もぎたて枇杷が懐かしくなる今日この頃です/旧5/17・丙辰

俗に、樹木の種を蒔いてから実がなるまでを「桃栗三年柿八年枇杷は九年でなりかねる」などと云いますが、その9年もかかるとされる枇杷が、ご近所の庭先にたわわに実っております。

20110601枇杷

もうそれこそ、あちらもこちらも。
本当に、そんなに実がつくまでにそんなに長くかかるんですかね?と言いたくなるぐらい。

東京地方は、桃はもちろん栗もあまり見かけず、秋になったら柿が少々。
それもあまり収穫されることなく鳥の餌になっているようです。

で、枇杷の実は、どうかというと、柿などよりは案外丁寧に収穫もされ、たまたまその日に前の道を通りかかって「よかったら、もって行って」といただいたのも一度や二度ではありません。

枇杷の実は、収穫後の追熟の必要も無く…というより長期保存が効かないらしい。

だから、たくさんとってもすぐに食べなければならないんだとか。

そこへ偶然通りかかったわが身の幸運。
…ってことですか。
実は、しばし収穫の様子を眺めて、ものほしそうにしていた…というのもあるかも。

とりたて枇杷を洗ってがぶりつくのがいちばん美味しい。

「もう熟しているからすぐに食べてね」
「冷蔵庫で、冷やしすぎるとまずくなるよ」

枇杷の木の主は、どさっと枝についたままを差し出しながらいいました。

枇杷は傷みやすいということもあって、枝ごとささげ持ち、目の前に柔らかなオレンジ色を眺めながら家路を急ぎます。
うっすら白い産毛を生やし、ハリのある果実はおいしそう!

ひとつ味見をしたい気満々ですが、ともかくがまんがまんです。

枇杷は、古くから日本にも自生種があったそうですが、種が大きく果肉が極端に薄かったため実を食べるというより、葉を咳止やかぶれた皮膚に湿布して使うなど薬として長く珍重されていたそうです。

今ある食用の枇杷は江戸時代に中国からわたってきたものが主流で、果実として本格的に栽培され始めたのは明治時代に入ってから。
なんだかとっても日本的な果物と思っていたんですが、食用の歴史は案外短いものなんですね。

さて、庭先の枇杷の実は、種が大きく食べるところはそう多くありません。
しかし、みずみずしい甘酸っぱさを楽しむには十分でした。

そして、枇杷の実の風味のよさは駆け足で去ってゆくようで、教えられたとおりに、その日にすぐ食べたのが一番おいしかった。
しかし、数日後の枇杷の実も、砂糖で煮てコンポートにしたら、また別のおいしさでびっくりしたのを覚えています。

その枇杷の実が今年もなっています。

そんな幸運も絶えて久しく(笑)。

今年などは、よせばいいのに、花の頃から目をつけて

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かなりきれいな花が咲くんですが知ってました?

このぐらいになると、この樹の持ち主がうらやましい。

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そして…。

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いやあぁ、なりましたねぇ。
今年は大収穫のようです。

…って、そう毎年、おすそ分けの幸運がやってくるはずもなく、しかし枇杷の味が忘れがたくなって、スーパーを物色。

しっ、しかし、その値段を見てちょっとびっくりしました。

種を取り出す面倒くささもあって、積極的に買って食するひとも多くないのか、市場に出回る枇杷は一部高級品を残して減少傾向。
街中ではずいぶんたくさんなっている旬の今頃でも、買うとなれば、枇杷はしっかり高級果物の仲間で、一山いくらなどというカジュアルな売り方はまったくもってなされていません。

うーん残念です。

しばらくは、あっちのこっち庭先の枇杷の実を眺め、その柔らかなオレンジ色を目で見て楽しむのが関の山ってことでしょうか…。

◆今日は、2014年6月14日/旧暦5月17日/皐月丙辰の日