8月12日から8月17日まで、暦の七十二候は「寒蝉鳴」です。
もう立秋もすぎたし、秋を告げる「寒蝉」が鳴き始め、季節はどんどん秋めいてくるころぐらいの意味でしょうか。
そして、今日8月15日は、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」…終戦の日です。
ドラマや映画で表現されるこの日は、カラッと晴れた空とミンミン蝉の鳴き声が一般的。
いっぽう、「寒蝉」は、蜩(ひぐらし)と解釈されて、「寒蝉鳴」は「ひぐらしなく」と読みを当てます。
しかし、玉音放送を聴いて、さまざまに思いめぐらすシーンに、ひぐらしが鳴くことはなかったような気がしますが、どうでしょうか?
蝉が鳴く林の下草あたり。抜け殻が大量発生するのは確かにいまごろ。
ちなみに、これがひぐらしのものかどうかは不明ですが、蝉の抜け殻が妙に目につきはじめます。
そして、こんな風に簡単に蝉のぬけがらをみつかるようになると、確かに、ニイニイゼミの煩げな声に混ざって、かすかにカナカナカナカナと聴いた日々があったような気がします。
蜩は秋の季語だし、さびしげな鳴き方からも晩夏の蝉というイメージにもぴったり。
暦の上では、「立秋」もすきたことだし、「涼風至」った。
それなら、やはりここらあたりで晩夏の蝉の声を聴き、いいかげんに暑さとおさらばしたいとう気分が幻聴をきいた?
ともいえる。
とにかく今年は、まだ、ひぐらしの声を聴いたことはありません。
ひぐらしはいつから鳴くのでしょうか?
念のため昆虫図鑑にあたってみましょう。
とっ!
<ひぐらしは、6月末ごろ現れ、8月末まで鳴き声を聴くことができる>などとありました。
あらら…蝉の世界でもいっとうはやく鳴き出すニイニイゼミと同じ時期からせっせせっせと鳴いていたようです。
ただし、同じ図鑑によれば、ひぐらしは<日の出前や夕暮れ時、あるいは、日が陰って薄暗くなり、少し涼しくなって鳴く習性を持つ蝉>
だから、朝晩にくまなく暑い盛夏のころは、あまり鳴かないもかもしれません。
あるいは、鳴いていたとしても、炎天下のもと「シャワシャワシャワ」と鳴くニイニイゼミとか、「ミーンミンミンミンミーーー」とひときわうるさくもあるミンミンゼミの存在感におされ、その静かな鳴き声はかき消されてしまっているのかも。
街中では、ひぐらしの声が印象深く聴こえてくるのはやはり晩夏のころ
ひがな暑かった季節も終わりほっとして、朝夕は涼しく、そういえば日の入りも早くなったと気がつけば、気分はなんとなくメランコリック。
その寂しい気分をいっそう助長するかのようにカナカナカナカナ…と聴こえてくる。
ひぐらしの、あの独特の鳴き声も、終わり行くものを惜しんで鳴いているようにすら思えてくるものです。
そういえば、そこに、思い出したように鳴くオーシンツクツク、オーシンツクツクというリズミカルな声。
ツクツクホウシも晩夏のころの蝉じゃなかったでしょうか?
「寒蝉」というなら、つくつく法師のほうが似合うかも?
ツクツクホウシの鳴き声も図鑑にあたってみました。
すると、<ピークは8月末から9月初旬頃>と!
あの鳴き声は、寂しさを助長するものではありませんが、その複雑な鳴き方を落ち着きくまなく聴こうとするなら、やはり少し涼しくならないとね…と思わせる蝉。
もしや、「寒蝉」と呼んで秋を告げさせるならこちらのほうがぴったりかもしれません。
まずは、ジ~~と前奏があり、いっぱくおいて、オーシンツクツク、オーシンツクツクを何回も繰り返し。
そこでどんどんテンポを高め、最高潮にきたというところで、突然オーシンと尻上がりに鳴く。
そして、その後は、オシヨーーシ を短く数回、最後はジ~~~~~と鳴いてフェイドアウトする。
この起承転結を聴こうと言うなら、やはり涼しさでややココロに余裕がもどる秋口がいい。
…と、ずいぶん記憶力がよさそうに書いていますが、実はこのサイト(→子供の科学のWEBサイト「コカねっと!」)に蝉の鳴き声が大量にアップされているのを発見。
それをしばし鑑賞し、このように解説させていただいた次第、蝉の声を聴くにもずいぶん便利になったものです。
バーチャルな世界では、いつでも蝉の声は聞き放題。
しかし現実のほうは、今年、もう「寒蝉鳴」の日々が過ぎようとしても、ひぐらしにもツクツクホウシにもいまだ遭遇しておりません。
あっ!でも、またまた抜け殻をみっけ!
あっ!ほんものの蝉もいましたっ!
しかし、聴こえてくるのは、ミンミンミンミン、ジーという鬱陶しい声。
こう毎日暑くては、秋つげ蝉に秋のおとずれを告げられるのは、もう少しあとになるのかもしれません。
◆今日は、2014年8月15日/旧暦7月20日/文月戊午の日