私の個人的感覚ですと、りんごの旬が過ぎると(=りんごの値段が高くなり、たまに安いのを見つけてもまずい場合あり…な頃)、いちごの旬到来。
…なはずですが、4月下旬から、気にしつつも、いつまでも高くて手が出せず。
そもそも、私はあのつやつや宝石みたいに粒が揃った苺はあまり好みではありません。
(眺めるにはいいけどね。)
5月も中旬をすぎて、八百屋の店頭には、露地物の苺が登場!
や~っと適正価格になったみたいです。
といっても、歳時記の世界で苺といったら夏の季語。
実は、本気で今ごろが旬なんですよねぇ。
露地物の苺は、こんな感じの、粒もそろわないちんまりしたヤツだけどね。
だけど、見かけによらず、滋味溢れて美味。
って言っても、私にとっては、コレって、粒がそろいすぎ&立派すぎな苺なんだよなぁ。
ちょっと前なら、もっと、ちんまりごつごつ小さいやつが、ひとパック100円ぐらいで売ってたんですがねぇ…。
あれは安くて美味しく、使い出もあったなぁ…なんて(笑)。
高度な栽培技術も流通の発達も無縁の頃は、苺の旬といえば露地栽培の実りをじっと待っての初夏の頃だった。
しかし、やっと旬を向かえた今ごろになると、高級スーパーどころか庶民派スーパーにだって、旬の棚には何故か苺がなくなり、もうさくらんぼがメイン。
そして驚きのメロン&スイカとか。
そっ、それは、ちょっと早すぎというものです。
つまり、どうやら、近ごろのスーパーには、露地育ちの不恰好苺は並ばないみたいです。
なので、目指すは、個人経営の小さなお店。
露地苺は、近頃あまり流通に乗らず、近郊の農家から仕入れてそうな八百屋さんとか小さな食料品店辺りを根気よく廻る。
故郷では、苺は裏庭で勝手に育つものと思い込んでいたから、この苦労にはやや納得もいかなくて、しかし、見つけた今年の露地物の苺は、ひとパック178円!
まあ、良しとしましょう。
苺はいつから日本にあったんだろう?
「苺」という言葉なら、かなり古くから文学の世界に登場。
たとえば、『枕草子』の第39段、「あてなるもの」のところにとりあげえあれております。
「あてなるもの」=「品があって美しいもの」という意味。
例によって、清少納言的に”これぞ”というものがいろいろ並びますよ。
「薄色に白襲の汗衫。かりのこ。削り氷にあまづら入れて 新しき金まりに入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅の花に夢の降りかかりたる。」
「薄色に白襲の汗衫」は、当時の夏の装束ですが詳しくは割愛。
「かりのこ」は雁の子、卵か雛か?
「削り氷に…」は、新しいお椀に削った氷に甘味をかけたモノ=平安時代のかき氷かな。
あとは、そのままの意味でわかりますよね?
そして、この話は、最後に「いみじううつくしきちごの、いちごなど食ひたる。」で結ばれる。
「とても可愛らしい稚児が、苺をたべている様子」ぐらいの意味でしょうか、「苺」が登場。
ただし、平安時代に稚児が食べてる苺は、実が小さい木苺のことだそうで、日本ではずっとしばらく「苺」という言葉は、木苺類をさしていたんだそうです。
現在私たちが苺とよんでいるのは、江戸時代にオランダから伝わったもの。
江戸時代には、日本の苺=木苺と区別するため苺は「西洋苺」などと呼んだりしてたそうですが、最初は、もちろん身分の高い方々が召し上がるものだったのでしょう。
それも、明治の初め頃に本格的に栽培されるようになり、やがて、現在のような庶民にもポピュラーな果物になってゆきます。
(その様子は、2013年秋から2014年春まで放映されたNHK朝ドラ「ごちそうさん」にも描かれていました)
といっても、ここまで広く普及したのは、やはり、その栽培のしやすさだったんでしょうか。
いったん露地に苗付けすれば、雑草が生えようがどうしようが、あまり水もやらぬというのに白い花を咲かせ、ガクを残して花が散れば、そこから白っぽい実が育ち…。
…って、露地苺のコトばかり考えていたら、空き地に苺!を見つけてしまった!コレって夢?幻??
ほらほら、東京地方だって、まだこれからでしょ!
コレが、やがて色ずいてゆく。
ちなみに、私たちが苺の実だと思って食べている赤い部分は、実はそうではなくて「花托(かたく)」と呼ばれる花の部分。
本当の実は、そこに点々とゴマ粒のように付いているほうなんだそうです。
おやおや、これだけ散々食べてて、それは種だとばかり思っていました。
その小さな一粒一粒に、さらに種が一個ずつ入っているんだそうです。
ずいぶん不思議な果物だったんですね。
半分は生で、残りは、苺ジャムもどきで
さて、太陽の日差しを浴びて、じっくり真っ赤になった苺は、大粒のところは器に盛ってモグモグと生で食べ。
小さな粒は、苺ジャムにします。
といっても、私の場合は、ジャムが食べたいというより、食べきれない分を新鮮なうちに砂糖煮にしとくという目的。
小なべに洗って蔕をとった苺を入れて、砂糖をかけて、あとは、コトコトと煮て…。
鮮やかな赤い汁が出てきたコロ…。
いや、コレがまた感動的にキレイなんです。
ごろごろ苺のカタチを残したまま火を止めさまし、熱湯消毒したビンに詰め…ることなく、鍋ごと冷蔵庫で保存。
翌朝、そこに豆乳をかけていただいて完食。
(牛乳やヨーグルトが本式ですが、私は乳製品を食べないんでこうなります。)
例年は、この食べ方を数回繰り返せたんですが、今年は、ちょっと出足が遅く。
2~3回で、苺はひっそり影をひそめそう。
すると、もう相当に夏めいてくるのでしょうね。
◆今日は、2014年5月20日/旧暦4月22日/卯月辛卯の日