今日は、衣替えの日。かつては、「後(のち)の衣替え」と言いました。/10/1=9/8・乙巳

外気はほどほどに心地の良く、秋晴れが続く日々です。
とうとう今年も、10月に入りました。

「今月のこのブログにはどんなことを書いてみよう」と、参考書にしている本をあれこれ紐解くのが、月初めの習慣になっておりますが、今日は『東京年中行事 (2)』 (東洋文庫 (121))(若月紫蘭著)から。

10月暦のところを眺めてみれば、さっそく<一日 巡査の服黒くなる。各呉服店冬物売出し>とありました。

めくって、次ページには、<ただ一日のちがいなれど、十月に入ると学生の服も巡査の服も、昨日とうって変わって真っ黒になる。すると虫の声などもいやにあわれになって、何だか急に寒くなったような心地がいたす>などとも。

ああ、今日は衣替えの日でしたね。

温暖化の影響もあるし、まだまだ暑いというのに不合理だし。

..という事情もあって、衣装がシャッキリ一斉に変わることなくなんとなくこの日を通り過ぎてゆく現代ですが、それが残念。

といっても、ここ数年の10月上旬といえば、まだまだ残暑の記憶新しく、我がタンスの中も薄地のシャツやらTシャツだらけ。

6月の衣替えのときは、もう夏の気配もあって案外矛盾なく行えたものですが、秋から冬はやはりシャキッと変更するのは難しいようです。

それでもウールが恋しくなる頃。

白セーターとストール

クローゼットの奥から、良く着る気に入りのセーターの一枚二枚。
それらを取り出して、虫食いやシミなどついていないか点検し、ちょっと風を通しついでに写真も撮ってみました(笑)。

気に入って長々と着ているセーターとショールですが、季節が一巡して、しばらくぶりに見ると、また新鮮に思えるから不思議ですね。
一方、初夏の衣替えの時、広げてみるだに、爽やかで軽やかに見えた夏服たちのほうは、妙に白っぽく色あせてペラペラと頼りなさげに見えます。

たったこれだけでも、どこかでカチッとスイッチが入り新しい日々が始まったようで、たしかに<ただ一日のちがいなれど>
…わかります、わかります。

日本の衣替えの歴史も少々

・平安時代の衣替えは、宮中行事。

当時は、旧暦の4月1日が夏の衣に変える「更衣(ころもがえ)」、旧暦10月1日は、冬の衣に変える行事ですが、夏と区別するために「後の更衣」と呼ばれていました。
どちらも、衣類だけを変えるのではなく、調度の一切合財をガラッと変えるかなり大掛かりな行事だったようです。

が、衣装のほうは、「十二単」の時代ですから、四季で変えるわけではなく、単衣の着物を幾重にも重ね着をして、細かく気にしたのはその色の重ね方。

さらに下着などで温度調整を行ったようです。

・武家に伝わり、江戸幕府の頃になるとやや複雑化をし衣替えは年4回に!

そして、その複雑なまま庶民にまで広がっていった様子は、6月1日の「衣更」でまとめました(→早いもので今日はもう6月1日、衣更えの日です。/旧5/4・癸卯)ので詳しくは割愛。

簡単に言ってしまえば、当時の冬の衣替えの日=旧暦9月9日から翌年の旧暦4月1日まで、「綿入れ」を着衣しました。

今日は旧暦9月8日ですから、今頃かぁ…。
綿入れは、ちょっと…いやかなり暑い!

やはり、現代は、ずいぶん気温が上がっているのでしょうか…。

ちなみに「綿入れ」を着るといっても、これは専用の着物があったわけではなくて、それ以前の季節に着ていた「袷」の裏地と表地の間にわざわざ綿を入れたもの。
この時代の「衣替え」は、着物の仕立て直しを含むものであったわけです。

複雑な上にけっこうな重労働だったとは想像に難くありません。

衣替えってもしや日本人に備わったDNAかも

さて、平安のはじめ頃には「更衣(こうい)」と呼ばれてたものも、女官の役職名と同じで紛らわしいと、途中で「衣替え」と呼び変えられ、被服と調度の変化とともに複雑化。

近現代のように衣類が洋装化しても、日本人は「衣替え」DNAでも持つかのように、そのまま現代に至ります。

実際、四季の気候変化に併せて着衣と調度を一斉に変えるということは、家事の一環としてごくごく最近まで続いたこと。

少なくとも私の子ども時代にだって、そんな大掛かりな衣服の入れ替えが年に2回。
着古した服も、季節が一巡する間に、すごく新鮮なモノに見えて、それを着て過ごす次の季節にわくわくした記憶があります。

衣替えしたその日は、前日までとはまったく違う一日の始まりのようで、新年を迎える気分に近いかも?

とすれば、日本人は、年に3回も、日常を新鮮に見直す日を持っているわけです。

季節に併せて衣類を入れ替えるだけでもかなり面倒ですが、そう考えれば、あまりあるほどの得。
私たちはずいぶんステキな習慣をもっているのかもしれません。

◆今日は、2014年10月1日/旧暦9月8日/長月乙巳の日
◆日の出 5時35分 日の入17時26分/月の出 11時55分 月の入22時24分