、季節の最終コーナーを回りました/旧3/18・戊午

夏のそれは、暑気払いの鰻などと併せ有名ですが、土用は、春夏秋冬ともにあって、今日は、春の土用入りです。

今日から立夏前日(この日も節分と言います)までの18日間は、春の土用の日々です。

暦の上でのお話ですが、春は、夏へバトンを渡すべく最終コーナーを回ったというコト。
土用には様々な禁忌があるようですが、おおむね農業や土いじりにかかわる内容。
なので、都会に住む身としては、これらの日々を、行く春を惜しみつつ、夏の日々に備える数日と考えています。

さて、春を惜しむに最適アイテムのひとつが、やっぱりサクラ。

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八重桜です。

ソメイヨシノはあらかた散ってしまいましたが、古い寺町、谷中、根津、千駄木とそぞろ歩けば、今度は、寺の境内を主として古い屋敷などにも植えられた八重桜が花盛りです。

暦のリレーが春の最終コースなら、桜リレーは、バトンを八重桜に託し、春の最後を飾ります。

八重桜の多くは、植木職人たちによって作られた園芸品種である里桜。
薄い和紙を何枚も重ねて造ったようなボリューム感ある花には、山桜のような、きりっとした野生は、片鱗すらありません。

でも、このふわふわした浮世離れなたたずまいが好きなんですよねぇ~♡♡

201004養福寺の八重桜 (2)

枝を覆って、あたりにピンクの雲が湧いたように咲くソメイヨシノとは、また違った意味で、八重桜にも、桜に対する人の熱狂とか執着…あるいは狂気のようなものを時々感じて、長く眺めていれば、少し怖いというのもありますが、そこも魅力の一部です。

ご近所の中でも美しいのは、台東区の富士見坂を上って、日暮里駅方面に向かった先にある養福寺の八重桜。

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道路に桜の庇を張り出しております。

あれれ、でも今年はちょっと寂しいような…。

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以前はこんな風にこんもり…。

201004養福寺の八重桜 (1)

だったのですが、先の大雪・大風で被害をこうむったモノでしょうか?
それでも今年も咲いて良かった。

そしてもうひとつ。

ソメイヨシノはすっかり葉桜となった谷中霊園の桜並木ですが…。

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その傍らで、存在感を放つ樹が一本。
この時期、知っていながらも驚かされるのは、「鬱金桜」の浅黄色です。

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散ったソメイヨシノを背景にするとより美しい。

もっと寄ってみてみましょう。

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ソメイヨシノの散り際に、ちらほらと咲き始めるのは他の八重桜と同様で、しかも、はじめは、淡紅色の蕾を着けて、「ああ、これは八重桜ね」と見るものに油断をさせます。
そうして、ぼんやり過ごしているうち、突然その木のあたりだけ浅黄色に染まる。
そこで、瞬間ドキリと動揺させられるのです。

「鬱金桜」の名は、ウコンの根を染料に染め出した色が花びらの浅黄色と似ていることに由来し、この珍しく思える品種も、すでに江戸中期ぐらいから栽培されていたそうです。

この桜も浅黄色のころは案外短く、花は、まただんだん蕾のころの淡紅色に変わってゆく不思議なサクラ。

ただ、いっとき、一本の木にピンクとうす緑が混在している様がやはり珍しく、これは一見の価値ありと、ありがたがって眺めます。

冬桜から始まって、寒桜、緋寒桜、彼岸桜…春の暦をくまなく繋いだサクラの季節は、ソメイヨシノの幽玄に八重桜の不思議で千秋楽。
なんとなく解けない思いを残すようにして去ってゆきます。

そして、春が過ぎようとしている今ごろ、今年も、ふと、ずいぶんとサクラに惑され、振り回されて、してやられたように思い返す。

はてさて、仕掛けているのは、サクラそのものなのでしょうか、それともそれを創った江戸の植木職人のほうでしょうか。

◆今日は、2014年4月17日/旧暦3月18日/弥生戊午の日/春の土用入り