「半夏生」は地味に咲きつつ、七十二候と雑節の役割を持つ/旧6/6・甲戌

今日から7月6日まで、暦の七十二候は「半夏生」です。

本来は、「半夏(烏柄杓・からすびしゃく)という薬草が生じるころ」のことですが、植物の「半夏生」というのもあって、それも今頃に花をつけ、葉っぱの一部が白く染まります。

下町の路地裏で半夏(烏柄杓)を見ることは稀ですので、それはコチラででも観賞ください。→フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

しかし、我が町で、「半夏生」を育ている人は案外多く、花の近くの葉っぱが半分白粉をはたいた様に“半化粧”しているのに出会うのも今頃のことです。

ほらね、こんな風。

Exif_JPEG_PICTURE

「半夏生」は、七十二候であるとともに、日本独自の農事の目安「雑節」も兼ねる

「半夏生」は、かつて、夏至から数えて11日目。
現代では、天球上の黄経100度の点を太陽が通過する日…って、面倒な測り方をするようになっていますが、どちらにしても7月2日前後には変わりなく、「雑節」的見地から、「半夏生」の日を過ぎても田植えは済まなければ、いつもの半分も収穫が望めないとされました。

農家は、どんなに天候不順で田植えが遅れていても、半夏生までには田植えを済ませ、この日は農事を休むことを、ひとつ目標とした。
そんな重要な日でもありました。

そして、今年も大丈夫。

Exif_JPEG_PICTURE

先日、帰省した東北の稲もすくすくと育っておりました。

半夏生の日には、妖怪ハンゲが、徘徊する?

「半夏生」のあたりが、農作業をしないで過ごす…というのも、気象的にも道理であって、今ごろ降る雨は、梅雨の後半の雨。

この時期は、大雨になることが多く…っていっても、今年は入梅したてからそうですが…特に「半夏雨(はんげあめ)」と呼ばれて注意喚起もされます。
最悪、洪水というのもありえて、そうならそれは「半夏水」。

それを、昔の人は「天から毒気が降って地上に毒気が満ちる日」とか、「ハンゲという妖怪がやってきて、村をうろつくとか」言い伝え、井戸に蓋をして毒気を防いだり、この日に採った野菜は食べてはいけないなどとも言われてきました。

やっと田植えを終わらせたばかりだというのに、大雨が来て、田が洪水によって荒らされる…農家の人々にとっては恐怖以外の何ものでもありません。
稲が根くまでの数日間、自然現象に特に敏感になる日々ということでもありましょうか。

それを、こんな風に言い伝えてきた、昔の人の想像力…いや創造力。

いつもながら素敵ですね。

ちなみに、地域によっては、半夏生からの5日間をすべて休みとする農家もあるそうです。

今日は、正真正銘の1年折り返し点

ところでこの半夏…夏が半分という言葉ですが、よくよく計算してみれば、今日は1年のちょうど半分の日です。

計算してみましょうか?

365÷2=182.5日=31日(1月)+28日(2月)+31日(3月)+30日(4月)+31日(5月)+30日(6月)+1.5日

つまり、7月2日=今日の半分=正午がちょうど1年の折り返し点にもなるという計算です。

夏の半分(立夏から立秋の折り返し点)でないことがやや残念ですが、そんな意味でもやはり重要な日と考えた昔の人の気持ちがちょっとわかるような気がしませんか?

面白いのは、「半夏生」に食べると良いとされる食べ物のバリエーション。

大阪あたりではこの日に蛸を食べるのが習いだそうですが、「たこの刺身か?」と思って聞いたら、「たこ焼きでええんや」と返ってきました。
それって、「半夏生」に限らずいつも…なんじゃないでしょうか?

さらに、讃岐ではうどんを、福井では焼き鯖を食べる習慣があるそうです。

これも、それぞれの地域の名物ですよね。

なんだか「半夏生」に便乗し…いや失礼…あやかって、わが地方の特産物を知らしめようとPRしているようにも思えます。

ならば、七十二候「半夏生」の5日間は、「おいしいものを食べる日と捉えて楽しむころ」とすることにして、何でもありの東京ならば、たこもうどんも焼き鯖だって食べちゃいましょうか。

ふふふ、なんだか楽しい気持ちになってきました。

ということで、どうぞ天から毒など降らせませんようにお願いしますよぉ。
大雨もほどほどに、洪水は、もう勘弁してください。

◆今日は、2014年7月2日/旧暦6月6日/水無月甲戌の日