今年も暑すぎる夏で、デザートはかき氷とか水菓子とか。
そういえば、しばらく、和菓子に食指が動かなかったなぁ…などと思えるようになったのは、急に肌寒くなったからです。
となれば、夏に食べたほうが美味しいモノを食べ忘れていないか考える私です。
…って、まったく(笑)。
で、ありましたっ!
「水まんじゅう」と「水羊羹」。
「水」とついただけで、なんとも涼しげな語感のお菓子は、実際ひんやり冷やしていただく夏菓子なんでした。
さっそく、上野の不忍の池の程近く、老舗和菓子舗「つる瀬」まで出向き、水まんじゅう「水の辺」と「水羊羹」を調達してまいりました。
冷やして売られているものですが、もう一度冷蔵庫に入れきっちり冷やしていただきましょう。
「水の辺」は、漉し餡と白小豆餡を葛と寒天で包んだもの。
「水羊羹」は普通の羊羹同様、小倉餡を寒天で固めたものですが、やや水分を多めにしてやわらかく仕立てられたものです。
どちらも、質の良い水と餡子、そしてなにより水分をふるふるにほどよく固めてくれる葛と寒天が重要アイテムです。
ところで、その要の葛と寒天。
葛は、漢方薬などとして古くからなじみのある食材。
寒天のほうは、江戸時代に作られたもの、しかもきわめて偶然の産物だというから驚きです。
寒天の材料・天草は、最初、そのほとんどがそのまま天日でさらしてから、煮出し、トコロテンとして食されていたようです。
それが、ある冬の寒い日、ある料理屋が、多く作りすぎたそのトコロテンを戸外に放置。
トコロテンは、夜間に凍り、昼間はまた解けてをけなげに数日繰り返し、いつしか乾物にさまがわりしてしまいます。
それを見つけた料理屋の店主は、「乾物トコロテン」を捨てることなく、再度トコロテンを作ってみようかと思い立ち、実行。
できたものは、天草をただ煮出して作るより美しく、そのうえ、海草臭さがないはるかに上等のトコロテンだった。
…というのが、これが寒天の発見というか、ルーツというか…なんだか、かなりいい加減ですが(笑)。
が、それがなければ、このおいしい水まんじゅうも水羊羹もこの世にはなかったかもしれないから、まあいいかということにしましょう。
「寒天」という名のほうは、非常に由緒ある命名
作られ方の発見はかなりいい加減ですが、名前の方はけっこうな由緒。
「寒天」名付け親は、中国から招聘され、のちに日本三禅宗のひとつ黄檗宗(おうばくしゅう)の開祖となった隠元禅師です。
あの隠元豆の隠元さんに「精進料理の材料として使える」とお墨付きをいただくとともに、この名をもらったんだそうですよ。
おおっ!すごいねぇ。
厳寒の戸外にほったらかしにされたものが、偶然こうして優秀な食材として出世をとげ由緒ある名までもらい、今も、和菓子の食感を決める手立てとまでなっている。
いやぁ、よかったよかった…ということなんでしょうね。
さて、御託はこの辺にして、今年の夏を送る、水まんじゅうも水羊羹も、フルフル存在感ある食感を楽しみながらいただきましょう。
お茶も、今年最後の氷だし緑茶です。→作り方はこちら
ああ、美味しい。
偶然のカミサマがいらっしゃるならありがとうと申し上げたいぐらいです。
…って、けっきょく、季節の変わり目を、いつも、食べるコトで巡ってゆく日々です。
◆今日は、2014年8月29日/旧暦8月5日/葉月壬申の日